ワーク・エンゲージメントを理解しよう!従業員がいきいきと働く職場
社会保険ワンポイントコラム
ワーク・エンゲージメントとは
何となく聞いたことあるけど、どういう意味かよく分からない。そのような言葉の代表がワーク・エンゲージメントではないでしょうか。そもそもエンゲイジメントとは、一般的には「婚約」、「関与」、「約束」といった意味です。厚生労働省『労働経済の分析(令和元年版)』において、「働きがい」をもって働ける職場環境の実現への取り組みとして、ワーク・エンゲージメントという言葉が登場しています。その中では、ワーク・エンゲージメントとは、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」と紹介されています。
ワーク・エンゲージメントが高い組織では
ワーク・エンゲージメントが高いというのは、従業員の心理状態が仕事に対してポジティブで充実していることをいいます。つまり、ワーク・エンゲージメントの高い従業員は、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て、「いきいき」としている状態にあるのです。この「いきいき」がポイントです。単に、心身が健康であるだけでなく働きがいを感じながら働いているのです。
このような従業員が多い会社では、愛社精神が高まる、生産性が向上する、離職率が低下する等の効果が期待できます。
ワーク・エンゲージメントの測定はどう行うの?
測定するツールは、それを開発提供しているサービスが多種ありますので、自社にあったものを利用することになろうかと思います。また、厚生労働省の研究班が作成した「新職業性ストレス簡易調査票」は、誰でも無料で利用することができます。
注意点は、ワーク・エンゲージメント(あるいはエンゲイジメント)の概念や捉え方は、法律で定まっているものではなく、必ずしも各サービス一様ではないということです。そのため、自社におけるワーク・エンゲージメント(あるいはエンゲイジメント)の定義を明確にしておくことが測定ツールを選ぶ際のポイントになると考えます。
どうやってワーク・エンゲージメントを高めるか
組織として取り組む場合、会社レベル、部署レベル、作業・課題レベルの3つのカテゴリで考えます。(参考:島津明人『ワーク・エンゲージメント』(P103))
(1)会社レベル
会社の存在意義やビジョンを明確に打ち出しましょう。具体的には経営理念やビジョン、バリューを作成し社内に浸透させることが大切です。そして、例えば、採用においても、経営理念等に合致しない応募者は採用しないようにします。そのような行動が従業員の会社に対する信頼に繋がり、「この会社のために自分も成長しよう」というポジティブな心理状態にさせるのです。その他、評価制度の評価項目に、経営理念等に関する項目を入れてみましょう。従業員は経営理念等に沿った行動ができているかの気付きにもなりますし、経営理念等の浸透にも効果的です。
(2)部署レベル
部署レベルでは、上司がキーマンとなります。
部下にいきいきと働いてもらうための上司の関わりの一例は、「指示を出すときに、その仕事の目的や意義を一緒に伝えること」です。意味が分からずに取り組む仕事ほどむなしく感じることはありません。また、「〇時から〇時の1時間は、誰にも話しかけない」というルールを設けている会社(部署)もあります。これは、仕事に没頭しやすくするための工夫です。そして、ミスがあったとしても原因を追及しすぎるのではなく、「では、どうするか」という未来に目を向けた対応をしていく姿勢も、部下が萎縮せずにいきいきと活動する原動力となるでしょう。
(3)作業・課題レベル
前述の厚生労働省の資料によると、「業務遂行に伴う裁量権の拡大」がワーク・エンゲージメントに良い影響を与える可能性が示されています。つまり、仕事に対する裁量が大きければ大きいほど、自分で考えて行動する機会が増え、活力や熱意を注ぐことができる、ということかもしれません。業務内容や立場によって裁量の範囲はいろいろあると思いますが、「自分がこの仕事をコントロールしている」という意識をもってもらえるように工夫できないか考えてみましょう。例えば、提案したきたことをやらせてみる、今までとは違う解決方法を考えてもらうなど、会社として後押しする取り組みをするのはいかがでしょうか。
まとめ
ワーク・エンゲージメントは、従業員が「いきいき」と働くことを目指します。多くの企業がメンタルヘルス対策を行っていると思いますが、ネガティブな状態を予防・解消するだけでなく、さらにポジティブな感情をもってもらえるように、既存のメンタルヘルス対策と合わせて行っていくことが大切です。
ABOUT執筆者紹介
三谷社会保険労務士事務所 三谷文夫
三谷社会保険労務士事務所
大学卒業後、旅館や書店等で接客や営業の仕事に従事。前職の製造業では、総務担当者として化学工場での労務管理を担う。2013年に社労士事務所開業。労務に留まらない経営者の話し相手になることを重視したコンサルティングと、自身の総務経験を活かしたアドバイスで顧客総務スタッフからの信頼も厚い。就業規則の作成、人事評価制度の構築が得意。商工会議所、自治体、PTA等にて研修や講演多数。大学の非常勤講師としても労働法の講義を担当する。趣味は、喫茶店でコーヒーを飲みながらミステリ小説を読むこと。