「育児休業以外」の育児に関わる制度の概要と留意点を解説!
社会保険ワンポイントコラム
2022年10月より改正施行された「産後パパ育休(出生時育児休業)の創設」「育児休業の分割取得」などもあり『育児休業』への関心は高まっています。しかし、『育児休業』だけが「仕事」と「育児」の両立をサポートする制度ではありません。
今回は『育児休業』以外で、育児・介護休業法に定める代表的な5つの制度の概要、さらにその手続き・例外など制度を運用する上での留意点を解説します。
法律に定められている「育児に関わる制度」
(1)日単位(または時間単位)の休暇を付与する「子の看護休暇制度」
対象
「小学校就学の始期に達するまでの子」を養育する労働者です。
ただし、日々雇い入れられる者は除かれます。また、『勤続6か月未満の労働者』『週の所定労働日数が2日以下の労働者』などについては、労使協定を締結することで対象から外すことも可能です。
内容
1年度において5日(ただし対象児が2人以上の場合は10日)までの休暇が取得できます。時間単位での取得も可能です。
取得できる事由
「病気・けがをした子の看護」または「子への予防接種・健康診断」です。
(2)残業を免除する「所定外労働の制限」
対象
「3歳に満たない子」を養育する労働者です。
ただし、日々雇い入れられる者は除かれます。また、『勤続1年未満の労働者』『週の所定労働日数が2日以下の労働者』については、労使協定を締結することで対象から外すことも可能です。
内容
対象となる労働者がその子を養育するために請求した場合、事業主は所定労働時間(就業規則などで定めた労働時間)を超えて労働させてはなりません。労働者は開始日の1か月前までに請求します。
1回の請求につき1か月以上1年以内の期間です。請求できる回数に制限はありません。
例外
事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒むことができます。
(3)法定時間外労働を制限する「時間外労働の制限」
対象
「小学校就学の始期に達するまでの子」を養育する労働者です。
ただし、『日々雇い入れられる者』『勤続1年未満の労働者』『週の所定労働日数が2日以下の労働者』については対象外です。
内容
対象となる労働者がその子を養育するために請求した場合、事業主は制限時間(1か月24時間、1年150時間)を超えて労働時間を延長してはなりません。労働者は開始日の1か月前までに請求します。
1回の請求につき1か月以上1年以内の期間です。請求できる回数に制限はありません。
例外
事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒むことができます。
(4)深夜業を免除する「深夜業の制限」
対象
「小学校就学の始期に達するまでの子」を養育する労働者。
ただし、『日々雇い入れられる者』『勤続1年未満の労働者』『週の所定労働日数が2日以下の労働者』『所定労働時間の全部が深夜にある労働者』『保育ができる同居の家族がいる労働者(16歳以上であって、所定の条件を満たした者)』については対象外です。
内容
対象となる労働者がその子を養育するために請求した場合、事業主は深夜(午後10時から午前5時)において労働させてはなりません。
労働者は開始日の1か月前までに請求します。
1回の請求につき1か月以上6か月以内の期間です。請求できる回数に制限はありません。
例外
事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒むことができます。
(5)労働時間を短縮する等「短時間勤務制度等」
対象
「3歳に満たない子」を養育する労働者です。
ただし、対象となる労働者は『1日の所定労働時間が6時間以下でないこと』『日々雇用される者でないこと』『短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業(産後パパ育休含む)をしていないこと』のすべての条件を満たす必要があります。
また、『勤続1年未満の労働者』『週の所定労働日数が2日以下の労働者』『業務の性質などにより、所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者』については、労使協定を締結することで対象から外すことも可能です。
内容
労働者が希望した場合に、事業主は1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含む措置を講じなければなりません。
なお、「業務の性質などにより、所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者」について、所定労働時間の短縮の措置を講じないこととするときは、『育児休業に関する制度に準ずる措置』『フレックスタイム制』『始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ』『事業所内保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与』のいずれかの措置を講じなければなりません。
制度運用のポイント‘’3つのステップ‘’
~ステップ1~各制度を活用し、従業員個々の「ワークライフバランス」をサポート!
育児休業と比較すれば、このような制度が法律上で定められていることを知っている従業員は少ないかもしれません。保育園の迎えなどでこれらの制度を活用することが多いかもしれませんが、そのような理由の有無に関わらず、子どもが3歳に達するまでに親子で共に過ごす時間は特に大切です。
家庭環境などに応じて、これらの制度を活用するかは個々の従業員によって違いはあるかもしれません。しかし、これらの制度を周知するだけでも、会社として「ワークライフバランス」をサポートする強いメッセージとして従業員へ伝わることにつながります。
~ステップ2~厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」に基づき運用を!
今回紹介した内容だけでなく、育児に関する制度はとても複雑です。
従業員より各制度の情報を求められたり、利用請求をされたりした場合は、丁寧にその内容を確認していきましょう。
特に、厚生労働省ホームページからダウンロードできる「育児・介護休業法のあらまし」には各制度のポイントが明記されていますので、ぜひ活用していきましょう。
~ステップ3~法令を遵守し、かつ「積極的な取り組み」を!
法律の内容を遵守するのは当然のことですが、必ずしもそこで留まるものではありません。むしろ法律においても、義務とされている内容以外にも、事業主がさまざまな措置を講じる努力義務を求めています。
例えば、子どもの年齢制限を定めている制度については、その年齢を延長すれば、子どもの成長を長く見守り続けるための会社の積極的な取り組みとして、採用戦略・離職防止などの取り組みにもつながっていきます。
ABOUT執筆者紹介
社会福祉士・社会保険労務士 後藤和之
昭和51年生まれ。日本社会事業大学専門職大学院福祉マネジメント研究科卒業。約20年にわたり社会福祉に関わる相談援助などの様々な業務に携わり、特に福祉専門職への研修・組織内OFF-JTの研修企画などを通じた人材育成業務を数多く経験してきた。現在は厚生労働省委託事業による中小企業の労務管理に関する相談・改善策提案などを中心に活動している。
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