今からでも遅くない!熱中症対策として使える家電
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2025年6月から事業所における熱中症対策が義務化されました。リンク先の厚生労働省のページは、詳細から簡単な指標までまとめられています。
厚労省によれば、室内の事務作業~炎天下での重労働まで、業務内容によってそれぞれに定める熱中症対策を行ない、労働環境の改善を行なうというものです。
すでに実施されている企業もあるでしょうし、まだ未対応という場合もあるでしょう。しかし罰則もともなったガイドラインなので、できるだけ早く対応を考えた方がいいでしょう。
ここでは、熱中症対策として使える便利な家電をいくつか紹介します。
熱中症対策の基本となる「黒球温度計」
熱中症はその危険度を測る温度計が必須です。当たり前ですが、一般的な温度計は気温を測るものです。しかし屋外の作業で感じる暑さは、気温に合わせて湿度と地面からの照り返しの温度(輻射熱)が加味されます。これを測るのが「黒球式温度計」というものです。

黒球式は、その名の通り温度計にピンポン玉のような黒球が付いていて、これが輻射熱を測る
据え置き式や首掛け式、胸ポケットにクリップ止めできるものなどありますが、ポイントは「JIS準拠」または「WBGT」対応品というものを選びます。これらは気温と湿度、そして照り返しの輻射熱を加味して、熱中症警告をします。
警告は画面に危険度として「安全」「要注意」「危険」などと何段階かで表示されるものが多くなっていますが、作業環境によっては音や光で知らせてくれるものがいいでしょう。騒音の激しい現場では、バイブの警告がベストですが現状では市販されていないようです。
価格は安いもので3000円程度から、高いもので1万円程度までありますが、価格差はメーカーと付加価値の部分が多いようです。
水冷服-氷水を体に循環!溶けた氷はそのまま飲用に!
ファンが付いた「空冷服」はすでに有名です。作業着に付いたファンで外気を服の中に送り込み、汗の気化熱で涼しくなるというものです。しかし湿度が高いと汗が蒸発しづらく、涼しさが半減してしまいます。そんな時でも涼しく過ごせるのが「水冷服」です。
数社から発売されていますが、ここでは山善の製品をご紹介します。水冷服は作業着というより、袖がないチョッキです。背中には専用の保冷剤もしくは凍った500ccのペットボトルが入れられる薄いリュックのようになっています。加えてリュックには循環用の水を200ccほど入れます。つまりリュックは密封された冷水タンクになっています。

空冷服は作業着ですが、水冷服はチョッキになっています。必要があれば日よけ用の上着も切られます

背中のリュックに専用の保冷剤や、コンビニなどで手に入る凍ったペットボトル飲料を入れ、一緒に循環用の水も入れます。冷水を入れた方が最初から冷たく、冷たさも長持ちします
チョッキの内側には、柔らかいパイプが巡らされていて、電源を入れるとリュックの中で冷やらされた水が電動ポンプによってパイプに送り出され、体全体が冷やされるというわけです。循環用の水は、保冷剤と完全に分離されています。たとえば500ccのペットボトルを使った場合、約2時間で溶けてしまいますが、ペットボトル飲料は、飲んで水分補給が可能です。またコンビニでは冷凍したペットボトル飲料が販売されているので、追加で2時間冷たさを保持できます。なお専用の保冷剤は約1Lほどあるため、保冷時間はおよそ4時間半です。
ここで注意があります。水冷服は方にパイプが通っているので、重いショルダーバッグや肩に担ぐテレビカメラなどは、パイプが潰れて冷水が循環できなくなります。

内側には冷水を循環するパイプが巡らされているので、冷水が直接体を冷やすため涼しい。Tシャツの上に付けていても冷たいほど
ポンプを動かすための電源は、スマホを充電する一般的なモバイルバッテリーと同じで容量が5000mAhとなっています。スマホが1,2回充電できる製品と同じ程度と思ってください。なお連続運転で20時間、間欠運電すると最大48時間の稼働が可能です。
山善の水冷服には3モデルあり、ペットボトル専用のベーシックモデルは背中と胸に冷却パイプが通っていて9,980円です。軽度の屋外の作業などにお薦めです。16,800円のモデルは脇まで冷やせるようになっており、20,800円の最上位モデルは首まで冷やせます。また上位2モデルは、屋外工事などの作業を想定しているため、転落防止用のハーネスを装着した状態でも利用できます。
バッテリー式冷蔵庫で炎天下でも冷たい飲み物で水分補給と体温調整
充電式のバッテリーを内蔵したポータブル冷蔵庫には、大きく分けて2タイプあり、電動工具で利用するようなカセット式バッテリータイプと、内蔵型があります。これらの冷蔵庫は500回ほどの充放電を繰り返すとバッテリが劣化し保冷時間が短くなったりしますが、カセット式の場合はバッテリーを買い替えるだけで新品同様の性能に戻ります。内蔵式は有償の修理扱いで内蔵バッテリーの交換が必要です。年に数回しか使わないという場合は、内蔵バッテリー型でもいいでしょう。

カセットバッテリ―式はヘビーユーザー向け

内蔵バッテリー式は、年に数回~数十回しか使わないという方向け
ここでは電動工具で有名なマキタの製品をご紹介します。
見た目は一般的なクーラーボックスと変りませんが、冷蔵ユニットとバッテリーが搭載されているため、一般的なクーラーボックスより20~30cmほど大きくなっています。
もちろん雨天の中でも使えるように防水対策が施されています。クーラーボックスとの違いは、冷蔵ユニットが重いため車輪と取手が付いているところでしょう。
マキタの場合は、同社製の電動工具に使われる別売のカセット式バッテリーを本体内に差し込むことで駆動します。
最大容量のバッテリーを使うと、最低マイナス-18℃(冷凍庫と同じ温度)まで冷やすことができ、バッテリ2本で10時間の駆動が可能です。また最高60℃に加熱保温も可能で、バッテリー2本で28時間駆動できます。バッテリーは最大2本まで同時利用でき、1本での駆動も可能。また少し容量の小さい小型カセットバッテリでも-18℃で6時間半、5℃(冷蔵室と同じ温度)で17.5時間、60℃で5.5時間の利用が可能です。工具によってカセット式バッテリがまちまちですが、幅広いバッテリーを利用できるように設計されているのが特徴です。

電動工具メーカーだけに多くのバッテリーに対応している。またバッテリーの充電器は、バッテリーの付属品で急速チャージが可能
温度設定は冷温で-18℃~10℃の7段階切り替え、保温で30℃~60℃の7段階切り替えが可能です。夏場は冷たい飲み物からアイス、冬場は温かい飲み物や食品が現場で飲食できます。
さらにカセット式のバッテリが空になってしまった場合は、自動車のシガープラグから電源も取れます。一般的には乗用車の12V専用という場合が多いのですが、現場作業の多いマキタはトラックの24Vシガーソケットにも対応しています。またコンセントから電源が取れるACアダプタも付属しているため、現場用だけでなく多くのキャンパーなどにも愛用されている製品です。
氷と水の中間「スラリー」が作れる専用冷蔵庫
普通の冷蔵庫に見えますが、こちらはシャープの「アイススラリー冷蔵庫」です。アイススラリーとは、アメリがでは「スラーピー」の名前でよく知られ、日本では「フローズンコーク」や「アイススラリー」の名前で有名な、液体と氷の中間の半シャーベット状飲料です。飲めるアイスクリーム「クーリッシュ」をコンビニなどで見かけますが、これのシャーベット版だと考えていいでしょう。
さてアイスやかき氷は、たくさん頬張ると頭がキンキンと痛みますが、アイススラリーの場合は水より冷たいのですが、たくさん飲んでもキンキンしにくいので、熱中症対策に効果的と言われています。つまり冷たい飲み物をゴクゴク飲めるので、体温を急速に下げられます。

一見すると普通の冷蔵時にしか見えないが、温度制御を細かく管理している特殊冷蔵庫

「過冷却」という物理現象を使っているアイススラリーは、半分氷で半分液体
アイススラリーを作るには、非常に限られた範囲での温度管理ができる冷蔵庫が必要なため、一般的な冷蔵庫では作れません。この冷蔵庫は、アイススラリーを作るために特別に設計された冷蔵庫で、一度に500ccのペットボトル飲料を40本収納できます。またアイススラリーにするには、およそ8時間ほどの時間をかけてゆっくりと冷やしていきます。
取り出した飲料は、そのままでは液体の状態ですが、ペットボトルの底を机などに軽く叩きつけると、一瞬でアイススラリー化します。糖分を含んだ飲料やスポーツドリンクはスラリー化しやすいのですが、糖分を含まないお茶や水などはスラリー化しない場合もあるので注意が必要です。
2025年夏の発売で現在数十社に利用されていますが、建設会社や病院、スポーツチームなどで利用されています。
なおホテルにある冷蔵庫より一回り大きな冷蔵庫ですが、ポータブル式ではないため必ずコンセントが必要です。またこの冷蔵庫は、一般には販売されておらず、シャープから企業向けにレンタル専用という点にも注意してください。なお2025年現在、一般向けの販売や個人へのレンタルの予定はないということです。
ミストを噴霧して最大-6.7℃の扇風機
屋外のイベント会場やバス停、駅やビルの屋外休憩スペース(フォアコートやエントランススクエアと呼ばれる場所)などでよく見かけるのが、霧状のミストを噴霧して涼を取っている風景です。中には大型の扇風機と組み合わせているものもあります。
これまでミストが出る扇風機は業務用が中心でしたが、2025年に民生用が発売されました。それがシャークのFLEX BREEZEシリーズです。
お薦めは2機種あり、主に屋外用で使う扇風機タイプと部屋内で使うドライミストタイプです。いずれも屋外で使える防雨仕様で、充電式電池を内蔵しているので、屋外に持ち出して使えるのが特徴です。

FREX BREEZE PRO MISTは、扇風機タイプで主に屋外で使う粒の大きいミストが特徴。その分最大で外気-6.7℃の送風ができる
扇風機タイプの「FREX BREEZE PRO MIST」は、一般的な扇風機と同じで背が1mほどあります。風量は風をほとんど感じないそよ風から、20m先まで風が届く最強まで5段階が選べ、これに加えて1回20分の制限がある最強より強いブーストモードがあります。熱気のこもった部屋や車の換気などに便利です。
左右の首振り角は、停止,45,90,180°の4段階から選べるので、少人数の部屋用から、屋外での大人数でのパーティーまで幅広く対応が可能です。また上下の首振りは固定ですが、正面を中心に上下に55°(下におよそ15°上におよそ40°)の調整が可能です。

大容量の水タンクも備え、屋外でもしっかりミストの涼しさを届ける
水タンクは扇風機の土台に載せるように装着でき、4.5Lの水を入れられます。持ち運び用の取手が付いているので、水を満タンに入れても運びやすくセットも簡単です。また給水用のフタが大きく、ヌルヌル汚れが気になったら、手を入れてスポンジでシッカリ洗えますし、なにより水を入れやすくなっています。
ミストは「なし」をふくめて4段階に調整できるので、最大で24時間の連続噴霧が可能です。また水タンクには氷も入れられるので、扇風機とミストを併用すると最大で外気-6.7℃の涼しさが得られます。つまり気温が30℃を超えていても、体感温度は24℃の冷風とエアコン並みかそれ以上の涼しさです。

本体のポンプでタンクの水を吸い上げミストを噴霧する。水道直結にする必要がなく便利
なおバッテリー駆動時間は、最大で24時間(風量1-首振りなし、ミスト併用時は12時間)、最大風量ではミストの併用に関わらず1.5時間(首振りなし時は2時間)の運転が可能です。
さらにこの扇風機は、ファンの部分のみを取り外して床置きのサーキュレーターとしても機能します。また水タンクも床置きすることでミストの併用も可能です。

ファンの部分のみを分離して、床置きのサーキュレーターとしても使える。もちろん首振りも可能

FLEX BREEZE HydroGoが、サーキュレータータイプで加湿器のような細かいミストが出るので屋内向け。無風状態に比べると最大で外気-4℃の送風ができる
この扇風機と併売されているドライミストタイプの「FLEX BREEZE HydroGo」は、床置き専用のサーキュレーターです。「PRO MIST」のような水タンクと首振り機能がなく、とてもコンパクトで持ち運びやすいのが特徴です。最大の違いは、PRO MISTは霧吹きで吹いたような大粒のミストなので手をかざすと濡れてしまいますが、HydroGoはドライミストなので手をかざしてもほとんど濡れません(超音波式の加湿器相当のミスト)。そのためデスクまわりで使っても、書類や資料が濡れることがありません。
風量は5段階で、一番弱い風は風を感じないほどのそよ風です。ミストなしの場合は連続で12時間、ミスト併用で3.5時間のバッテリー駆動ができます。最大風量ではミストなしで1.5時間、ありで1時間のバッテリー駆動が可能です。また最大風量に加えて、1回20分つかえるブーストモードがあり、換気の際などに利用できます。なおACアダプタを接続した状態でつかうことができるので、その時は時間制限がありません。

水は本体上部から注ぐ。側面には残量が分かる窓が付いている
ミスト用の水は本体内部のタンクに170㏄の水を入れ、ミストの量は、連続と断続の2段階から選べます。なおドライミスト機構は精密なので、水が空での運転を予防するため、連続では1時間、断続では2時間で自動的にミストがOFFになります。
FREX BREEZE PRO MIST、HydroGOともにとても静かなモーターを採用しているので、本体から1mほど離れていると風量3(中間)まで上げても、風切り音すら聞こえない静かさが特徴です。寝室で使っても扇風機がうるさくて眠れないなんてことはまずありません。
ABOUT執筆者紹介
家電ライター/エンジニア 藤山哲人
「羽鳥真一モーニングショー」「ZIP!」「ゴゴスマ」「イット!」「news every」「Nスタ」などのワイドショーやニュースで節電や省エネを含めた家電などのコメンテーターとして多数の番組に出演。またレギュラーのラジオ番組のほか家電専門媒体「家電Watch」や「現代デジタル」「文春オンライン」などでも、家電やその回りの技術記事を“優しく楽しく面白く”解説している。
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