大企業と取引したい!プレゼンコンペに勝つコツ(前編)
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大企業や行政機関などの大きな組織が物品・サービスを調達するとき、既存の取引先に限らず、新しい取引先候補に対しても提案や見積を募ることがあります。このような入札(総合評価方式)やプレゼンコンペに参加するチャンスを得たら、ぜひ受注を狙いたいですね。
大きな組織の調達活動には、大きな組織ならではの特徴があります。受注を狙うにあたっては、その特徴を理解したうえで臨みましょう。
大きな組織における調達の特徴 ~誰もが納得できる取引先選定~
大きな組織から仕事を受注するには「担当者のお気に入りになればOK」というわけにはいきません。大きな組織では普通、誰かひとりの一存で大きいお金を動かすことが出来ないからです。「なぜその会社に発注するのか」を、担当者が課長・部長・役員・社長にそれぞれ説明して決裁を仰ぐ、等といった承認プロセスが存在します。
また、大きな組織には、意思決定プロセスをブラックボックスにせず社内外の関係者に説明する責任があります。つまり、その会社を選んだ根拠を説明する必要があるのです。例えば大企業では、株主から「取引先をどのように決めているのか」と問われれば説明します。行政組織では、住民から「どうしてその会社に発注しているのですか」と問われれば情報を開示します。
つまり、大きな組織では、誰もが納得できるような、客観的で合理的な説明ができる取引先選定をしなければなりません。「なんとなく良さそうだから」「担当者と気が合うから」という理由では発注できないのです。これが、大きな組織の調達の特徴です。
大きな組織における取引先の選び方 ~提案内容に点数をつける~
大きな組織が入札(総合評価方式)やプレゼンコンペによって取引先を選ぶ際は、各社が提案書やプレゼンテーションで提案した内容に点数をつけるやり方が一般的です。
点数のつけ方はいろいろありますが、評価者が主観で採点する方法よりも、客観的な採点方法が好ましいとされることが多いです。客観的に採点する方法としては、提案を募る前にあらかじめ評価項目と評価基準を用意しておき、提案が集まったら評価者が評価項目・評価基準に則って提案内容に点数をつける方法があります(下のイメージ図ご参照)。評価を終えたら点数を集計し、最も高い点を獲得した会社を選ぶわけです。
こうすることによって、社内の決裁権者や社内外の関係者に対して「なぜその会社を選ぶのか」を論理的に説明することができます。つまり「意思決定の透明性」を高めることができます。
ここで重要なのは、「評価項目で評価される」ということです。また、「評価項目は、選定担当者の感情や主観を排除した客観的なもの」ということです。従って、評価項目にないことは、点数になりません。例えば「担当者に手土産を渡す」「提案書の中身の薄さをカラフルな色遣いや写真・挿絵でカバーする」といった行為には、効果がないと考えたほうが良いでしょう。たとえ担当者がそれを好ましく思ったとしても、そういった感情面に訴える行為で加点する評価項目は通常設けられないからです。
また、総合点で評価されるため、「品質や組織体制は弱いが、価格競争力だけは負けない」といった提案より、総合力のある提案のほうが選ばれやすいと言えます。(ただし、特定の評価項目の配点が大きく設定される場合はあります)
「的を射た提案書」と「的外れな提案書」
発注者側は評価項目に沿って評価するので、提案書の内容が評価項目に沿って書かれていると、評価者は大変採点しやすいです。そういう提案書が「的を射た提案書」です。
一方、提案者側としては、例えば「最近メディアに取り上げられました」といった旬な話題や、「日本の社会問題に一石を投じようとする自社の経営姿勢」など、「これはぜひアピールしたい」と考える話題があれば、そのことにフォーカスした提案書を作りたくなるものです。しかしそれらの話題が評価項目(発注者側が求める話題)とずれていたら、それは「的外れな提案書」になってしまいます。
提案書の構成を考えるときは、「提案者自身が取り上げたい話題」よりも「発注者側が知りたがっている話題」を大切にする姿勢が大変重要です。
コンペに勝つコツは、評価項目に丁寧に対応すること
評価項目は、案件ごとに異なります。また評価項目は、事前に提案者側に開示される場合もあれば、開示されない場合もあります。
評価項目が開示されている案件では、評価項目を読み込めば「提案者が持つ力のうち何が評価されるか」「提案者の何をアピールすれば良いか」が明確に分かります。その評価項目に沿って提案書を構成し、発注者が求めていることに自社がどう対応できるか、ひとつひとつ丁寧にアピールする提案書を作れば良いのです。それが、入札(総合評価方式)やコンペティションに勝つコツです。
評価項目が開示されていない案件でも、発注者側が提案に何を求めているかは、提案依頼資料(提案要領を説明する資料)に、ある程度書かれているものです。また、発注者側の経営計画や事業状況などからも、ある程度推測することができます。提案書を作り始める前に、それらの情報をよく精査して、推測で良いので評価項目(仮説)をリストアップしましょう。そしてその評価項目(仮説)に沿って提案書を作りましょう。その作業を丁寧に進めることで、コンペティションに勝つ確率が上がります。
今回は「プレゼンコンペに勝つコツ」の前編として、大きな組織の調達の特徴や、コツの概要(評価項目に丁寧に対応する)を解説しました。次回の後編では、より理解を深めていただくために、発注者側の視点を具体的に例示して解説します。
ABOUT執筆者紹介
経営コンサルタント 古市今日子
株式会社 理 代表取締役
経済産業大臣登録 中小企業診断士
外資コンサルティングファームなどで16年間経営支援の経験を積
事業再生に携わるほか、自治体の経営相談員や創業支援施設の経営
中小事業者・起業希望者の経営相談への対応件数は年間約200件
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