01 June

社員の成長を促す研修とは?

掲載日:2020年06月01日   
社会保険ワンポイントコラム

企業の成長を阻害する要因をアトランダムに挙げていくと、「人口構造の変化」、「メンタル不調に陥りやすい社会構造」、「コンプライアンス重視社会の到来」など枚挙に暇がありません。とりわけ、「あらゆる価値観がシフトしている時代」に立ち至ったことが大きいのではないでしょうか。そこは「答えのない世界」だとも言えます。「答えがある世界」では、経験値の高い人をリーダーにして、答えをみんなで探し出せば事足りました。しかし、「答えのない世界」では、多様な人たちが協調して答えを創り出さなければ生き残れません。

このような時代であるからこそ、社員個々の能力を高める研修は必須です。しかし、多くの企業で行われている社員研修は、「新入社員研修」「階層別研修」「管理職研修」など、極めてルーチン的な枠組の中の研修にとどまっているようです。これで本当に企業という組織を構成する人材が有為に育っているでしょうか。人材の価値はバランスシートに計上されませんが、「負債」とみなさざるを得ない社員が「資産」に転化しているでしょうか。これまでの研修で十分機能している企業は問題ありませんが、そうでない企業は研修を根本から見直す必要があります。併せて、人材育成を「投資」だと捉え直すべきだと思います。

よく見受けられるのは、研修を実施するイシュー(課題)が設定されていないケースです。換言すれば、「イシューが何か」が考えられていないのです。組織人たる社員が抱える本質的な課題が捉えられていないため、おざなりの研修に終始してしまうのです。このような企業では研修の成果が検証されず、「研修ための研修」という負のスパイラルに陥ってしまいがちです。

「答えを創り出す」時代の社員研修は、まず企業が求める社員像を思い描き、また社員が抱える課題を把握し、現状との乖離を埋めるスキルが何なのかを具体化することから始めなければなりません。

例えば、沈滞した組織の活性化を促したいのであれば、「組織の心理的安全性を高めるコミュニケーション研修」、管理職のマネジメント能力を高めたいのであれば、「ソーシャルスタイルを土台としたリーダーシップ研修」、経営者が社員の経営参画を望むのであれば、「社員のあらゆるライフスタイルの場面に自己研鑽を促すオールアラウンド研修」など、その効果を体感・検証できる実効性のある研修を企画すべきでしょう。

そもそも、社員研修は何が物事の本質かを議論し、突き詰めるための組織風土を維持し続け、組織のパフォーマンスを向上させるために行います。企業経営最大のミッションといっても過言ではありません。HR部門はその重責を担っているのです。

現在、新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していた社員研修が滞っている企業も多いと思います。場合によっては、Zoom等によるオンラインで実施している企業もあるでしょう。しかし、オンラインによるコミュニケーションには注意が必要です。

日常的な会話や会議の表層部分を捉え、単純に言葉をやり取りするのがコミュニケーションだと思いがちです。しかし、本来コミュニケーションは「誤解」や「迂回」「沈黙」といったアクシデントや面白みによって成り立っています。このような機能があるからこそコミュニケーションが重要視されるのです。

一方、オンラインによるコミュニケーションには、このようなアクシデントや面白みが消え失せることが多くなるようです。オンラインというバーチャルな世界では、コミュニケーションが内包するある種の無駄や遊びが排除されるからかもしれません。従って、オンライン研修はライブ研修には敵わないと理解すべきです。

新型コロナの時代にオンライン研修に期待してしまうのは仕方ありません。しかし、アナログな方法で「自律型社員」を育成するのはいかがでしょう。与えた経営課題についてのソリューションを図解入りでレポートしてもらいます。答えを求めるというより、「自ら考え自ら行動する社員づくり」が目的です。将来にわたり大きな効果が期待できるのではないでしょうか。

ABOUT執筆者紹介

大曲 義典

株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP® 大曲義典

原稿提供元株式会社ブレインコンサルティングオフィス「かいけつ!人事労務」

[democracy id=”54″]

お客様満足度No.1・法令改正に対応した財務会計ソフト「会計王」はこちら

  • おんすけ紹介ページ

Tag

最新の記事

2025年07月10日定額減税、まだ終わってない?2025年度(令和7年度)住民税の決定通知書で確認すべきこと
2025年07月09日事前確定届出給与の判断と定めの通りに支給されたかの判断は別物
2025年07月08日【令和7年 最新!】確定申告はいくらから必要?副業やアルバイトなどケース別にスッキリ解説|税理士監修
2025年07月07日【税理士が解説】住民税を合法的に節税する方法|仕組み・節税テクニック・注意点まで徹底解説
2025年07月04日残業代が増えたら社会保険料も上がるのか?その時、必要な届出とは
人気記事ランキング
2025年04月23日 特定親族特別控除とは?大学生が150万円まで稼いでも63万円控除できるの?扶養控除との違いや課税リスクも解説
2022年08月24日 【インボイス制度】登録されているか確認する方法&公表サイトではどんな情報が公開される?
2025年06月17日 【令和7年度税制改正】給与計算担当者必見!所得税改正が給与事務や年末調整事務に与える影響は?
2025年07月10日 定額減税、まだ終わってない?2025年度(令和7年度)住民税の決定通知書で確認すべきこと
2025年06月06日 「食料品の消費税ゼロ」とは?非課税・免税の違いと実施された場合の影響を解説
2024年10月30日 なんでうまく充電できない?USBケーブルと充電器のトラブル
2024年03月01日 結局、一番得する社長の役員報酬額はいくらなのか!?
2024年12月04日 「NISAなどの金融所得があると社会保険料が増やされる」って本当?
2025年06月02日 【令和7年度税制改正決定版】所得税関係の改正まとめ!年収の壁は最終的にどうなった&住民税や社会保険は?基礎控除額・給与所得控除額が増える人は?
2024年07月10日 【免税店(輸出物品販売場)とは?消費税が免税になる条件と手続き、不正のパターンを解説】

カテゴリ

お問い合わせ

お問い合わせ

当サイトへのお問い合わせはこちらよりお願いします。