22 February

税率はどっち?8%、10%の微妙なライン

掲載日:2019年02月22日   
税務ニュース

消費税が8%から10%に引き上げられるまであと約半年となりました。今回の消費税引き上げにつき過去の引き上げと大きく異なる点が軽減税率の導入です。こちらは低所得者の負担を軽減するため生活必需品の一部、具体的には「外食と酒類を除く飲食料品」「定期購読契約をしている新聞」が増税後も8%に据え置かれる制度です。

各報道でも目や耳にする通り線引きがわかりづらい点もあり、最終的にどのような対応が求められるかは現時点で不明な点もございます。ここではすでに明らかになっている点を確認したいと思います。なお新聞につきましては論点も少ないため今回は省略させていただきます。

さて、飲食料品が軽減税率の対象ということですが、まずお酒は基本的に除かれます。この点で注意すべきは「料理酒」と「みりん」でしょう。「料理酒」は一般的には発酵調味料に該当し、酒税の対象となっておらず酒類に該当しません(「料理用清酒」とあるものを除く)。よって、今回の軽減税率の対象となる(8%)こととなります。次に「みりん」は酒税の対象となっております。よって酒類に該当し軽減税率の対象とならない(10%)こととなります。また「みりん風調味料」は酒類に該当しないため軽減税率の対象となります(8%)。

次にさらにややこしいのが外食とそれ以外の線引きです。国税庁の表現では「飲食設備のある場所で飲食すれば外食とみなす」とあります。つまり何を飲食するかだけではなく、どこで飲食するか、具体的には持ち帰るのか食べて帰るのかによって外食か否かすなわち8%か10%かの判断を要するということです。この点、お持ち帰りと店頭で意思表示を受け8%で会計をしたにも関わらず店内飲食された場合の対応など現場負担が生じることは容易に想像できすっきりした結論に至っておりません。

そのほかいくつか判断の難しいケースを以下列挙します。

  • 「水道水」は飲食料品に該当しないため10%。「ミネラルウォーター」は飲食料品に該当するため8%。
  • 「日本酒」は酒類に該当するため10%。「日本酒を作るための米」は飲食料品に該当するため8%。
  • 「ビール」は酒類に該当するため10%。「ノンアルコールビール」は酒類に該当しないため8%。
  • 「肉用の生きた牛」は10%。「食用の生きた魚」は8%。ただし「観賞用の生きた魚(熱帯魚)」は10%。

まだまだ事例はございますので詳しく知りたい方は国税庁の「消費税の軽減税率制度に関するQ&A」をご参考ください。

このように軽減税率は実務レベルでは煩雑さが伴うため歓迎できない点もございますが、海外では欧州を中心に導入されている国が多くあるのも事実です。日本は消費税の世界では後進ということもあり先輩諸国に倣いながらの制度設計となっているものと思います。

実務で動き出した後に改めて指針が示されることもあるかと思います。まずは現時点での基本的な知識を身につけて来る増税に備えてください。

ABOUT執筆者紹介

税理士 小嶋 純一

税理士法人中山会計

大学卒業後、税理士法人中山会計にて常務社員税理士を務める。相談しやすさNo.1を体現する税理士として、自社の経営の実践並びにお客様の経営サポートを兼務。M&Aスペシャリスト及びM&Aシニアエキスパートの資格を有し、事業承継の出口をサポートするコンサルティングを15年来推進。保険会社・銀行・商工会議所・各士業等とのタイアップによるセミナーなど全国で多数講演。身近な相談窓口として活動中。

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