令和3年度確定申告(申告期限令和4年3月15日)についての改正点や申告時におけるポイント
税務ニュース
今年も個人の確定申告の時期が近づいてまいりました。税制もコロナウイルスの影響が色濃く、とりわけ申告納税手続の簡素化に重きを置いた改正がなされています。今回は、令和3年度確定申告(申告期限令和4年3月15日)についての改正点や申告時におけるポイントを解説していきます。
「申告期限に注意」原則は3月15日が申告期限です
まず、ご注意いただきたいのは確定申告の申告期限です。ここ2年はコロナウイルスの影響で申告期限及び納付期限が通常の3月15日から大幅に延長されておりました。しかしながら、現在においては通常通りの令和4年3月15日(火)を予定しておりますのでご注意ください。
申告納税手続きの利便性を高める改正
コロナウイルスの影響で税務手続の利便性を高める改正点が多くなっております
①押印義務が廃止されました
個人の確定申告も「脱ハンコ」ということで、確定申告書を紙で提出する場合の押印が今年度から不要となりました。仮に間違って押してしまっても問題ありません!そのまま提出してください。少しずつ普及しているマイナンバーカードとICカードリーダーライターを使えば、税務署に行く必要もなくご自宅から電子申告も可能です。当然電子申告の場合も押印は不要です。
②銀行や税務署に行かなくても大丈夫!納付の利便性が高まります
既に一部の自治体ではPayPay等の決済アプリで支払いが出来るようになっておりますが、令和4年の確定申告からは国税についても、スマホの決済アプリで納税が出来るようになります。納付可能金額は30万円以下ですので注意が必要です。
従って、みなさんは現金納付、振替納税(銀行引落)、インターネットバンキング(振込)、クレジットカード払い、コンビニ払い(納付書QRコード)、スマホ決済アプリ(電子マネー決済)のうちから最も便利なものを選択する事が出来ます。
さらに、令和5年からは固定資産税も電子納税可能になる予定です。この手の改善はどんどん行って頂きたいですね。
③医療費控除もより楽ちんに!
現在医療費控除を受ける場合は、領収書の提出ではなく「医療費控除の明細書」の提出が必要になります。また、健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」を添付すると、この明細の記入を省略できるようになっておりました。
さらに令和3年分の確定申告からは、下記の資料の添付が認められます。
- 審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険団体連合会)の医療費の額等を通知する書類(当該書類に記載すべき事項が記録された電磁的記録を一定の方法により印刷した書面で国税庁長官が定める一定のものを含む。)
- 医療保険者の医療費の額等を通知する書類に記載すべき事項が記録された電磁的記録を一定の方法により印刷した書面で国税庁長官が定める一定のもの
表現が難しいですが、要するにマイナポータルを通じて、医療費のデータを取得し申告する事が認められる事となります。
④ふるさと納税をもっと簡単に!
国税庁が認定したふるさと納税のポータルサイトを運営する特定事業者を通じて実施したふるさと納税については、従来のような各自治体ごとの控除証明を一枚ずつ添付するのではなく、一年間に実施したふるさと納税をまとめて記載した証明書の添付で済みますので、利便性が高まります
こちらもetaxやマイナポータルを通じて簡便に手続きを行う事が出来ます。
⑤前年の改正点もおさらいしておきましょう!
以下の書類は前年度(令和2年度)から提出省略が認められている添付書類です
- 給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票
- オープン型の証券投資信託の収益の分配の支払通知書
- 配当等とみなされる金額の支払通知書
- 上場株式配当等の支払通知書
- 特定口座年間取引報告書
- 未成年者口座等につき契約不履行等事由が生じた場合の報告書
- 特定割引債の償還金の支払通知書
- 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例における相続税額等を記載した書類
電子申告・電子納税のデメリット
ただし、メリットだけではありません。デメリットもあります。
すべての控除証明書類が対応しているわけではない
去年から保険料控除証明書は、マイナポータル連携する事で証明書類をデータで保険会社から直接取得して申告できるようになりましたが、対応している保険会社は生命保険12社、損害保険5社、共済4団体(令和3年11月16日現在)とまだ全社が対応している訳ではありませんのでご注意ください。このように一部対応の場合は、対応していない書類について今まで通りの対応が必要となり、かえって手間がかかる事も懸念されます。
個人情報の保護が不安
「令和4年末までに、国民全員がマイナンバーカードを取得するようにする」としている政府ですが、その目標達成には程遠いのが現実です。令和3年11月1日時点でのマイナンバーカードの交付率は39.1%です。まだまだ必要性を感じない方々が多いのと情報漏洩の問題があるものと考えられます。一つのカードに氏名や顔写真、住所だけでなく医療・さらには収入及び税金の情報や決済情報まで紐づいているという状況は、利便性は高まるもののそれとトレードオフでリスクを感じる方もいるのは事実です。国民が安心して使えるよういざというときの対策をもっと講じる必要があるのかもしれません。
まとめ
個人の確定申告を電子申告+電子納税している方は、まだまだ少ないと思います。感染リスクの軽減だけでなく、税金という国家のインフラを支える手続きの利便性を高めていく事は長期的には例えば給付金等の国民への支給を容易にしたり、納税者にとってもメリットがでてくるのではないでしょうか。
さらに、こうした徴税コストを下げる事は強い国づくりにも奏功するとも考えられます。
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ABOUT執筆者紹介
代表社員税理士 米田明広
2013年に税理士登録し、あすか税理士法人最年少役員就任。2018年に株式会社エネックスを設立、中小企業のコスト削減提案を行っている。現在は、税務会計だけでなく事業承継やM&Aといった戦略策定、システム導入による業務フロー改善といった業務を通じて、北海道の中小企業の経営課題を解決すべく活動している。