中小企業が活用すべきクラウドサービスとは?現状や選び方を解説
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中小企業にとって、効率的かつ柔軟な業務運営を実現するための鍵となるのがクラウドサービスです。しかし、クラウドサービスの種類は多岐にわたり、どのサービスが自社に最適かを見極めるのは容易ではありません。本記事では、中小企業がクラウドサービスを活用する際の現状や、その選び方について詳しく解説します。
中小企業のクラウドサービスの利用状況
中小企業のクラウドサービスの利用状況について、総務省の「令和3年 情報通信白書」と「令和3年通信利用動向調査の結果」によると、2020年時点で全体の68.7%がクラウドサービスを利用しています。しかし、この数字は企業の規模や資本金によって大きく異なります。
具体的には、資本金1千万円未満の企業ではクラウド利用率が44.2%にとどまっています。これは、中小企業がクラウドサービスの導入に慎重であることを示しています。資本金1千万円~3千万円未満の企業では利用率が58.2%とやや高くなりますが、それでも半数程度です。
一方で、資本金1億円~5億円の企業ではクラウド利用率が77.3%に達し、50億円以上の大企業では95.0%と非常に高い利用率を示しています。これらのデータから、大企業ほどクラウドサービスの利便性と重要性を理解し、積極的に導入していることがわかります。
中小企業がクラウドサービスを利用するメリット
中小企業がクラウドサービスを導入する主なメリットは以下のとおりです。
1.コスト削減の効果が高い
クラウドサービスでは初期投資が不要で、従量課金制のため必要に応じて柔軟にリソースを増減できます。たとえば、季節や業務のピークに合わせてリソースを増やし、平常時には減らすことが可能です。また、オンプレミスシステムのハードウェアの購入費用やメンテナンス費用といった運用管理コストを大幅に削減できます。
2. 運用管理の負担を軽減できる
クラウドサービスの運用管理はプロバイダが担うため、自社での管理やメンテナンス作業が大幅に削減されます。たとえば、ソフトウェアのアップデートやデータバックアップなどの作業がプロバイダ側で行われるため、企業は本来の業務に集中できます。これにより、IT部門の負担を軽減し、人材リソースをより戦略的な業務に振り分けやすくなるでしょう。
3. 迅速な導入と柔軟なスケーリングが可能
クラウドサービスは既存のサービスを利用できるため、導入が迅速に行えます。たとえば、新しいプロジェクトや業務拡大に伴い、すぐに必要なITリソースを利用開始できるため、タイムロスを最小限に抑えることが可能です。
4. データの共有と連携が容易
クラウド上のデータには、インターネット回線とデバイスさえあれば場所や時間を問わずにアクセスできるため、社内外での共有や連携が容易になります。たとえば、リモートワークや出張先でも安全にデータにアクセスできるため、チーム全体でリアルタイムに情報を共有できます。これにより、業務効率が向上し、迅速な意思決定につながります。
中小企業がクラウドサービスを導入する際の課題
中小企業がクラウドサービスを導入する際には、以下のような主な課題があります。
IT人材の不足
クラウドサービスの導入には専門的な知識が必要ですが、多くの中小企業ではその旗振り役となるIT人材が不足しています。
経済産業省はIT人材の需給モデルを構築し、統計データをもとにIT人材数を推計しました。その結果、若年層の人口減少により2019年をピークにIT関連産業への入職者が減少し、IT人材の高齢化が進むことが予想されています。また、2030年までにIT需要との需給ギャップから、40~80万人のIT人材が不足する可能性があると試算されています。
このため、クラウド移行のプロジェクトを円滑に進めることが難しい現状があります。たとえば、クラウドサービスの設定や運用、トラブルシューティングなどを行う専門家が社内にいないため、外部のコンサルタントを頼る必要性が生じることもあるでしょう。
コストの負担
クラウドサービスの導入には初期費用やランニングコストがかかります。特に中小企業にとっては、このIT投資に対するコスト負担が大きく感じられることがあります。たとえば、月々のサービス利用料やデータ転送費用が予算を圧迫することもあるでしょう。オンプレミス型と比べてコストが低いとしても、費用対効果を慎重に評価する必要があります。
セキュリティ面での不安
クラウド上でデータを管理することに対し、セキュリティ面での不安が存在します。データが第三者のサーバーに保存されるため、データ漏洩や不正アクセスのリスクが懸念されます。そのため、顧客情報や機密データが流出した場合の影響を考えると、自社でオンプレミス型を利用すべきとの考え方もあるでしょう。
既存システムとの連携が難しい場合がある
オンプレミスのシステムとクラウドサービスとの連携が難しいという課題もあります。既存の業務システムやデータベースをクラウド環境と統合するには、技術的な障壁が多く存在します。たとえば、異なるプラットフォーム間でのデータ互換性の問題や、システム間のデータ同期が挙げられます。
データの移行に労力がかかる
オンプレミスからクラウドにデータを移行する作業は時間と労力を要します。大量のデータを安全かつ確実に移行するためには、的確な計画の立案が必要です。たとえば、データ移行中に業務に支障が出ないようにするために、段階的な計画を立てることが大切です。
中小企業のクラウドサービスの選び方
中小企業がクラウドサービスを選ぶ際の主なポイントは以下のとおりです。
1. サポート体制の充実度
クラウドサービスを初めて利用する際や運用中に疑問やトラブルが生じることがあるため、適切なサポート体制が整っているサービスを選ぶことが重要です。特に中小企業ではIT人材が限られている傾向があるため、外部のサポートが欠かせません。
たとえば、24時間対応のカスタマーサポートや専門スタッフによる技術支援が受けられるサービスが望ましいでしょう。
2. セキュリティ対策
クラウド上のデータ管理に関するセキュリティ面での不安がある中小企業は少なくありません。そのため、サービスプロバイダ側の堅牢なセキュリティ対策に加え、自社でも十分なセキュリティ対策を施すことが必要です。
たとえば、データ暗号化、二要素認証、定期的なセキュリティ監査などを実装しているサービスを選ぶとよいでしょう。
3. 既存システムとの連携性
オンプレミスのシステムとクラウドサービスとの連携が難しいという課題があります。そのため、クラウドサービスの選定時には、既存システムとの連携性能を十分に検討し、適切なサービスを選ぶことが重要です。例えば、API連携やデータ移行ツールが充実しているサービスを選ぶことで、スムーズな移行が可能になります。
4. コストパフォーマンス
初期投資が不要で従量課金制のクラウドサービスは、中小企業にとってコスト面でメリットがあります。ただし、無計画な利用では月々の利用料が高くなる可能性があるため、サービスの課金体系を理解し、計画的に利用することが重要です。たとえば、使用頻度やデータ量に応じたプランを選択し、コストを最適化することが求められます。
中小企業のクラウドサービスの導入の流れ
クラウドサービスの導入において、最も重要なステップは以下のとおりです。
1. 目標の設定
クラウドサービスを導入する前に、何を達成したいのかを明確にすることが重要です。たとえば、コスト削減、データセキュリティの向上、生産性の向上など、具体的な目標を設定しましょう。
2. 社内ニーズの確認
どのクラウドサービスが自社のニーズに合致するかを確認します。たとえば、ファイルストレージ、オフィスアプリ、プロジェクト管理など、どの分野にクラウドサービスが必要かを検討することが重要です。
3. サービスの選定
社内ニーズに合ったクラウドサービスを選定します。たとえば、サポート体制、セキュリティ、既存システムとの連携性、コストパフォーマンスなどを総合的に検討し、自社に最適なサービスを選ぶことが重要です。
4. 移行計画の策定
オンプレミスからクラウドへのデータ移行や、既存システムとの連携など、移行に向けた具体的な計画を立てることが重要です。たとえば、データ移行のスケジュール、必要なリソース、担当者の割り当てなどを詳細に計画します。これにより、移行がスムーズに進むでしょう。
5. 社内体制の整備
クラウド導入に向けた社内の運用体制を整備することが重要です。利用者への教育やサポート体制の構築など、導入後の運用を見据えた準備が必要です。たとえば、社員向けのトレーニングを実施し、クラウドサービスの利用方法を伝えたり、ケーススタディによって思考力を鍛えたりします。
まとめ
中小企業がクラウドサービスを導入することで、コスト削減や業務効率の向上など、多くのメリットを得られます。しかし、導入にはIT人材の不足やセキュリティ面での不安、既存システムとの連携など、多くの課題も存在します。これらの課題を克服するためには、明確な目標設定、社内ニーズの確認、適切なサービスの選定、計画的な移行、そして社内体制の整備が重要です。
段階的に進めることで、クラウドサービスをスムーズに導入しつつ、その効果を最大限に引き出すことができるでしょう。
ABOUT執筆者紹介
加藤良大
フリーライター
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歴11年フリーライター。執筆実績は23,000本以上。
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