11 April

共働き・共育ての推進!令和5年12月閣議決定「こども未来戦略」を解説!

掲載日:2024年04月11日   
社会保険ワンポイントコラム

令和5年12月に閣議決定した「こども未来戦略」では、安心して子育てできる社会、こどもたちが笑顔で暮らせる社会の実現を目指し、現在そして将来に必要な施策を「3つの柱」で示しています。

1つ目の柱が、児童手当拡充などの方向性を示した「子育て世帯の家計を応援」。
2つ目の柱が、こども誰でも通園制度などの方向性を示した「すべてのこどもと子育てを応援」。
そして今回は3つ目の柱となる、社会保険・育児休業などの施策の方向性を示した「共働き・共育てを応援」を解説します。

こども未来戦略で掲げる「共働き・共育て」の将来的な施策とは?

こども家庭庁「こども未来戦略ちらし~共働き・共育てを応援編~」では、次に示す(1)~(5)について「共働き・共育て」の施策の方向性を示しています。

なお、こども家庭庁ちらしの内容にある各施策の「開始年度」「法案提出」などについては、2024年2月1日時点の情報となりますので、ご了承ください。

(1)男性育休を当たり前に

  • 子の出生直後の一定期間内に、両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合には、最大28日間の給付率を現行の67%(手取りで8割相当)から 、80%(手取りで10割相当)へと引上げ(⇒25年度開始を目指して)

(2)柔軟な働き方ができる環境へ

  • こどもが3歳になるまでの場合に事業主に課されている、短時間勤務制度の措置義務やフレックスタイム制を含む出社・退社時刻の調整等の措置の努力義務に加えて、テレワークも新たな努力義務に追加されます(⇒所要の法案を今通常国会に提出予定)
  • こどもが3歳以降小学校就学前までの場合に、事業主が職場の労働者のニーズを把握しつつ「①フレックスタイム制を含む出社・退社時刻の調整」「②テレワーク」「③短時間勤務制度」「④保育施設の設置運営等」「⑤新たな休暇」のうちから複数の制度を選択して措置し、その中から労働者が選択できる制度を創設します(⇒所要の法案を今通常国会に提出予定)
  • 残業免除(所定外労働の制限)について、 請求できる期間をこどもが3歳になるまでから小学校就学前まで引き上げます(⇒所要の法案を今通常国会に提出予定)

(3)時短で働いても家計に安心

  • 「育児時短就業給付」を創設し、こどもが2歳未満の期間に、時短勤務を選択した場合に、時短勤務時の賃金の10%を支給します(⇒25年度開始を目指して)

(4)子の看護休暇がもっと使いやすく

  • 対象となるこどもの年齢を小学校就学前から小学校3年生修了時まで引き上げます。また、こどもの行事(入園式等)参加や、感染症に伴う学級閉鎖等にも活用できるように取得事由の範囲も見直します(⇒所要の法案を今通常国会に提出予定)

(5)パートタイムや自営など多様な働き方をされている方の子育てをサポート

  • パートタイムで働く方など、現在、雇用保険が適用されていない週所定労働時間10時間以上20時間未満でお勤めされている方も、育児休業給付や失業給付等が受給できるようになります(⇒28年度開始を目指して)
  • 自営業者・フリーランス等の国民年金の第1号被保険者の方を対象に、育児期間中の国民年金保険料免除措置を創設します(⇒26年10月開始を目指して)

会社が「共働き・共育て」を実践するために!3つのステップ!

~ステップ1~先手必勝!法令遵守を確実に!

こども未来戦略により、今後はこども・子育てに関する施策がより一層加速的に展開されます。
そのため報道などで取り上げる場面も増えてくることが予想されますので、常に施策などの動向にアンテナを張っておき、法令遵守を確実なものにしておきましょう。

そして「残業免除について小学校就学前まで引き上げる」「子の看護休暇を小学校3年生修了時まで引き上げる」などの改正内容であれば、必ずしも法令施行日ではなく、施行日より前に運用することができればより効果的です。

早い段階で導入することができれば、従業員へ周知することを早めることができますし、「共働き・共育て」を先立って取り組んでいることを社外へPRすることにもつながります。

~ステップ2~会社独自の「共働き・共育て」の取り組みを計画的に!

法令遵守を確実なものにできれば、会社独自の取り組みを実践することも考えてみましょう。
先ほど紹介した内容を踏まえれば「残業免除について小学校就学前まで引き上げる」「子の看護休暇を小学校3年生修了時まで引き上げる」を会社独自に、こどもの年齢を引き上げるなどです。

一方で、制度を変更するだけが会社独自の取り組みというわけではありません。
例えば「育児休業制度などの研修を定期的に行う」「社会保険の概要を社内報で周知する」「一般事業主行動計画の内容を見直してみる」など、まずは会社にとって過度な負担とならず、身近なことから計画的に会社独自の取り組みを実践することが大切です。

~ステップ3~「こども未来戦略マップ」をイメージ!会社が子育てに伴走する姿勢を!

「こども未来戦略マップ」とは、妊娠から大学入学までの施策をロードマップで示したものです。こども家庭庁ホームページからダウンロードできます。

育児に関しての労務施策は、どうしても小学校就学前が中心となります。
しかし、小学校就学後の労務施策が限られていたとしても、医療・福祉的な施策を通じて、こどもの将来が少しでも明確なものになれば、働く従業員への安心感につながっていきます。

「こども未来戦略マップ」をイメージし、「経営方針に、こどもが成人になるまでの子育てを大切にする旨を盛り込む」「従業員との面談の場面でこどもの成長を気に掛ける」など、会社が子育てに伴走する姿勢を示すことなどもぜひ視野に入れておきましょう。

【参考資料】
こども家庭庁「こども未来戦略MAP」
こども家庭庁「こども未来戦略ちらし~共働き・共育てを応援編~」

ABOUT執筆者紹介

社会福祉士・社会保険労務士 後藤和之

ごとう人事労務事務所

昭和51年生まれ。日本社会事業大学専門職大学院福祉マネジメント研究科卒業。約20年にわたり社会福祉に関わる相談援助などの様々な業務に携わり、特に福祉専門職への研修・組織内OFF-JTの研修企画などを通じた人材育成業務を数多く経験してきた。現在は厚生労働省委託事業による中小企業の労務管理に関する相談・改善策提案などを中心に活動している。

原稿提供元株式会社ブレインコンサルティングオフィス「かいけつ!人事労務」

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