「新型コロナウイルス感染症特別貸付」(日本政策金融公庫)を申し込む際に知っておくべきポイント
税務ニュース
2020年に入ってからの新型コロナウイルス感染拡大により、国内各地域での経済・社会活動の自粛要請が広まり、事業者の多くが影響を受ける状況がいまもなお続いています。
本年3月政府の金融措置が決定され、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」が創設され、実質無利子・無担保の資金繰り支援が日本政策金融公庫(以下、日本公庫)等において取り扱われています。また、商工会議所・商工会経由の「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」等においても融資限度額の引き上げや利率の引き下げ等の措置が実施されています。実施されている金融支援策には上記のほか、日本公庫の衛生環境激変対策特別貸付やセーフティネット貸付、信用保証協会のセーフティネット保証や危機関連保証などがあります。今回は日本公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を申し込む際に知っておけば手続きがスムーズになるポイントをお届けします。
(なお本稿は2020年4月25日現在の記述ですので、新たな施策や情報が追加されている場合は最新の情報もご確認ください。)
どのような制度? 提出書類は何が必要?
新型コロナウイルス感染症特別貸付(以下、新型コロナ貸付)はどのような制度でしょうか?
日本公庫の概要では、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的に業況悪化を来している方であって次の(1)又は(2)のいずれかに該当し、かつ、中長期的に業況が回復し発展することが見込まれる方が対象者になっています。
(1) 最近1か月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少している方
(2) 業歴3か月以上1年1か月未満の場合は、最近1か月の売上高が次のいずれかと比較して5%以上減少している方
① 過去3か月(最近1か月を含みます。)の平均売上高
② 令和元年12月の売上高
③令和元年10月から12月の平均売上高
上記に該当する個人事業主・小規模事業者・中小企業が当制度の対象になりますが、日本公庫が規定する対象業種に該当しなかったり、納税等に延滞があったりする事業者は利用できません。
上記要件の売上高が5%以上減少していることは、基本的に「試算表」を元にして算出しますので、直近の試算表を用意・提出します。また比較する年度の同月の売上高が分かる資料(例えば月商推移・比較表など)も一緒に提出します。できれば前々年、前年、今年の月商推移を分かりやすい表とグラフにして、対象月の減少幅が何%になっているのか明記します。直近の試算表が出来ていない場合は総勘定元帳の売上高欄を疎明資料として添付します。また、月の途中から売上高が減少している場合は、対象期間を「令和2年3月15日~4月14日」のように決めてこの間の売上高を算出します。比較する年度も同様に算出します。
新型コロナ貸付の申し込みに必要な書類一式については、日本公庫のWEBからダウンロードできます(詳しくはこちら)。必要書類一式と上述した説明資料や必要と思われる資料があれば加えて提出することで、申込から面談・相談までの時間が大きく短縮されます。なお、令和2年3月末時点では、混雑する店舗において、新規申込受付から担当者面談までに約1月を要する状況と言われていました。申込受付後に日本公庫の担当者から必要とされる書類や資料の準備を伝えられます。用意に時間が掛かると面談・相談日時が遅れ、融資実行日も遅れていきます。書面等は速やかに揃え、出来る限り早い日時で面談や相談ができるようにしましょう。
申込金額と妥当性は?
新型コロナ貸付は日本公庫の一般融資とは別枠扱いとなっており、国民生活事業では6,000万円、中小企業事業では3億円が融資限度額となっています。しかしながら融資審査では、企業の借入総額や返済能力等を総合的に判断するため、一般融資の残高や企業の借入総額との兼ね合いは避けられず、制度上の限度額を新たに申し込むことは難しいのが実情です。(なお、既存借入を新型コロナ貸付に含めて借換する場合もあるため限度額が大きく設定されている様子です。)
ではどのくらいを目安に申し込めば良いのでしょうか?そもそも新型コロナ貸付を申し込む理由の多くは、急激な環境変化によって売上高が減少し、資金繰り悪化等の先行き不安を払拭する、もしくは経営基盤を維持するための運転資金と言えます。新型コロナウイルスの影響がどこまで続くかは予想できませんが、今後数か月間(3~6か月間)で必要になる資金量を予測・算出し、その額を目安として申込額を決めます。
平常時における企業の所要運転資金は一般的に平均月商の3か月分程度で、緊急時の運転資金である新型コロナ貸付を含めて平均月商の6か月分程度までに運転資金としての借入が納まることが、以降の返済負担を考慮すれば妥当と推察されます。よって、多くても平均月商の3か月分+α程度が新型コロナ貸付の限度額と捉えるべきかと思われます。申込時には十分に検討し必要と想定される金額を設定し、日本公庫の担当者との面談時には算出根拠や必要となる理由をしっかりと説明し、妥当であることを理解してもらえるようにしてください。
また、この面談・相談によって申込金額を変更しなければならないこともあり、もしも必要な資金に不足が発生しそうな場合は、信用保証協会の制度融資を利用することや借入の返済条件を変更することなども急いで検討してください。
担保と連帯保証人はどうなる?
新型コロナ貸付の制度において、担保は無担保とされています。しかしながら、新型コロナ貸付の申込額、借入総額、企業の業績、売上規模、信用力や利用実績などを総合的に判断したうえで、新型コロナ貸付で申し込んだ全額が無担保での取り扱いになるか、減額されるか等が決まりますので、融資担当者との面談時には返済条件等を含めて十分に相談してください。
申込者が個人事業主の場合、連帯保証人は不要で、申込者が法人の場合は代表者が連帯保証人になります。なお、法人代表者の連帯保証を不要とする経営者保証免除特例制度を希望する場合は、申込時に選択する必要があり、さらに一定の要件を満たす必要があり、かつ一定の利率が上乗せされます。
新型コロナ貸付の特別利子補給制度について
新型コロナ貸付では特別利子補給制度が設けられます。新型コロナ貸付の融資額の内3,000万円以内について当初3年分の利子が補給されるため、この部分が実質的に無利子になるというものです。ただし、この制度が当てはまるには売上高の減少割合を一定基準満たす要件があります。また、現時点ではこの利子補給に関する細かな手続き等は未定ですが、融資実行済みでも遡って適用されることになっています。(現状の詳細についてはこちら。)
申し込みはWEBがカンタンで速い
現在、新型コロナ貸付は日本公庫のWEBから申し込むことができ、申込書類や説明資料一式は郵送で受け付けています。WEB申込は画面の流れと指示に従って必要事項をプルダウン選択や入力していけば数分でできるようになっています。申込後に日本公庫の担当者との面談・相談で一度は取扱支店に訪問することがありますが、融資契約を含めほとんどの手続きがWEB、郵便、電話、FAX、Eメールなどで行えるようになっています。
緊急時の資金調達は「柔軟に」そして「スピード対応」することが何よりの秘訣です。
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