NPO法人の事業報告書提出のポイントとリスク管理
社会保険ワンポイントコラム
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NPO法人は毎事業年度の初日から3ヶ月以内に前事業年度の事業報告書等を所轄庁に提出する義務があります。これは所轄庁の管理のためではなく、市民への情報公開が目的です。提出された書類は一般公開され、5年間は閲覧・謄写が可能となります。
このように、事業報告書はNPO法人の制度を支える重要な書類の一つです。そこで今回は、事業報告書の基本的な知識や提出が遅れた場合のリスクなどについて解説します。
提出が必要な7種類の書類
NPO法人が所轄庁に毎期提出しなければならない書類は次の7点です。
- 事業報告書
- 活動計算書
- 貸借対照表
- 計算書類の注記
- 財産目録
- 前事業年度の年間役員名簿
- 前事業年度末日における社員のうち10人以上の者の名簿
ここからは各書類の要点について解説しますが、2~5は計算書類のため割愛します。まず、事業報告書には各事業の成果や実施状況を定款の事業名ごとに記載します。記載例は次の通りです。なお、その他事業を実施している場合は区分して記載します。
続いて前事業年度の年間役員名簿ですが、理事及び監事の全員の役職名、氏名、住所又は居所、就任期間、報酬を受けた期間を記載します。氏名や住所又は居所は住民票の通りに記載します。
最後に、前事業年度末日における社員のうち10人以上の者の名簿ですが、社員のうち10人以上の氏名及び住所又は居所を記載します。社員全員ではなく、任意の10人以上を選択して記載することが可能です。NPO法人の中には社員数が多い団体もあり、全員分の記載を求めることは事務負担が大きくなるためです。
提出遅延のリスクと対応
事業報告書の提出が遅れると、一般的にはまず代表者へ電話等による督促が行われます。それでも提出が無い場合には、代表者への督促書送付、全役員への督促書送付が行われ、最終的には20万円以下の過料に処される可能性があります。
一般のNPO法人であれば、数日の遅延なら大きな問題にはなりませんが、認定NPO法人は提出遅延だけで認定基準に抵触するため、厳格な期限管理が必要です。
また、事業報告書を3年以上提出しない場合は、NPO法人の認証取消事由に該当します。そのため、該当する場合には所轄庁による聴聞が実施され、改善がなければ認証取消となります。
特に注意すべきは、認証取消となったNPO法人の理事は、取消から2年間は他のNPO法人の理事にもなれないという点です。複数の団体で理事を務めている方は特に注意が必要です。
まとめ
ほとんどのNPO法人は期限内に事業報告書等を提出していますが、期限を超過した際のリスクについても理解しておくべきでしょう。特に認定NPO法人や認定の申請を検討しているNPO法人は提出が遅れることで認定の継続や取得ができなくなるため十分注意してください。
なお、事業報告書は内閣府のホームページなどで閲覧できるので、いくつかのNPO法人の事業報告書に目を通すことで作成の参考になると思います。
ABOUT執筆者紹介
税理士
1級ファイナンシャルプランニング技能士
金子尚弘
名古屋市内の会計事務所勤務を経て2018年に独立開業。NPOなどの非営利組織やソーシャルビジネスを行う事業者へも積極的に関与している。また、クラウドツールを活用した業務効率化のコンサルティングも行っている。節税よりもキャッシュの安定化を重視し、過度な節税提案ではなく、資金繰りを安定させる目線でのアドバイスに力を入れている。ブログやSNSでの情報発信のほか、中日新聞、日経WOMAN、テレビ朝日(AbemaPrime)などで取材、コメント提供の実績がある。