24 April

税務調査にもいろいろな種類が!反面調査・現物確認調査・無予告調査

掲載日:2023年04月24日   
税務ニュース

税務調査にはいろいろと種類があります。一般的に考えられている税務調査は、予め税務調査の日程の通知があり、その通知をされた納税者に対し、納税者の経理資料などをチェックするものと思われますが、税務署が行う税務調査はこれだけではありません。

税務調査先の取引先を調査する「反面調査」

まず、反面調査と言われる調査があります。これは、本丸である税務調査先の取引先を調査するものを言います。税務調査先である納税者の取引をチェックしている時、現金で数千万の支出をしているなど、怪しい経費が見つかったとします。この経費は本当に税務上認められる経費なのか、税務調査先を調べてもよくわからない場合、事実関係を確認するためにその取引先を税務調査する権限が税務署には与えられています。

取引先を調査すれば、事実関係の確認がスムーズにできます。税務調査は脱税などを防止するために行われるものですから、このような権限が国税調査官には与えられているのです。税務調査においては、調査先が活用している銀行を調査することもありますが、これも反面調査の権限で行われています。

反面、取引先を調査されると迷惑がかかるため、何とか反面調査を差し止めたいという要望を受けます。押さえていただきたいのは、税務署は自由に反面調査できる訳ではなく、「客観的に見てやむを得ない場合に限り」それができるとされている点です。国税も反面調査は納税者に大きな負担になることは理解していますので、納税者本人を調べても事実関係が確認できないような、反面調査せざるを得ない場合に限って反面調査ができるとされています。

ただし、非常に残念なことに、国税職員のほとんどがこの取扱いを知りません。むしろ、反面調査は税務署に認められた権限であるため、何かあると反面調査をしようとします。それどころか、国税調査官は納税者が反面調査されると困ることを理解しています。このため、中には「反面調査をする」と脅しをかけて、税務調査の交渉を有利にすることを目論んでいる輩もいます。このような税務調査がなされた場合には、先のルールを前提に、きちんと反論する必要があります。

隠している証拠がないかを確認する「現物確認調査」

次に、現物確認調査という調査があります。これは、納税者が保管している金庫や代表者の机の引出しを開けさせて、税務署に隠している証拠がないかを確認する調査を言います。現職時代には、代表者の個人通帳を現物確認調査で把握し、その個人通帳を確認すると法人で計上しなければならない売上金が入金されていたといった事例がよく報告されていました。

その他、近年は社長が使っているパソコンなどもよく見られます。脱税の情報につながるメールなどが残っていないかチェックするためです。実際のところ、メールの内容を基に節税目的の取引が行われたことが把握され、租税回避の証拠とされて巨額の税金を追徴された事件もありました。

現物確認調査で押さえておきたいのは、税務署が確認できる範囲は、調査先の事業に関係する資料に限定され、その確認方法も最低限の方法とされるということです。このため、納税者の了解を得ることなく、個人的な情報が入っている社長の机やパソコンを勝手に見たり、金庫を開けたり、社長のパソコンを勝手に操作することは違法です。その反面、納税者の承諾を受ければ現物確認調査は合法とされます。

このため、何とか現物確認調査を承諾させようと、国税調査官は調査先にプレッシャーをかけてきます。そのプレッシャーに負けず、基本承諾しないこととし、見せていいものかどうか慎重に検討しなければなりません。

いわゆるガサ入れ「無予告調査」

最後に、無予告調査について解説します。これは文字通り、税務調査の予告がなくいきなり国税調査官が臨場する調査を言い、いわゆるガサ入れです。調査の予告をすると、経理資料を廃棄される恐れがある納税者もおり、このような者に対しては無予告調査が認められています。このため、不正取引が多いと言われる業種や、現金商売など資料が残りにくい業種について、無予告調査がよく行われるという印象があります。しかし、これら以外の業種でも税務署の判断で無予告調査をすることができるとされています。

ただでさえ怖い税務調査なのに、無予告調査となるともっと強硬的で怖いと思われる方が多いです。しかし、無予告調査の法律上の性格は、単に事前の予告を不要とする税務調査であり、「納税者の承諾の基に行われる任意調査」という税務調査の本質は変わりません。このため、無予告調査においても納税者に配慮しなければならず、無予告調査の際は必ず「無予告調査をさせていただくことの承諾」を納税者から得ることを国税調査官は厳命されています。

このため、無予告調査に対しても承諾しないことができます。「今日は忙しいから無予告調査をせず、別日に日程調整の上来てほしい」と申し出ると、それ以上税務署は調査を進めることはできません。無予告調査の場合、十分な準備ができていないため往々にして税務署にいいようにやられてしまいますので、無予告調査はすべからく延期をお願いする必要があります。

ABOUT執筆者紹介

元国税調査官・税理士 松嶋洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。

著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

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