07 September

民法改正により「身元保証書」はどう変わった?

update_2020年09月07日   
社会保険ワンポイントコラム

改正民法が2020年4月から施行されています。今回の改正は、1896年の民法制定以来の大きな改正で、その中心をなす「債権」に関する部分は人事労務管理の分野にも大きな影響を与えています。会社が社員を採用するときに、当該社員の親族等と身元保証契約を交わしていると思います。その契約を証する書面が「身元保証書」です。この制度は「身元保証ニ関スル法律」という古い法律に根拠がある「保証契約」の一種ですが、会社に締結が義務づけられているものではありません。「保証契約」は、代金の支払や借金の返済などの債務を負う「主債務者」=「社員」がその支払をしない場合に、本人に代わって支払をする義務を負う契約のことです。その中でも、極度額(限度額)を定めない契約を「根保証契約」といいます。身元保証契約も保証人が契約を締結する時点では、将来いくらの債務を保証すべきか確定していませんから「根保証契約」に該当します。

2020年4月1日からは、この「根保証契約」について、賠償額の上限たる極度額を具体的に定めないと、その契約自体が無効となります。保証人の保護の強化が図られたわけです。これまで、多くの会社では「念のため・・・」「どこの会社でも契約しているから・・・」程度の意識で身元保証契約を交わしていたのではないでしょうか。極度額の定めもなかったと思います。民法改正後は、極度額を具体的に定めることはもとより、本質的な「身元保証書」自体の意義・役割をも併せて検討するのがよろしいかと思います。

そもそも、会社が身元保証契約に見出している意義・役割は、次の3点に集約できるでしょう。

(1)新入社員の身元を確認する意味での証明
(2)新入社員が社会人として適格性を有していることの証明
(3)新入社員の入社後の行為で会社に損害が発生したときの損害賠償の担保の役割

これら(1)~(3)の意義・役割を期待するのであれば、身元保証契約を従前どおり締結することになります。しかし、雇用の変容等に伴い、身元保証契約の在り方を見直すという選択肢もあり得ると思います。そのように考えると、会社としての身元保証契約及び身元保証書に関する民法改正後の取扱いは、次のいずれかのパターンとなるでしょう。

①上記(1)~(3)をそのまま維持する

身元保証書に規定する損害賠償額の上限額(極度額)について、具体的な金額やそれを想
定できる文言に修正する。

②上記(3)を廃止する

身元保証書の損害賠償に関する規定を削除する。

③身元保証契約そのものを廃止する

極度額については、法律に上限額が規定されているわけではありませんから、会社で自由に設定することが可能です。ただし、金額の設定によっては、引き受け手が見つからなかったり、身元保証を求める意義が希薄化したりします。従って、勤続年数や担っている役割・責任などの社員の属性によって「給与の○○月分」とするなどの工夫が必要となるでしょう。なお、具体的な極度額の設定は、2020年4月1日以降に締結する身元保証契約から適用されます。施行日前に締結された契約については経過措置が設けられていますから、極度額の有無は問題となりません。また、施行日以降に契約を更新する場合は極度額の定めが必要となりますので、失念しないようにしましょう。

ABOUT執筆者紹介

大曲 義典

株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP® 大曲義典

原稿提供元株式会社ブレインコンサルティングオフィス「かいけつ!人事労務」

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