【外国人の雇用③】在留資格申請のポイントとは?就労資格5つの要件と注意点を種類ごとに解説
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外国人の雇用シリーズ3回目です。外国人の雇用にあたり、在留資格申請のポイントをお伝えします。なお、在留資格申請は大別すると「就労資格」「就労資格以外(身分系・その他)」に分けられます。本稿では、事業に関連して行う手続きであるため、就労資格申請を中心に説明します。
就労資格は大きく分けて5つ
就労資格は、大別すると次の5つとなります。
- 技術・人文知識・国際業務…技術者や各業務分野のスペシャリスト
- 企業内転勤…上記に該当する業務を行える 被雇用者(海外からの駐在員)
- 技能…手仕事などが中心の職業
- 経営・管理…経営者・管理者を招く、または起業
- 特定活動告示46号…幅広く日本の企業で働くことが出来る資格
1.技術・人文知識・国際業務
この在留資格は、技術者や各業務分野のスペシャリストを雇用する際に申請します。
要件
この資格で申請が認められるためには、過去の経歴や学歴で専門的能力を証明しなくてはなりません。具体的には次の通りです。
学歴
高等教育により従事する業務分野の専門能力に関連する学位を取得している
ここでいう「学位」とは、高等教育機関で授与される学位を言います。学士のほか、準学士、短期大学士、専門士、修士、博士などです。海外でこれらにあたる学位が授与されている場合、基本的に学歴として認められます。ただ、国によって教育システムや学位の位置づけが違うため、日本政府が学歴として認めないこともあります。また、職業訓練大学校のように大学ではない高等教育機関を卒業した場合、学位が授与されていなくても学歴として認められる場合があります。
職歴
多くの場合、従事する業務分野の経験が10年以上必要です 。これは在職証明書で確認します。そのため、過去に勤務していた会社等から職務内容と在職期間を記載した在職証明書を発行してもらう必要があります。
注意点
注意したいのが「スペシャリストであればどのような業務でも従事できるわけではない」という点です。エンジニアや研究開発者、あるいは金融のスペシャリストなど、分野が限定されています。営業や販売などの接客業は対象外になりやすいのです。また、どの業務についても日本に雇用主がいることが前提となっています。
2.企業内転勤
企業内転勤とは、技術・人文知識・国際業務に該当する業務を行えるもう一つの在留資格です。こういった業務内容を行うべく、海外から日本に派遣された駐在員に向けて発給されます。
要件
次の要件の両方を満たすことが求められます。
- 海外にある本支店から日本国内の本支店や駐在事務所に派遣されてきた人
- 企業グループに入社してから1年以上が経過した人
注意点
どれだけ高い能力があっても、基本的に入社直後の人については対象外です。もし、このような人を日本に派遣する場合、「技術・人文知識・国際業務」を取得する必要があります。
3.技能
この資格は、各分野の専門技能者を対象とした資格です。「手仕事などが中心となる技能職」とイメージするとわかりやすいかもしれません。例えば、次のような職種が該当します。
- 外国料理の調理師
- 外国洋式の建築技師
- 外国特有の製品製造技師
- 宝飾品等加工技能者
- 動物調教師
- 石油探査等技師
- 航空機パイロット
- スポーツ指導者
- ソムリエ
要件
技術・人文知識・国際業務と同じく、経歴を確認します。各分野での実務経験や専門教育を受けていた年数、或いは各分野の国際的に権威ある協議会等での出場や受賞経験をもとに、その能力を評価するしくみです。そのため、経歴をよく確認する必要があります。
注意点
技能資格申請の大半を占めるのは、外国料理の調理師です。これは、10年以上の経験が必要となります。在職証明書でていねいに確認しなくてはなりません。
審査の際に入管が過去の勤務先に勤務状況などの確認をすることがあります。そのため、在職証明書には職務内容や勤務期間の以外に連絡先も記載しておくとよいでしょう。
4.経営・管理
経営・管理資格は会社の経営者(代表者)や管理者(主に取締役や各部門の部長クラス)を日本に招聘・従事させるための在留資格です。
要件
招聘するのが経営者なのか、管理者なのかで次のように別れます。
経営者の要件
以下の2つが求められます
- 会社の規模として事業規模が年間500万円程度の投資(実際は、資金の動いている額)が為されていること(或いは従業員が2名以上程度の規模を持つ事業主体であること)
- 業務に必要な事業所や設備があること
管理者の要件
管理者や経営者としての3年以上の経験(大学院において経営や管理を専攻していた期間を含む)が必要です。
注意点
バーチャルオフィスでは経営・管理の在留資格は認められません。排他的に使用できる事業所を確実に確保し、他との区分けがしっかりされている事業所を確保しないといけないのです。
ただ、中には「他の会社の一部を借りる」というケースもあるでしょう。この場合、次の点を確認する必要があります。
- しっかりとコンパートメントなどで区分けしてあるか
- 「自社がどこからどこまでの場所を使用しているか」が客観的に分かるか
他にも、事業の確実性を説明するための資料として事業計画書や資金計画書、或いは取引先との合意文書や事業に必要な営業許可関係の資料を求められることがあります。なお現在、これらの要件について変更される可能性があります。
5.特定活動告示46号
他の在留資格に比べて、就業できる業務範囲が広い資格です。企業にとっては、採用した人物をさまざまな場面で活躍させやすい在留資格だと言えます。
要件
次の要件が必要です。
- 日本で大学(大学院)を卒業(終了)して学士(修士・博士)の学位あるいは、専門学校を卒業して高度専門士の学位を得ていること
- 日本語能力があること(日本語能力検定1級に合格していることなど)
注意点
この資格には、次のような注意点があります。
自由に見えて制限あり
この在留資格があれば、レストランのホール係、ホテルのフロント、コンビニにおける外国人アルバイトへの指導などといった形での就業が可能です。ただし、従事できる人の条件はやや厳しめになっています。専門学校卒業の専門士や短期大学士、準学士には認められていません。また、外国の高等教育機関を卒業した人にも認められません。
また、広範に業務が認められているとはいっても風営法に定められる業務(スナックの店員など)は認められません。
転職時は取り直しが必要
転職した場合、46号の資格の取り直しが必要です。というのも、この資格は勤務先とセットで許可されます。他の在留資格は転職しても申請しなおしが不要となっているのと対照的です。
そのため、企業側は新規に46号の在留資格を持っている人を採用する場合であっても、必ず新しい46号の在留資格の申請が必要です。もし忘れていると、不法就労と認定される恐れがあります。
まとめ
どの在留資格も、細かく条件が定められています。勝手な思い込みで判断しないことが重要です。特に世界最強のパスポートを持つ日本人は、ほとんどビザなしで世界中を旅できます。言い換えると「在留資格についての理解が足りていない」ことが多いのです。不安なら、専門家や出入国在留管理局によく相談しましょう。
ABOUT執筆者紹介
行政書士 鈴木良洋
1974年生まれ。1996年行政書士試験合格、1998年中央大学法学部政治学科卒業。2002年行政書士登録。建設業、司法書士事務所、行政書士事務所勤務を経て2004年独立開業。20年超、外国人の在留手続を専門に外国人の起業・経営支援を行う。これまでの取扱件数4000件超。元ドリームゲートアドバイザー。