19 September

経営相談の現場から[シリーズ第3回]補助金の説明資料が難しすぎます

掲載日:2024年09月19日   
起業応援・創業ガイド

筆者は経営コンサルタントとして、日々経営者の方々のお悩みを伺っています。このシリーズは「経営相談の現場から」というテーマで、中小企業経営者や個人事業主の方から実際にあったご相談内容を取り上げます。今回は、大変多いご相談テーマのひとつである補助金のご相談を取り上げます。

魅力的な「補助金」。だけど分からないことだらけ!

Cさん 「美容サロンを経営しています。3年前に自宅の一室を改装して開業しました。少しずつお客様が増えています。もっと売上を上げたいので、いろいろな取り組みを考えているところです。」

筆 者 「どんな取り組みを考えていますか?」

Cさん 「私のお店はヘアカットやヘアカラーが中心ですが、新メニューとして身体の脱毛やフェイシャルエステを始めようと考えています。」

筆 者 「なるほど。客数と客単価、両方を上げられそうな取り組みですね。」

Cさん 「そうなんです。それで脱毛機を導入したいのですがとても高価なので、何か補助金が使えたらいいなと思っています。でも補助金の内容が難しくて。」

筆 者 「どの補助金を調べましたか?どういうところが難しかったですか?」

Cさん 「それが、何が分からないのか説明できないくらい、分からないことだらけなんです・・・。」

補助金は自分でできるが、慣れていないと取っつきにくい

Cさん 「インターネットで漠然と補助金を探したら、たくさん出てきました。でも、どの補助金も説明資料が多すぎるし、言葉も難しくて、私にはとても読めなくて挫折しました。補助金は専門家に頼まないと無理なのでしょうか。」

筆 者 「ほとんどの補助金は、専門家に頼まず事業者自身が申請する前提でつくられています。ですがCさんがおっしゃる通り、どの補助金も説明資料を読むのが大変で、資料を開いただけで諦めてしまう方は多いんですよね。実はどの補助金も中身はだいたい似たようなルールなので、一度やってみると抵抗感は薄れると思いますが、慣れていないと取っつきにくいのは事実です。」

詳しい資料を読む前に、前提知識を理解しておくとスムーズ

筆 者 「補助金の公式サイトにある説明は、かなり詳細な内容です。前提となる知識がそれなりにある方でないと読みこなすのは大変でしょう。初めての人には取っつきにくいんですよね。まずは“補助金とは、おおむねこういうもの”という前提知識をざっとご説明しましょう。」

Cさん 「補助金ごとに主旨が違うんですね。補助金はどれも、業績が苦しいところを補助するものかと思っていました。」

筆 者 「はい。補助金を“弱者の救済”といった福祉的なものと誤解される方がおられますが、そうとは限りません。むしろ、“補助金をきっかけにして、その先は自力で大いに成長してもらいたい”という主旨の補助金のほうが多いと思います。」

Cさん 「申請期間が1週間程度しかないものもあるなんて。そんなに短いと、公募が始まってから準備したのでは間に合わないですね。」

筆 者 「そうなんです。多くの補助金では、公募が始まる前から少しずつ情報が出てきますから、その段階から準備し始める必要があります。」

筆 者 「Cさんの取り組みには、国の補助金の“小規模事業者持続化補助金”が使えそうなので、この補助金の資料を詳しく読んでみるといいと思います。」

Cさん 「どの脱毛機を買うかまだ迷っているのですが、選んでからでないと補助金は申請できないでしょうか。」

筆 者 「はい、補助金の申請書に脱毛機の価格も記入することになりますから、申請までには選びましょう。どの補助金でも、補助金の申請ができるのはだいたいこういうタイミングです。」

Cさん 「“費用を自己資金で支払うことができる”というのはどういうことですか?補助金を使うのに・・・。」

筆 者 「補助金を受け取るのは、購入し終えた後だからです。では、補助金の一般的な流れをご説明しましょう。」

Cさん 「補助金は後払いなんですね。購入する段階ではまだ受け取れないなんて・・・。先にもらえると思っていました。」

筆 者 「はい、そうなんです。購入前に受け取りたいですよね。ですが行政側としては、補助金が、申請通りでない使いみちや、不適切な使いみちに使われることがないように管理しなければなりません。だから事後の後払い方式にせざるを得ないというところではないでしょうか。」

Cさん 「確かに、そう考えると仕方がないのかもしれませんね。」

筆 者 「今日ご説明したことは、一部例外はありますが多くの補助金に当てはまる一般的な前提知識です。この前提知識を踏まえて、具体的な情報収集を少しでもスムーズに進められると良いですね。」

令和2年度から令和5年度にかけてはコロナ関連の補助金が多くあり、定番化していました。令和6年度を境にコロナ関係の補助金のほとんどが終了し、補助金のラインナップが一変しています。今後も補助金を積極的に活用していけるように、ここで解説した前提知識を踏まえて、補助金の説明資料を読めるようになりましょう。

ABOUT執筆者紹介

経営コンサルタント 古市今日子

株式会社 理 代表取締役
経済産業大臣登録 中小企業診断士

外資コンサルティングファームなどで16年間経営支援の経験を積み、2016年独立。
事業再生に携わるほか、自治体の経営相談員や創業支援施設の経営指導員などを務める。
中小事業者・起業希望者の経営相談への対応件数は年間約200件

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