25 November

個人事業主も活用したいクラウドファンディングのしくみと税金[第4回]:購入型クラウドファンディングと消費税

掲載日:2024年11月25日   
起業応援・創業ガイド

近年、フリーランスや個人事業主も活用できる資金調達手段として注目されているクラウドファンディング。何回かの連載で、フリーランスや個人事業主が知っておきたいクラウドファンディングのしくみと税金について解説します。第4回では購入型クラウドファンディングと消費税の関係にスポットをあててみましょう。

購入型クラウドファンディングは消費税課税が原則

クラウドファンディングサイトでは、一般的に「支援」や「応援」といった言葉が用いられるため、集めた資金には消費税が課税されないと考えている人も多いのではないでしょうか。

実は、購入型クラウドファンディングで集めた資金は、原則として、消費税の課税対象になります。なぜなら、第2回で解説したとおり、購入型クラウドファンディングの実態は、事業者が行う対価性のある通常の売買取引と同じだからです。

一方、購入型クラウドファンディングであっても、消費税が課税されないケースもあります。消費税が課税されるケースと課税されないケースの違いは、どこにあるのでしょうか?

消費税が課税されるケースとは?

消費税の課税対象となるのは、以下1〜4の4つの要件をすべてみたす取引です。
要件(4)は理解しやすいと思いますが、要件1〜3については、あまりぴんとこないかもしれません。以下では、要件1〜3をクラウドファンディングにあてはめて、具体的にみてみましょう。

  1. 国内取引であること
  2. 事業者が事業として行う取引であること
  3. 対価を得て行う取引であること
  4. 資産の譲渡・資産の貸付け・役務(サービス)の提供であること

国内取引かどうか

要件1の国内取引かどうかは、リターンの所在場所や提供場所で判定します。

購入型クラウドファンディングで商品等をリターンとして提供する場合は、その商品等の所在場所が日本国内であれば、国内取引に該当します。また、役務(サービス)をリターンとして提供する場合は、その役務提供が行われた場所が日本国内であれば、国内取引に該当します。

ただし、リターンの所在場所や提供場所が明らかでない場合や、リターンの提供が国内と国外の両方で行われる場合は、資金調達者の所在地で判定します。

事業者が事業として行う取引かどうか

要件2の「事業者」や「事業として」とはいったい何を意味するのでしょうか?

消費税法における「事業者」とは、法人と個人事業者をいいます。
そして「事業として」とは、「対価を得て行われる資産の譲渡、資産の貸付けおよび役務の提供を反復、継続、かつ独立して行うこと」をいいます。

株式会社などの法人は、そもそも事業目的をもって設立されるものです。そのため、法人の行為は、すべて「事業として」行う取引に該当します。

一方、個人事業者の場合は、事業者の立場と消費者の立場の両方を兼ねています。そのため、事業者の立場で行う取引が「事業として」に該当し、消費者の立場で行う取引は「事業として」に該当しないこととなります。

たとえば、パン屋の例で考えてみましょう。
パンを製造・販売している個人事業者が、新たに菓子製造をはじめるためにクラウドファンディングを利用して資金調達を行い、新商品の菓子をリターンとして提供する場合は、「事業者」が「事業として」行う売買取引に該当します。

対価性があるかどうか

要件3の「対価を得て行う」とは、「資産の譲渡、資産の貸付けおよび役務の提供に対して反対給付を受け取ること」をいいます。

たとえば、商品を販売して代金を受け取ったり、所有している家屋を貸し付けて家賃を受け取ったり、工事を請け負って工事代金を受け取ったりするような取引が、「対価を得て行う」取引に該当します。また、たとえば交換取引など、金銭の支払いを伴わなくても、何らかの反対給付があるものも、「対価を得て行う」取引に該当します。

さらに、個人事業者が、自分で販売するための商品等をプライベートで使用したり消費したりした場合も(これを家事消費といいます)、対価を得て行われたものとみなされます。

購入型クラウドファンディングでは、リターンとして提供する商品や役務(サービス)の提供を約束して、事前に支援金という名目の対価を受け取ることとなります。そのため、購入型クラウドファンディングを利用して資金調達を行う一連の行為は、「対価を得て行う」取引に該当することになります。

消費税が課税されないケースとは?

4つの要件に該当しない取引の場合

購入型クラウドファンディングであっても、消費税が課税されないケースとは、どのような場合でしょうか?それは、消費税の「不課税取引」と「非課税取引」に該当する場合です。

まず、前述した4つの要件のいずれかをみたさない取引を「不課税取引」といいます。

たとえば、サラリーマンなどの給与所得者が、購入型クラウドファンディングを利用する場合は、「事業者」が「事業として」行う行為ではないため、不課税取引に該当します。また、寄付型クラウドファンディングで集めた支援金は、支援者が見返りを求めて提供する性質のものではありません。つまり、対価性がないといえるため、不課税取引に該当します。
不課税取引には、消費税は課税されません。

非課税取引に該当する場合

次に、前述した4要件をすべてみたす取引であっても、消費税の課税対象として馴染まないものや社会政策的な配慮から消費税を課税しない取引があります。これを「非課税取引」といいます。
購入型クラウドファンディングのリターンとして提供される商品や役務(サービス)が非課税取引に該当する場合は、消費税は課税されません。たとえば、車椅子などの障害者用物品をリターンとして提供する場合が該当します。

(消費税の非課税取引)
(1) 土地の譲渡および貸付
(2) 有価証券等の譲渡
(3) 一定の障害者用物品(義肢・視覚障害者安全つえ・車椅子等)の譲渡や貸付け等
(4) 学校等の授業料・入学金・施設設備費等
(5) 教科用図書の譲渡
(6) 居住用住宅の貸付

クラウドファンディングでは消費税にも気を配ろう

このように、購入型クラウドファンディングを活用して集めた資金は、原則として消費税の課税対象になります。

そのため、資金調達をしたその年は消費税の免税事業者だったとしても、購入型クラウドファンディングで集めた資金と事業に係る売上高の合計が1,000万円を超えた場合は、2年後から消費税の課税事業者に該当し、消費税の申告と納税が必要になります。

また、実際に消費税の申告と納税が必要になるかどうかは、インボイス事業者(適格請求書発行事業者)の登録状況なども影響します。

「消費税の申告が必要だったのに申告していなかった」とならないよう、注意が必要です。購入型クラウドファンディングを利用して資金調達する場合は、所得税だけでなく消費税についても気を配るようにしましょう。

(免責事項)本コラムの内容は、投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令等に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように、原則的な取扱いを簡略化して説明しています。本コラムの情報に基づいて実務や判断を行う場合には、専門家・税務署に相談、または十分に内容を検討のうえ実行してください。本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。なお、当事務所では本コラムに関する個別のご質問は受け付けておりません。予めご了承ください。
ABOUT執筆者紹介

税理士 武田紀仁

たけだ税理士事務所

クリエイターとスモールビジネスを支える税理士。クリエイティブ産業で活動する中小法人や、漫画家・イラストレーター・デザイナー・ものづくり作家などの個人事業主(フリーランス)を対象とした税務・会計・経営アドバイザリーサービスを得意とする。また、自身のもう一つのライフワークとして、文化芸術領域の会計と情報開示についての研究活動も行っている。

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