26 October

2024年秋、健康保険証がマイナンバーカードに!知っておきたいメリット・デメリット

掲載日:2022年10月26日   
社会保険ワンポイントコラム

河野デジタル相は10月13日、記者会見にて「現在の健康保険証を廃止し、マイナカードと一体化した『マイナ保険証』を原則とする」という政府の方針を発表しました。2024年秋以降、病院での診療や薬局での薬の購入は原則、健康保険証と一体化したマイナンバーカードで行われることになります。現行の健康保険証は使えなくなるのです。

マイナンバーカード一体化の背景

健康保険証とマイナンバーカードの一体化を言い換えると「マイナンバーカード所持の義務化」です。日本は国民皆保険制度を採用しており、健康保険への加入は義務付けられています。加入の事実を示すのが健康保険証なのですが、「健康保険証=マイナンバーカード」になれば、健康保険に加入している人全員、マイナンバーカードを持つ必要が生じるのです。

なぜ政府は、このような方針を打ち出したのでしょうか。背景には次の2つがあります。

ポイント事業をしても取得率が50%未満

1つ目の理由は「マイナンバーカードがなかなか普及しないから」です。2016年1月にマイナンバー制度(社会保障・税番号制度)がスタート、同時にマイナンバーカードの交付が始まりました。6年超が経過した今も、5割程度の人しか取得していません。

行政の効率化と国民の利便性向上のために始まった制度ですが、肝心のマイナンバーカードの取得が進まなければ絵に描いた餅で終わります。課題の行政DX(デジタルトランスフォーメーション)なんて夢のまた夢です。行政コストを下げ、効率よく社会福祉を実現するには、取得率を上げないといけないのです。

2020年の特別定額給付金の反省

2つ目の理由は、コロナ禍の反省です。新型コロナウイルス感染症のまん延で、経済と国民生活が危機にさらされました。これに対処すべく、すべての国民に支給されたのが10万円の特別定額給付金です。迅速に支給されるべきものですが、「同姓同名がいる」「住民票の住所に住んでいない」などで現場が混乱しました。

「マイナンバーカードが普及し、本人確認をすみやかに行えれば、コロナ禍のような不測の事態にも迅速に対処できるはずだ」___政府にはそのような考えがあるようです。

 

「マイナンバーカード=健康保険証」のメリット

マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」が始まると、医療の現場は次のように効率化されると言われています。

受付がラク

「病院に行ったら診察券と健康保険証を受付に出し、呼ばれたら窓口で返してもらう」。これが私たちの今の通院時の風景です。子どもや現役世代には何てことないプロセスですが、足腰の弱い高齢者だと、負担の多い作業となります。

しかし、マイナ保険証なら、カードを窓口の機械で読み込んで受付が完了します。立ったり座ったり…がいらなくなるのです。

また、受付が自動化されれば、医療機関でのコスト削減にもつながります。一石二鳥です。

高額療養費の申請手続きが不要に

手術や入院で医療費がかなり高額になることがあります。このようなとき、高額療養費の制度を使えば、自己負担を抑えることができます。

ただし、高額療養費はすぐにもらえるわけではありません。いったん自分のお財布から医療費を支払い、その後で市区町村や社会保険の組合などに支給申請をします。手間がかかる上、所得や資産額の少ない人にとっては痛手です。

マイナ保険証が手元にあれば、高額療養費が自動的に医療費と精算されます。面倒な申請をしなくて済む上、痛い出費を避けられるのです。

医療履歴を共有しやすい

診療や薬の処方では、過去の医療履歴が重要です。ですが、医療機関が違えば記録はわかりません。また、本人が覚えていないこともあります。マイナ保険証を使い、かつ本人の了解があれば、医療機関が違っても情報を共有できるのです。

医療費控除がラクになる

医療費控除は確定申告が必要です。従来、この控除計算のために大量のレシートや領収書を保管しなくてはなりませんでした。マイナ保険証なら、医療データとともに料金も自動的にわかるので、この保管や計算の手間を省けます。

 

「マイナンバーカード=健康保険証」のデメリット

一方、マイナ保険証にもデメリットがあります。

情報漏洩の懸念

マイナンバーカードを取得したがらない人の多くは、情報漏洩を心配しています。また過去、いくつかの行政機関では住民データが流出する事件がありました。管理の徹底が行政機関に求められます。

システムダウンやエラーのリスク

「オンラインで完結する」ということは、一方で「システムの不具合による不利益は避けられない」ということでもあります。利用の一時的な集中や災害などでシステムダウンが起きれば、受付だけでなく過去の医療データも見られなくなります。

「完全自動化」ではない

マイナ保険証になると、これまで転職の都度おこなっていた健康保険証の切替や、定期的な健康保険証の更新が不要になります。だからといって「まったく更新ゼロ」になるわけではありません。加入先の医療保険者が変わるなら、加入の手続きは必要になります。

今後も「税と社会保障の一体化」が進む

マイナンバーカードの利用は健康保険証にとどまりません。「運転免許証と紐づけよう」「銀行口座とリンクさせよう」という話もあると言われています。今後、マイナンバーによる税と社会保障の一体化の流れはどんどん進んでいきそうです。

ABOUT執筆者紹介

税理士 鈴木まゆ子

税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。

 

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