オフィスのカギ問題を一挙に解決「スマートロック」1万円以下で始められる製品~大規模オフィス・工場まで
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パソコンのセキュリティに対する関心度は高く、ウィルス対策ソフトの導入にはじまり、外部からの侵入防止などを行なっているでしょう。しかしリアルなオフィスや店舗のセキュリティはどうでしょう。とくにSOHOや中小企業では、物理的なカギに頼っているところが多いのではないでしょうか? 鍵開け当番制、キーボックスを使った管理など、さまざまな工夫をしているかも知れません。
しかし何百年も変らないのは「誰かがカギがかかったドアまで行って、カギを差し込んで開ける」ということです。「誰か」なのでは「誰なのか」は分かりません。「誰か」が突然お休みで不在の場合もあります。「誰か」がカギを紛失してしまうかもしれません。
そんなときにお薦めするのが、スマートロックです。とくにSOHOや中小企業などで、低コストで施錠セキュリティを導入したい、入退室管理をデジタル化・見える化したい、カギの運用が複雑・紛失などで困っている場合はぜひ参考にしてください。
スマートロックのメリットとデメリット
スマートロックを使うとどんなメリット・デメリットがあるでしょう?
【メリット】リアルなカギは不要!交通系ICカードがそのままカギに
リアルなカギは一切不要です。いちばんのお薦めは、通勤などで使う交通系ICカードを各自のカギとして使う方法です。交通系ICカードはスマホアプリのモバイルSuicaなども含めて、世の中に唯一無二の番号が割り当てられます。つまりカードの盗難さえ考えなければ、誰がカギを開けたのかを特定できるのです。スマートロックのアプリには、開錠情報が残りますから、何かあった後でも追跡が可能になります。1つのスマートロックには、数百~千人の交通系ICカードを登録できるので、何千人もが働く工場でもなければまず対応できます。

個々に持っているICカード(スマホ版のモバイルSuicaなども可)がそのままカギになるので、カード=人が特定できる
【メリット】指紋認証や暗証番号方式も利用できる
屋内であれば指紋認証も便利です。交通系ICカードと同じように誰が開錠したのか?の開錠情報が残ります。ただし雨のかかる場所や濡れた指は認識できないので注意が必要です。また暗証番号方式は、1人1人の暗証番号を帰る場合を除き「誰」かを特定できないので、カギ相当のセキュリティになります。

指紋認証やICカード、顔認証や暗証番号などいろいろな開錠方法が選べる
【メリット】誰でも開錠できてカギ管理が不要
実際のカギを使うと、さまざまな管理の問題が出てきます。たとえば朝イチで出勤したけれどカギ開け当番不在でオフィスに入れないなどです。また店舗では、店長が急用や病気などで開錠できずアルバイトが開店準備できないなどもあるでしょう。
このような問題を解決するためにカギボックスを外に設置して、暗証番号を押してカギを取り出すなどしているかも知れません。しかし暗証番号を頻繁に変更しないと、悪意ある元従業員などが簡単に侵入できますし、カギを返し忘れてボックスが空という事態になります。
スマートロックなら登録しているICカードや指紋を解除すれば、カギ交換の手間も費用も不要、暗証番号を頻繁に変更する手間もありません。またICカードを忘れて朝イチで出勤してしまった場合は、責任者などに連絡してリモートから開けてもらうことも可能です。

スマートロックを使えば、キーボックスで問題になる紛失なども解決
【メリット】ワンタイムキーが発行可能なロックも
たとえば週1で来社する信頼できる業者やヘルパーなどの来客は、ICカードや指紋を登録せず、ワンタイムキー使える製品があります。このような製品には、必ず数字キーのパネルがついています。あらかじめ業者にワンタイムキーの番号をお知らせしておけば、応対の手間なく番号を押してもらうことで開錠が可能になります。
またワンタイムキーは、レンタルルームや賃貸住宅の内覧などでも利用されています。受付でワンタイムキーを発行し貸し部屋に入室したり、不動産屋の担当者が同行しなくても内見ができたりと便利です。
さらにマンションや自治体の共用倉庫などでもワンタイムキーを利用すると、わざわざ自治会長宅や管理室にカギを取りに行く必要もありません。またカギの返却もなくなり、「誰かがガキを持っていった!」という問題も起こらなくなります。
【デメリット】電池切れには要注意!
スマートロックのほとんどは電池駆動になっています。認証システムからカギのサムターンを回す機構もすべて電池駆動です。電池は気温によって性能や消耗が異なるため、電池切れには注意が必要です。また単三などの一般的な電池を利用する製品は少ないため、そろそろ電池が切れそうなときは、早めの購入、早めの交換をお薦めします。なおほとんどの機種では、管理者のスマホに電池切れのメッセージが表示されるようになっているので安心です。

特殊な電池を利用している場合が多く、電池寿命も半年~1年と製品によりまちまち。価格や施錠開錠の頻度も製品選びのポイントになる
【デメリット】粘着テープで取り付けるので脱落注意
スマートロックのほとんどは、既存のドアに粘着テープで固定します。粘着テープは、寒暖差によって劣化するので、1年ごとにシッカリ固定されているかをチェックします。グラグラになっていると、施錠開錠したときに脱落して、実際のカギを使わないと開錠できなくなります。また粘着テープは各社の通販などで購入できるようになっています。いざというときに備えて、常に予備を持っておくといいでしょう。

ほとんどのスマートロックはサムターンをロック本体でつまみ、本体をドアに粘着テープで固定する
【デメリット】スマートロック本体だけではリモート操作できない製品がある
ほとんどのスマートロックは低消費電力のBluetoothを使って、スマホと連携します。そのため電力を多く消費するWiFi機能は別売になっている場合が多く、(Bluetoothの電波が届かない離れた場所や外出先など)リモートで施錠・開錠するには、別売のWiFiモジュールが必要になります。
またマンションの内覧などでスマートロックを使う場合は、事務所からの施錠開錠、スマートロックとサーバ間でワンタイムキーの照合などを行なうため、常にWiFiが利用できる状態にしておく必要があります。賃貸で入居者がいない場合は、ブレーカーを落としてルーターやWiFiモジュールが使えない場合は、施錠開錠できなくなるので注意が必要です。

手のひらサイズの別売WiFiモジュールを購入すると、[ロック本体] <- Bluetooth ->[WiFiモジュール] <- WiFi -> [ルーター(インターネット接続)]のように、WiFiモジュールを経由してインターネットから遠隔操作が可能になる
筆者お薦めのスマートロック-数人のSOHO~1000人規模まで
ここではSOHOや中小企業向けに自分で設置できるものから、業者に依頼して設置するものまでを紹介します。
「お高いんでしょう?」と思われがちですが、安いものならロック本体が4,000円+ICカード認証機能が3,000円というように、1万円かからない製品からあります。なお自分で設置する場合は、スマートフォンとスマートスピーカーで照明や家電を設定した経験があれば、スマートロックの設置もできるでしょう。
【SwitchBot|ロックPro 17,980円】※SwitchBotでの販売価格
SwitchBot社は、スマホと連携できるさまざまなデバイスやスマート家電を販売する会社です。スマートロックはもちろん、自動カーテン開閉、照明、ロボット掃除機などさまざまな製品があり、センサーデバイスなどと組み合わせて、スマートホームを安価に自作するのに最適です。
ロックPro単体の場合は、スマートフォンをカギにして施錠開錠ができますが、別売オプションの数字キー+指紋認証ユニット、交通系ICカード+指紋認証+数字キーユニット、顔認証ユニットなどと自由に組み合わせて利用できます。
またWiFiモジュールでリモート操作が可能になるほか、専用の充電式バッテリやドアホンとの連携もでき、汎用性の高いドアロックシステムが作れるのが特徴です。

SwitchBotのロックProと指紋認証+ICカード+数字キー認証ユニット。拡張性の高さが同社の魅力
【CANDY HOUSE|SESAMI 5 3,980円】※CANDY HOUSEの通販価格
CANDY HOUSEは、スマートロックの老舗メーカーで、とにかく安くて高性能というのが特徴です。他社のロック本体が1万円を超える中、SESAMI 5は3,980円、その上位モデル静音性と堅牢性を強化したProでも4,980円(いずれも税抜き)です。安さゆえユーザーも多く設置事例などもWebで多く公開されているので、情報に困ることはありません。
またテンキー+交通系ICカード認証ユニット+指紋認証ユニット(5,980円)や、顔認証+交通系ICカード認証ユニット(3,980円)などと組み合わせて利用できます。珍しいところでは手のひらの静脈パターン認証も可能です。認証ユニットの価格も安く、初めてスマートロックを導入するのにお薦めです。
玄関に設置する前にオフィス内の倉庫などで実験してみて、運用方法を試して本格導入するのもいいでしょう。

CANDY HOUSEのSESAMI 5と指紋認証+ICカード+数字キー認証ユニット。とにかく安くて高性能なスマートロック
【ミネベアミツミ|SADIOT LOCK2 16,500円】※ミネベアミツミの通販価格
電子・機械メーカーのミネベアミツミと鍵メーカーが協力して開発したのがSADIOT(サディオ)です。特徴は他社が1,2色でいかにも外付けというデザインなのに対して、ドアに溶け込むデザインと5色のカラーバリエーションがある点です。交通系ICカードや指紋認証、数字キーなどのユニットはなく、施錠開錠にはスマホを使います。または別売りの「SADOIT LOCK Key」(3,300円)を使うと、車のキーの用にボタンを押すだけで、施錠開錠が可能になります。
認証ユニットがない分設置が簡単です。筆者が試した限りでは、いちばん設置が簡単なスマートロックです。

ミネベアミツミのSADOIT LOCKとKey。Keyを使うとスマホがなくても施錠開錠ができる
【大崎電気工業|OPELO】
大崎電気工業は、電力メーターの超大手。そのため賃貸などでブレーカーが落とされルーターが使えない状態でも、遠隔操作したり、ワンタイムキーで内見ができるようなスマートロックができないか?という声を元に開発・製品化したのがOPELO(オペロ)です。今のところ一般への個別販売は行なっておらず、業務用としてまとまったロットでの販売のみを行なっています。
特徴は[スマートロック]<->[スマートフォン]<->[サーバー]というように、カギを開ける瞬間にスマホを経由してスマートロック-サーバー間の通信が行なわれるため、ルーターなしでも運用が可能になっています。またカギ穴を塞ぎつつドアを挟み込むように固定するので、脱落の心配などがない点が特徴です。
実際のカギがないので、前の借主が合い鍵を使って、後の居住者宅に侵入するなどもできません。そのため賃貸のオーナーは、入居者が変わるたびにカギ交換をする必要がなく、経費も安くなることからOPELOの人気の要因になっています。
また既存のドアノブやロック機構を活かしたまま安価にスマートロック化できる点、粘着テープではなくネジでドアを挟み込んで固定するため、デザイン的にもドアとの一体感がありスッキリとしています。セキュリティー性の高いスマートロックと言えます。

大崎電気工業のOPELOは、ルーターがなくてもワンタイムパスワードが使える賃貸に最適なスマートロック。将来的には一般への販売も考えているが、現時点では業務用向けのみ

ルーターがなくても開錠時にロック本体とスマホ、スマホとサーバが通信することで、その場でワインタイムキーをロックに送信。スマホには暗証番号が表示されるので、番号を入力すると開錠できる
【美和ロック|スマートロックシステム】
美和ロックは国内シェア6割以上を占めるカギの専門メーカーです。一般への個別販売は行なっておらず、オフィスや集合住宅などにシステムとして販売をしています。
特徴は後付けのスマートロックではなく、ハンドルからロック機構までドア自体に施工するため、ドアとの一体感があるデザインになっています。大きなビルに入っているオフィスで使われている、社員証のICカードで開錠できるタイプ、一戸建てで初めからスマートロックになっている玄関ドアなどは、ほとんどが美和ロック製と思っていいでしょう。
さまざまなオプションがあり、実際のカギが使えるものからカギなし、独自のICカードの利用や指紋認証など、さまざまな認証ユニットと組み合わせができます。スマートロックというよりは、施錠セキュリティシステムの販売というイメージです。また施工にあたっては施工業者への依頼が必要です。

ドアそのものに直接施工するタイプが充実している美和ロック。デザイン性も抜群で、ICカード+数字キーモジュールもシンプル。操作をはじめる
ABOUT執筆者紹介
家電ライター/エンジニア 藤山哲人
「羽鳥真一モーニングショー」「ZIP!」「ゴゴスマ」「イット!」「news every」「Nスタ」などのワイドショーやニュースで節電や省エネを含めた家電などのコメンテーターとして多数の番組に出演。またレギュラーのラジオ番組のほか家電専門媒体「家電Watch」や「現代デジタル」「文春オンライン」などでも、家電やその回りの技術記事を“優しく楽しく面白く”解説している。
テレビアニメ「宇宙人ムームー」放送開始!筆者が技術監修する「家電」&「ラブコメ」&「宇宙人」マンガが2025年4月からテレビアアニメとして放映!家電のしくみや技術をアニメで笑いながら分かりやすく解説します。BS11、TOKYO MX、MBS他、ネット配信