持続化給付金制度の拡充内容−雑所得・給与所得の個人事業者及び2020年に創業した事業者
税務ニュース
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1. 持続化給付金制度の新たな拡充
新型コロナ感染症により売上が大きく減少した事業者に対して、一定の給付金を支給する「持続化給付金」について拡充が行われました。具体的には、あらたに以下の事業者が給付の対象とされることとなりました。
- 主たる収入を雑所得・給与所得で申告した個人事業者
- 2020年1月〜3月の間に創業した事業者(個人事業者・法人いずれも含む)
2. 具体的な拡充内容
具体的にどのような拡充内容なのか、従来の制度とも比較して説明します。
( 1 ) 主たる収入を雑所得・給与所得で申告した個人事業者
従来の制度では、あくまで「事業所得」として申告をした個人事業者でなければ給付要件を満たしませんでした。しかし、中には個人事業者であるにもかかわらず雑所得や給与所得で申告している方もおり、そのような方を救済するために今回の拡充がされることとなりました。
① 給付対象となる方
以下の要件を満たす個人事業者が対象となります。
イ) 雇用契約によらない業務委託契約等に基づく収入を主たる収入として雑所得又は給与所得で確定申告をしており、今後も事業継続する意思がある方
この要件のポイントの1つ目は、「雇用契約によらない業務委託契約等に基づく収入」である点です。つまり、給与所得・雑所得としての申告であっても、会社等に雇用されている方(会社員の方、パート・アルバイト・派遣・日雇労働等の方)は対象になりません。あくまで個人事業者として、個人で仕事を請け負っている方のみが対象となる点に注意です。2つ目が、業務委託契約等に基づく収入が「主たる収入」である点です。「主たる収入」であるためには、2019年の確定申告書にて、以下の2つを満たしている必要があります(詳しい判定の仕方は持続化給付金申請要領(主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者等向け)をご確認ください)。
- 確定申告書第一表の業務委託契約等に基づく収入が、それぞれの収入区分の中で最も大きいこと。
- 確定申告書第三表の収入金額(譲渡所得、退職所得の収入は除く。)に、業務委託契約等に基づく収入よりも大きいものはないこと。
このように、主たる収入であるかは、2019年の確定申告書において形式的に判定されることとなります。なお「雇用契約によらない業務委託契約等」に該当する方の例として、
- 委任契約に基づき、音楽教室や学習塾の講師など、「生徒を教える」という役割を委任されている方
- 請負契約に基づき、成果物を納品されているエンジニアやプログラマーの方
などが挙げられています。
ロ) 2020年1月以降、新型コロナウィルスの影響により、2019年の月平均の業務委託契約等の収入に比べて、50%以上減少した月がある方
従来の持続化給付金制度は、前年同月と比較して50%以上収入が減少している月があれば対象となりました。一方、今回拡充された雑所得・給与所得として申告している個人事業者の場合には、前年の月平均収入に対して、50%以上減少した月があることが要件となっていますので、注意が必要です。
ハ) 2019年以前から、被雇用者又は被扶養者でない方
2019年以前から、個人事業者をしており被雇用者(会社等に雇用されている会社員、パート・アルバイト、派遣・日雇労働等の方)又は被扶養者(所得税又は社会保険においてどなたかの扶養に入っている方)でないことが要件です。
ニ) 2019年の確定申告書第一表の収入金額等の事業欄に記載がない、又は0円である方
今回拡充の範囲となったのは雑所得・給与所得として申告した個人事業者ですので、事業所得として申告した方は、従来の持続化給付金制度を使って申請することとなります。
② 給付額
2019年の年間業務委託契約等の収入 – (50%以上減少した月の収入×12ヶ月)となります。ただし、従来の持続化給付金と同様、100万円が限度額となります。
③ 申請期間
令和2年6月29日から令和3年1月15日までとなります。
④ 申請に必要な書類
以下の書類が必要となります。(太字は従来の制度から追加で必要となったもの)
- 2019年分の確定申告書第一表の控え
- 50%以上減少した月の売上台帳等
- 申請者名義の国民健康保険証の写し
- 通帳の写し
- 本人確認書類の写し
- 業務委託契約等収入があることを示す書類
最後の「業務委託契約等収入があることを示す書類」とは、以下の3種類の中からいずれか2つの書類となります。
イ) 業務委託契約書等又は持続化給付金業務委託契約等契約申立書
ロ) 2019年分の支払調書又は源泉徴収票又は支払明細書
ハ) 報酬が支払われたことが分かる通帳
イ)の「持続化給付金業務委託契約等契約申立書」とは、契約書がない場合の代替書類で、持続化給付金事務局が定めたフォーマットに従って作成します。契約先の署名と押印が必要となります。なお、ロ)のうち源泉徴収票を提出する場合には、イ)との組み合わせが必須となります。今回はあくまで個人で事業活動を行っている方が対象であり、業務の実態を確認するためです。
( 2 ) 2020年1月〜3月の間に創業した事業者
従来の持続化給付金制度では対象外となっていた、2020年1月以降に創業した事業者も給付金の対象とされることとなりました。
① 給付対象となる方
イ) 2020年1月から3月の間に事業収入を得ており、今後も事業を継続する意思がある方。
ロ) 2020年4月以降、新型コロナウィルスの影響により2020年の開業月から3月までの月平均の事業収入に比べて事業収入が50%以上減少した月がある方。
この要件のポイントは、2つ目の要件の「2020年の開業月から3月までの月平均の事業収入」と比較する点です。新型コロナウィルスが発生する前の3ヶ月の平均収入を基準に、4月以降のいずれかの月がそれ以下になれば、要件を満たすということになります。
② 給付額
2020年1月から3月までの事業収入の合計÷開業月から2020年3月までの開業月数(開業した月は1ヶ月とみなす)× 6 – 2020年の50%以上減少した月の事業収入× 6
で計算した額となります。掛ける月数が従来の12ではなく6である点に注意します。
限度額は従来の制度と同じく、法人200万円、個人事業者100万円となります。
③ 申請期間
令和2年5月1日から令和3年1月15日までとなります。
④ 申請に必要な書類
以下の書類が必要となります(太字は従来の制度から追加で必要となったもの)。
- 持続化給付金に係る収入等申立書
- 通帳の写し
- 本人確認書類
- 個人事業の開業・廃業等届出書又は事業開始等申告書(いずれもない場合には、開業日、所在地、代表者、業種、書類提出日の記載がある書類)
2020年に新規創業された方の場合、直近の確定申告書がないため、収入の証明となる書類が必要となります。それが「持続化給付金に係る収入申立書」です。「持続化給付金に係る収入等申立書」とは、2020年1月から50%以上減少した月までの事業収入が記載されており、税理士による署名又は記名押印があるものとなります。フォーマットは持続化給付金の事務局が定めたものを利用します。なお個別に税理士に依頼することが難しい場合には、日本税理士会のHPにて「持続化給付金の申請に係る申立書への税理士確認依頼」をすることも可能です。
ABOUT執筆者紹介
代表税理士
戸村 涼子
小規模事業者におけるキャッシュレス・ペーパーレスの活用
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