18 April

役員給与の扱いは?「定期同額給与」について正しく理解する

掲載日:2023年04月18日   
税務ニュース

中小企業のオーナー様は株主であると同時に、その会社の代表取締役として就任されるケースがほとんどではないでしょうか。その際に、会社から代表取締役個人に対して支払われる給与が役員給与(役員報酬)です。役員給与は従業員に対して支払われる給与とは異なるものとして、税法上の規定が設けられております。今回はその中でも多く扱われる「定期同額給与」についてお伝えさせていただきます。

役員給与は原則損金不算入

役員給与については法人税法第34条の定めにより、原則損金不算入として扱うこととされております。会社法施行前は原則損金算入であったものが原則損金不算入と改正されたことは、大変影響の大きい改正でした。まずは、役員給与は原則損金不算入であるということを正しく把握しておきましょう。

別段の定めにより3形態に限り損金算入できる

それでは役員給与を損金算入していないかというと、ほとんどの企業においては損金算入されていると思います。これは誤りではなく、限定された3形態に限り法人税法では損金算入を認めております。それが「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」の3形態です。今回はこの中の「定期同額給与」について、正しい理解を行ってまいります。

「定期同額給与」とは

「定期同額給与」とは月々同額の給与支給を指します。いつからいつまで同額である必要があるかといいますと、「事業年度開始の日から給与改定前まで。そして給与改定後から事業年度終了の日まで。」となっております。詳しくは法人税法施行令第69条第1項第1号に「当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるもの」と記載があります。

例えば3月決算の会社でありかつ役員給与を6月から改定するのであれば、「4月から5月まで。6月から3月まで。」が一定でなければならないということです。

通常改定は会計期間開始の日から3月以内

役員給与は定時株主総会にて改定がなされるのが一般的です。そこで定期同額給与の改定時期も、事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月以内という制限があります。

勘違いしやすいケース(役員給与の改定は年1回?)

「定期同額給与」について、専門家でも勘違いしやすいケースを一つ紹介します。例えば3月決算法人が5月の定時株主総会において、6月より役員給与を月額100万円とすると改定したとします。定期同額給与に該当するためには、次の改定はいつ行うことができるでしょうか。答えは4月です。条文を読み解くと、給与改定後から事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であると書かれています。

すなわち6月から3月までが同額である必要があり、4月分から例えば80万円としても定期同額給与に該当するということです。役員給与の改定ですので株主総会の開催は必要です。この場合は定時ではなく臨時株主総会にて対応することになります。その上で次の定時株主総会で120万円とすることも可能です。よって役員給与の改定チャンスは2回存在することになります。この点、勘違いしているケースが多いのでご注意ください。

最後に

今回は役員給与の「定期同額給与」について論じてきました。「定期同額給与」には今回お話ししました以外にも、臨時改定理由などほかにも論点がございます。また、「定期同額給与」以外にも役員給与には「事前確定届出給与」「業績連動給与」といったものが存在します。これらについてはそれぞれ誤って理解しているケースも少なくありません。

役員給与は法人税の論点のみならず、源泉所得税、個人の所得税と複数の税にまたがります。誤った扱いをしてしまいますと、多くのペナルティを負う危険性もございます。役員給与の改定の際は必ず事前に顧問の税理士に相談することをお勧めいたします。

ABOUT執筆者紹介

税理士 小嶋純一

税理士法人中山会計

大学卒業後、税理士法人中山会計にて代表社員税理士社長を務める。相談しやすさNo.1を体現する税理士として、自社の経営の実践並びにお客様の経営サポートを兼務。M&Aスペシャリスト及びM&Aシニアエキスパートの資格を有し、事業承継の出口をサポートするコンサルティングを20年来推進。保険会社・銀行・商工会議所・各士業等とのタイアップによるセミナーなど全国で多数講演。身近な相談窓口として活動中。

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