10 April

~中小企業の社長のための~効果的な役員報酬の決め方

掲載日:2021年04月10日   
社会保険ワンポイントコラム

昨今の副業解禁モードも相まって、サラリーマンをやりながらフリーランスで副業収入を得る人たちが出てきました。中には副業で才覚を表し、会社を立ち上げて独立を目指す人も出てきています。会社を立ち上げた後の決め事のひとつに、「自分の役員報酬をいくらに設定するか」ということが挙げられます。

今回は、中小企業経営者のための効果的な役員報酬の決め方について解説したいと思います。

1.創業会社の役員報酬の決め方

個人事業であれば、売上から経費を引いた残りのすべてが自分の取り分という言い方ができます。これが法人となると勝手が変わります。サラリーマン時代と同じく、給与という概念が発生します。毎月定額の月額給与を自ら設定し、会計年度を通して同額の給与を受け取ることになります。(これを法人税法上「定期同額役員給与」といいます)

金額の設定は自由です。いくらでも構いません。ただし、原資の一部は自分が会社に入れた資本金であり、銀行等からの借入金であり、お客様からもたらされた利益です。

あまりに金額を高く設定しすぎると、自ら設定した役員報酬を取れずに未払い状態となります。役員報酬の未払い状態というのは、取れてもいない役員報酬に対して税金と社会保険料だけはしっかり取られている状態です。だからと言って、一度決めた役員報酬を会計年度の途中で変更することは法人税法上望ましくありません。そう考えると、役員報酬というのは、毎月の資金繰りの中からきちんと無理なく取れる額で設定することが肝要です。

また、厚生年金には650,000円という等級の上限があります。これを超える役員報酬を設定しても、高くなるのは健康保険料のみで、厚生年金の積み立てが将来増えることはありません。そう考えると、役員報酬を決める際の一つの目安として、650,000円の等級(金額にして665,000円未満)という数字は押さえておきたい数字です。

2.配偶者がいる場合の決め方

配偶者がいる場合、配偶者にも会社から給与を支給されるケースがあると思います。この場合、自分と配偶者それぞれをいくらに設定するかを決める必要があります。そこで、夫(ここでは夫が社長とします)が妻を社会保険の扶養に入れることで将来の年金額にどのように影響するのかを検証してみたいと思います。

社会保険の扶養の要件は、年収見込み130万円未満(60歳以上または一定の障害がある場合は180万円未満)です。前年度実績は一切関係がなく、将来に向かって見込まれる収入で判定します。つまり、月に換算すると、月額約108,000円未満(60歳未満の場合)である必要があります。

社会保険の扶養に入っている配偶者のことを「第3号被保険者」といいます。

第3号被保険者とは、夫(ここでは夫が社長とします)が妻を扶養することで、夫の厚生年金保険料で妻の国民年金保険料まで賄ってくれるとってもお得な制度です。つまり、妻は1円も保険料を負担することなく、将来の年金に反映してくれるのです。

令和2年度(令和2年4月~令和3年3月まで)の国民年金の保険料は月額16,540円です。個人事業であればこれを夫婦それぞれで納めなければならないわけですが、第3号被保険者を活用することで、年額198,480円の保険料を浮かせることができます。

この場合、妻の将来の年金が少なくなってしまうのではないか?という心配があります。

妻の将来の年金は、厚生年金の上乗せがない1階部分のみの支給となります。満額でも年額781,700円しか受け取ることはできません(令和2年度)。将来の備えとしては心もとない金額です。

夫婦の老後については、いくつかのシナリオが考えられます。

① 夫婦共働きでそれぞれが厚生年金に加入する場合

将来的には夫婦合算の年金収入が最も多くなるパターンです。ただし、現役時代の保険料負担もその分多くなります。

② 妻を扶養に入れて老後を迎えた場合

夫の厚生年金をメインに生活設計を組む形になります。現役時代と同じく、夫が妻を扶養する形です。

③ 夫が妻より先に亡くなった場合

夫が受け取っていた老齢厚生年金の4分の3は、遺族厚生年金という形で妻に引き継がれます。夫が高い給与で厚生年金に加入していた場合、妻は自分の厚生年金を受け取るよりも夫の遺族年金を受け取る方が得になるケースがあります。夫に寄せていた厚生年金を妻が遺族年金として受け取るパターンです。

④ 夫婦が離婚した場合

夫婦が離婚した場合、厚生年金の加入履歴は、夫と妻が協力して積み上げた共有財産として、妻がきれいに半分もっていってよいことになっています(これを離婚時の年金分割(3号分割)といいます)。

各自の老後のシナリオを想定して、それぞれの考え方で決めていただくのがよいと思います。

3.取締役が60歳以上の場合の決め方

60歳以上で一定の金額以上の役員報酬を取っている場合、年金カット(支給停止)の対象となります(これを「在職老齢年金」といいます)。

60歳から65歳未満だと、ボーダーラインは28万円です。役員報酬の金額によっては、本来もらえるはずの厚生年金が支給停止になる場合があります。
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/zaishoku/20150401-02.html

65歳以降だと、ボーダーラインは47万円です。年金カット(支給停止)は、後から遡りで請求することができないため、年金を満額で受け取るためには役員報酬を下げる必要があります。ただし、役員報酬の引き下げは将来の役員退職金の算定に影響する場合がありますので、お付き合いのある税理士や社労士にきちんと相談しながら決めることをお勧めします。
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html

4.役員退職金を考慮した決め方

退職金というのは、節税効果も高く、社会保険料も発生しない為、役員報酬として受け取るよりもトータルでの手残りを増やすことができます。役員報酬は生活に必要な額に留めておき、今すぐ必要ない部分については、将来の自分のための退職金原資として何らかの形で残しておくのもひとつです。

まとめ

役員報酬の取り方を決めることは、自分の将来のライフプランニングをすることに他なりません。自分の老後のため、大切な家族のため、自分が将来に向けてどういうシナリオを描いていくかを決める作業です。

正しい知識と知恵を身につけ、今後の皆さまの事業運営にお役立ていただくことを願っております。

ABOUT執筆者紹介

中山 卓

株式会社エンパワーメント・ジャパン

社会保険労務士 社会福祉士 キャリアコンサルタント
中山福祉労務サポート 代表
株式会社エンパワーメント・ジャパン 代表取締役
一般社団法人インターナショナルハウスふじやま 代表理事

 

静岡県三島市出身。静岡県東部の会計事務所にて、主に福祉関係の顧問先を数多く担当。2013年より独立開業し、静岡、神奈川、東京を中心に顧問先約120社超。2017年より放課後等デイサービス事業を立ち上げ、発達に課題を抱える児童の通所支援事業にも携わる。また、社会保険労務士による日本初の法律系ロックバンドWORKERS!のリーダーとしても活躍中。「ロックで伝える社会保険」をテーマに社会保険、労働法をわかりやすく伝えるための活動を行っている。

株式会社エンパワーメント・ジャパン
社労士バンドWORKERS! オフィシャルWEBサイト

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