22 September

副業で始める個人輸入が「大赤字」になる前に!海外商品の販売で注意すべき4つの法的リスク

掲載日:2025年09月22日   
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海外旅行先で素敵な雑貨、効果を実感したサプリメントに出会うことがあるかと思います。「これを日本で売れば、良い副業になるかも!海外で売っているから日本でも大丈夫なはず」。そう考える人もいるかもしれません。

しかし、安易な考えで輸入販売をすると、気づかぬうちに思わぬ損をしたり、法律違反となったりします。最悪の場合、逮捕につながることも。

この記事では、個人輸入で商品を販売しようとする方に向けて法的な落とし穴を具体的に解説し、安全にビジネスを始めるための正しいステップをお伝えします。

うっかりで全額損失も!個人輸入でよくある法律違反ケース4選

最初に、初心者が陥りやすい4つのケースを見ていきましょう。

ケース1:サプリメント・健康食品|良かれと思った成分が日本ではNGに

海外では人気のサプリや健康食品。しかし、その中には日本では「医薬品」と見なされる成分が含まれていることがあります。これを安易に販売目的で輸入すると、思わぬ法律違反に問われるおそれがあります。

リスク1:無許可の医薬品販売

睡眠導入効果のあるメラトニン、精力増強効果をうたうヨヒンビンなど、日本では販売が認められていない成分が含まれている製品は、日本では「医薬品」に分類されます。

医薬品を販売するためには、国の許可が必要です。無許可で販売目的の輸入を行うと、「医薬品医療機器等法(旧薬事法)」違反となります。税関で差し止められるだけでなく、悪質な場合は摘発の対象にもなりかねません。

リスク2:表現・広告による違反

製品の成分自体に問題がなくても、売り方一つで法律違反になるケースがあります。

例えば、海外の販売サイトに書かれている「〇〇が治る」「飲むだけで痩せる」「疲労回復」といった効果・効能をそのまま日本語に翻訳して、自分のネットショップや商品説明に記載したとします。これは日本の法律上、医薬品にしか許可されていない効果をうたっていると見なされます。結果「未承認の医薬品の広告」として、同じく医薬品医療機器等法違反になる可能性が高いのです。

ケース2:肉類・果物・加工食品|全量廃棄処分のおそれ

現地の加工肉製品、日本では見かけない珍しいフルーツなどにも注意です。食品の輸入には非常に厳しい検疫制度が設けられています。

リスク1:家畜・植物の伝染病侵入防止

肉製品(ハム、ソーセージ、ジャーキー等)や果物、野菜などを輸入するには、輸出国政府機関が発行する「検査証明書」が原則必要です。日本の生態系や農畜産業を海外の病害虫から守ることが目的となっています。

この証明書がない品物は、家畜伝染病予防法や植物防疫法により、日本への持ち込みが許可されません。最悪、輸入のために手配したコンテナの中身が、港で丸ごと廃棄処分となることもあります。仕入れ代金と高額な輸送費を全額失うだけでなく、処分費用まで請求される可能性があるのです。

リスク2:食品衛生法違反

お菓子や調味料といった加工食品でも安心できません。国によって食品に使用できる添加物の基準は異なります。例えば、海外のカラフルなキャンディーに使われている着色料が、日本では使用が認められていないことがあります。この場合、食品衛生法違反となり、検疫所の検査で不合格となれば、輸入は認められません。積み戻し(輸出国へ送り返す)か、廃棄処分を迫られます。

ケース3:ブランド品・キャラクターグッズ|商標権侵害のリスク

現地のマーケットで見つけた有名ブランドそっくりのバッグや、人気キャラクターのグッズ。「少し作りが甘いけど、安いから売れるだろう」と安易に仕入れるのは絶対にやめましょう。

リスク:知的財産権の侵害

いわゆる「コピー商品」や「偽ブランド品」を販売目的で輸入することは、商標法や関税法で固く禁じられています。これらは他者の知的財産権を侵害する「侵害品」であり、税関の検査で発見されれば100%没収されます。

さらに恐ろしいのは、税関をすり抜けてフリマアプリなどで販売した場合です。後日、商標権者から警告書が届き、高額な損害賠償を請求されるケースも少なくありません。「知らなかった」「偽物だとは思わなかった」という言い訳は通用しません。ビジネスが終わるだけでなく、多額の負債を抱えることになります。

ケース4:お酒・タバコ|販売に「免許」はあるか

旅行先で出会った珍しい地ビールやオーガニックワイン、フレーバー付きのタバコ。これらを日本で継続的に販売するには、専門の免許が必要です。

リスク:無免許販売

お酒をインターネットや店舗で販売するには、税務署による「酒類販売業免許」が、タバコを販売するには財務省の「たばこ小売販売業許可」がそれぞれ必要です。これらの免許なく販売を行った場合、酒税法違反などとなり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

なぜ「海外OK」が「日本NG」になるのか

なぜ海外で合法的に売られているものが、日本では問題になるのでしょうか。それは、国ごとに法律や安全基準、文化が異なるためです。

日本の法律は、第一に国民の健康や安全を守ることを目的としています。医薬品成分の規制は健康被害を防ぐためであり、食品検疫は食の安全と国内産業を守るために存在します。また、知的財産権の保護は、企業の正当な経済活動を守り、産業の発展を促すために不可欠です。

海外の基準がどうであれ、日本国内で商品を販売する以上、日本のルールに従う義務があるのです。

失敗しないためにすべきこと

安全に輸入販売を始めるなら、自己判断せず、計画段階で次の専門家に相談しましょう。

● 税関(税関相談官室・カスタムアンサー)

まず最初に相談すべき無料の窓口です。輸入しようとしている品物がどのような規制の対象になるのか、関税はどのくらいか、どんな手続きが必要かなど、輸入に関するあらゆる質問に電話やメールで答えてくれます。何から手をつけていいか分からない場合に最適です。

● 通関業者

輸入通関手続きのプロフェッショナルです。複雑な書類作成や税関への申告を代行してくれるだけでなく、これまでの経験から「その商品は輸入が難しい」「この点に注意が必要」といった具体的なアドバイスももらえます。事業として本格的に行うなら必須のパートナーと言えるでしょう。

● 各種営業許可に詳しい行政書士

酒類販売免許や化粧品製造販売業許可など、国内での販売に特別な許認可が必要な場合に、その取得をサポートしてくれます。

● 弁理士・弁護士

商標権や著作権など、知的財産権に関する問題が心配な場合に相談する専門家です。仕入れようとしている商品が、他者の権利を侵害していないかなどを調査してくれます。

まとめ

海外の商品を日本で販売するビジネスは、魅力的です。しかし、実際には今回お伝えした法的な落とし穴がたくさん潜んでいます。安全に取引するなら、事前に次の2つをしておきましょう。

  1. 売りたい商品の成分や規制を徹底的に調べること。
  2. そして、必ず税関や通関業者などの専門家に相談すること

この2つをしておけば予想外の不利益からビジネスを守れます。思い立ったらまず行動…ではなく、「思い立ったらまず相談」が肝心です。

ABOUT執筆者紹介

行政書士 鈴木良洋

1974年生まれ。1996年行政書士試験合格、1998年中央大学法学部政治学科卒業。2002年行政書士登録。建設業、司法書士事務所、行政書士事務所勤務を経て2004年独立開業。20年超、外国人の在留手続を専門に外国人の起業・経営支援を行う。これまでの取扱件数4000件超。元ドリームゲートアドバイザー。

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