09 May

【定額減税】住民税は大丈夫?早めに確認したい4つのポイント

掲載日:2024年05月09日   
税務ニュース

6月からの定額減税は所得税だけでなく住民税もあります。住民税は所得税と違い、2023年分の所得や家族状況が基準です。年末調整や確定申告の内容によっては、住民税の定額減税が受けられなかったり、予想外の事態になったりするかもしれません。今回は、住民税の定額減税で確認したい4つのポイントをお伝えします。

登場人物

よっちゃん(以下「よ」):まゆこの夫。行政書士。仕事はできるが税金はくわしくない。特技は料理と釣り。夢は釣り三昧の日々。 


まゆこ(以下「ま」):税理士・税務ライター。「こむずかしい税金をいかに分かりやすく表現するか」ばかり考えている。趣味は、よっちゃんのごはんを食べること。

定額減税、所得税は「2024年分」住民税は「2023年分」を基準に計算

「なんで住民税が大事なの?市町村が計算するから関係ないじゃん」
「…住民税の定額減税がいつの分の所得を基準に計算するか、知ってる?」
「住民税の定額減税も所得税と同じで2024年6月に始まるから…2024年分の所得じゃないの?」
「ハズレ。住民税の定額減税は2023年分の所得が基準なの」
「そうなの?」
「所得税は『今の年の所得に課税(現年課税)』だけど住民税は『前の年の所得に課税(前年課税・翌年度課税)ってなっているのよ」

所得税は「今年の所得に課税する」

「年末調整も12月にやるけど、変動があれば年明け1月中にやり直しする。『早めに申告も納税も済ませる』って感じ」
「それで2024年分の定額減税は『2024年分の所得』が基準なのね」

住民税は「前の年の所得に課税する」

「年度ってことは『毎年4月1日から翌年3月31日まで』ということ?」
「そうよ。前年分の年末調整や確定申告の情報を基に計算して今年度に徴収する。本来なら4月から徴収すべきだけど、確定申告が終わってすぐだとタイトじゃない?だから6月から徴収になっているんじゃないかな」

「だから2024年度の住民税の定額減税は2023年分の所得が基準なのね」
「そう。もし2023年分の年末調整や確定申告で何かがあると、住民税の定額減税に影響するの」

住民税の定額減税① 16歳未満の扶養親族に注意

「私が気になるのは16歳未満の扶養親族の記載もれ」
「たいてい書くでしょ。年末調整でも確定申告でも記入欄があるし」

「所得が少なければ書くかもね。住民税の非課税世帯の判定で、16歳未満の扶養親族は必要だし」

「でも、そうじゃなければ書かないかもよ」
「どうして?」
「今の扶養控除は『扶養親族が年末時点で16歳以上』が条件でしょ。扶養控除等申告書の『控除対象扶養親族』には16歳以上の扶養親族だし」
「うん」
「結果『16歳未満の子については非課税も控除もないから書いても仕方ない』で書かないこともあるわけ」
「なるほど」
「16歳未満の扶養親族がいるなら書かなきゃいけないの。本当はね。でもそういうルール、あまり理解されていないんじゃないかな」

住民税の定額減税② 自宅の売却等で定額減税がないことも

「6月の住民税を見て『定額減税を受けられるはずなのにない!』という人が出てくると思う」
「そうなの?なんで?」
「一時的に所得が増えることがあるでしょ。相続した家を売ったとか」
「そっか」
「2023年、一時的に所得が増えて1805万円を超える人もいるでしょ。そうなると、6月からの住民税での定額減税はない」

「2023年中にふるさと納税とかしてたら何とかなるんじゃないの?」
「無理。合計所得金額というのは、所得控除をする前の所得の合計だから。ふるさと納税の寄附金控除とか扶養控除とか医療費控除とかで、所得控除の合計が1000万円になっても合計所得金額は変わらないの」
「キビシー!」

住民税の定額減税③ 配偶者分の減税が2年連続になることも

「定額減税は1年限り、って言われているけど、住民税はそうでもないの」
「そうなの?」
「来年度に同一生計配偶者分の減税を受ける人もいる」

「同一生計配偶者…ってなんだっけ」
「前に説明したじゃん。これよ」

「同一生計配偶者に関連するメインテーマは、住民税も所得税も『配偶者控除』なの。でも定額減税は配偶者控除を受けられない人も配偶者分で減税を受けられるわけ」
「本人の合計所得金額の条件が1805万円以下でありさえすればいいわけだから…本人所得が1000万円超だと配偶者控除なくても減税は受けられるよね」

「このズレを埋めるために、同一生計配偶者分の住民税減税については、2年にわたって行うことになったの」
「住民税でも所得税の月次源泉みたいに書類を配ればいいのに」
「時間とコストがかかりすぎて無理よ。通常の税額計算だってしなきゃいけないし。市町村には負担が大きすぎる」
「そっか」
「だから2024年度は本人の合計所得金額1000万円以下について、2025年度は1000万円超について同一生計配偶者分の減税をすることになったの」
「中には2年連続で配偶者分の減税1万円を受けられる人が出てきそうだね」
「2023年分の所得が800万円で2024年分の所得が1500万円、とかね。公平じゃないから問題だと思うけど」

住民税の定額減税④ 副業バレのリスクあり

「住民税の定額減税で副業がバレることもある気がする」
「確定申告書の第二表の住民税の欄で『自分で納付』ってあるじゃない。あれでどうにかなるんじゃない?」
「それは納付方法の話。定額減税の対象になるのは『合計所得金額1805万円以下の人』でしょ」
「うん」
「会社からの給料だけなら所得1000万円なのに、副業で稼いでいるがために所得が1805万円を超えるかもしれない」
「そうなったら、定額減税を受けられないね」
「そう。で、会社の総務は思うわけよ。『ウチの会社から支給した給与だけなら定額減税を受けられるはずなのに、定額減税の対象から外れている』と。そうなれば、副業が疑われるかもしれない」
「うわぁ」
「バレるとしたら、住民税の決定通知書かな。特別徴収で定額減税をするなら、6月分の徴収額は0円になるはず」

「給与所得1000万円の人の6月分の徴収額が0円じゃなかったら…」
「あやしまれるかもね。普通徴収で定額減税されればバレないだろうけど…。総務省は『なるべく早く減税を』と言っているの。実際、どうなるか分からない」

おまけ

ABOUT執筆者紹介

税理士 鈴木まゆ子

税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。

 

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