09 September

青色申告をするなら開業届は絶対必要?提出期限やメリット、注意点を個人事業主向けに解説

掲載日:2025年09月09日   
確定申告

「個人事業主が青色申告を行いたいのなら、開業届も提出しよう」と言われます。開業届の提出は必須なのでしょうか。青色申告をしたいのなら特に気になるところです。また、開業届はどこに出すのでしょうか。今回は開業届の意義とメリット、青色申告との違いや注意点を解説します。

開業届とは何か?開業したら絶対必要?

開業届とは、個人が何らかの事業を開始した場合に税務署などに「事業を始めました」と報告する手続きです。必要書類は「個人事業の開業・廃業等届出書(以下『開業届』)」です。これに必要事項を書いて税務署に提出します。この開業届は次のようになっています。

この用紙は、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかに当てはまる事業を始めた場合に提出が必要です。ただし提出しなくても、何かペナルティが発生するわけではありません。

開業届に青色申告に必要?違い3つを確認

気になるのが「開業届は青色申告を行うのに必要か」です。結論から言うと、必要ではありません。青色申告に必要なのは「所得税の青色申告承認申請書(以下『青色申告承認申請書』)」の提出であって、開業届ではないからです。ただ実際は、開業届と青色申告承認申請書は同時に出すのが一般的です。

なお、開業届と青色申告承認申請書には、次のような違いがあります。

違い①届出か申請か

開業届の提出は「届出」という行為ですが、青色申告承認申請書の提出は「申請」という行為に当たります。

届出

届出とは行政機関に対する報告です。税務であれば「開業しました」「廃業しました」と、納税者が自分の意思で選択したことや行なったことを税務署に報告します。開業届の提出も届出です。

申請

申請は原則、自分に有利な行政処分をお願いする行為です。税務だと「青色申告という、事業主にメリットの多い制度を使わせてください(青色申告の承認申請)」「地震の被害に遭ったので、申告期限を延長してください(期限の延長申請)」といったことがこれに当たります。

原則、申請を行ったら「承認」あるいは「却下」が行政機関から通知されます。税務署も例外ではないのですが、青色申告承認申請書については、青色申告をしたい年の12月31日までに特段通知がなかったら、承認されたものとみなされます。

なお、その年の11月1日に新たに業務を開始した場合は例外です。この場合は翌年2月15日までに何も通知がなければ承認されたものとみなされます。

違い②提出期限

開業届と青色申告承認申請書は提出期限も異なります。次の通りです。

書類 提出期限
開業届
(個人事業の開業・廃業等届出書)
事業を開始してから1か月以内
青色申告承認申請書
(所得税の青色申告承認申請書)
  • その年の1月1日から1月15日までに開業した場合…その年の3月15日まで
  • その年の1月16日以降に開業した場合…その開業した日から2か月以内

違い③効果

開業届と青色申告承認申請書とでは、効果が異なります。

開業届の効果

開業届を出したからといって、特段大きな変化はありません。強いて言うなら、確定申告の前に、おしらせのはがきが送られてくる程度です。

青色申告承認申請書の効果

青色申告承認申請書を提出して承認を受けると、主に次のような税制上のメリットを享受できます。

  • 特別控除額を事業所得・不動産所得・山林所得から差し引ける(65万円・55万円・10万円。65万円・55万円控除は期限内申告が必須)
  • 事業に従事してくれた家族への支払給与を青色事業専従者給与として必要経費に計上できる(事前に届出が必要)
  • 30万円未満の固定資産を取得して事業用として使い始めた場合、取得金額のすべてを事業用にした年分の必要経費として計上できる
  • 赤字が生じても、翌年以後3年間繰越をし、発生した事業所得などの黒字と相殺できる(連続申告が必要)
  • 発生した赤字を前年に繰り戻して前年分の黒字と相殺し、納めすぎた所得税の還付を受けられる(期限内申告が必要)

開業届を提出するメリット

開業届は「個人であっても事業主として事業を行っている」という事実の証明になります。そのため、次のようなメリットがあります。

  • 屋号付きの口座開設…屋号を掲げて事業を行っていることを開業届で証明できるので、個人名ではなく屋号で金融機関の口座を開設できます
  • 小規模企業共済の加入…事業を始めたばかりで確定申告書を出したことがない場合に必要です。ただし、2025年1月以降、紙で開業届を提出した場合は別途書類が必要となることがあります
  • 事業の証明…このほか、公的機関の支援を受けるにあたり、事業所得や不動産所得、山林所得などの元となる事業を行っていることの証明として利用できることがあります

注意点

開業届については次の点に注意しましょう。

他の届出に注意

この記事でお伝えしたのは税務署に提出する開業届です。都道府県の税事務所には、このほか、個人事業税の計算のため「事業開始等申告書」を提出する必要があります。

また「消費税でインボイスの発行事業者として登録をしたい」「青色事業専従者給与の支払いを必要経費に計上したい」「消費税の還付を受けたい」といった場合もそれぞれ別途手続きが必要となります。

2025年1月以降は押なつ廃止に

開業届を税務署に紙で提出する場合は注意が必要です。というのも、2025年8月現在、申告書や届出書などの紙提出については、税務署での収受印が廃止されています。

電子申告ならば収受した年月日が記録として残りますが、紙提出は記録がありません。そのため、小規模企業共済の手続きのように、別途書類を求められることがあります。

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ABOUT執筆者紹介

税理士 鈴木まゆ子

税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。

 

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