何もわからないフリーランスのための確定申告講座
税務ニュース
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あけましておめでとうございます。2021年も終わりいよいよ確定申告の時期が近づいてきました。
初めての確定申告はわからないことが多く、でも「何がわからないかもわからない」、だから質問もできない…そういう方も多いです。本稿では、確定申告によく出てくる『単語の説明』から、『どのようにして税金を計算するのか』までを、わかりやすく説明します。
(1)「売上」「収入」「所得」「利益」ってなに?
「ここに『所得』を書いてください」って言われて、何を書けばいいかすぐわかる人は少ないと思います。ざっくり言うとこうです。
- 売上=収入 お客様からいただくお金。
- 所得=利益 売上から経費を引いたもの。儲かった部分。
所得には色々な種類があるのですが、フリーランスのみなさんが計算する所得は、「事業所得」です。つまり、以下で計算されます。
事業所得(事業の利益)=売上―経費
図にするとこのような感じです。
(2)「所得」「所得控除」「課税される所得金額」ってなに?
文字だけ見るとどれも似ていて面喰いますが、そんなに難しいことではないので見ていきましょう。
- 所得控除…所得税の計算上、所得から引くもの。
- 課税される所得金額…所得から所得控除を引いたもの。
つまり以下のようになります。
課税される所得金額=所得―所得控除
図にするとこのような感じです。
所得控除とは、その人の事情によって、税金の負担を少なくするもので、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、寄附控除、医療費控除…などがあります。聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
「課税される所得金額」に税率をかけると、所得税が求まります。
所得税=課税される所得金額×税率
税率は、所得(利益)が大きければ大きいほど高くなる「超過累進税率」で、所得の金額によって、段階的に5%~45%となっています。ちなみに、自分で計算する必要はありませんが、住民税は一律10%です。
(3)「確定申告書」「決算書」ってなに?
どちらも確定申告のときに作るもので以下のようになります。
- 「決算書」… 事業所得(事業の利益)を求めるもの。
- 「確定申告書」… 事業所得(事業の利益)をもとに所得税を求めるもの。
ここで、(1)と(2)の図を思い出してください。まとめるとこのようになります。
(4)つまり所得税はこうやって求める
(3)の図を下の方から見ていくと、
所得税額=課税される所得金額 × 税率
=(所得―所得控除)× 税率
=(売上―経費―所得控除)× 税率
で求められることがわかります。つまり、売上、経費、所得控除の3つがわかれば計算できるということで、意外にシンプルなんです。
- 売上…お客様からいただくお金。物やサービスの提供の対価
- 経費…仕入や、家賃、消耗品、通信費など“売上につながる支払い”
- 所得控除…その人に事情によって所得税を減らすもの、基礎控除、配偶者控除など。
(5)経費になるもの、ならないものって?
売上、経費、所得控除がわかれば税額が求まることはわかりましたが、曲者なのが「経費」です。何が経費になるのかならないのか、迷うことも多いでしょう。(4)の式を見ると、経費と所得控除は、多ければ多いほど、税額が少なくなることがわかります。でもだからと言って、なんでもかんでも経費にすることはもちろんNGです。
経費とは、「売上につながる支払い」のことです。といっても、100%売上につながるなんてことはないので(そんな方法があれば教えて欲しい…)、売上につながると思って使うお金のこと、と言っていいでしょう。お客様になると思って食事をしたけど取引に至らなかったなんてこともあるし、でも数年後に何かの縁でお仕事になるかもしれません。
ただし、「ごはんを食べないと仕事できない」とか「1人カラオケで発散した方が仕事がはかどる」のように、「もしその仕事をしていなくてもどっちみち支払うもの」は経費にならないと考えるとわかりやすいでしょう。普段の生活費ももちろん経費にはなりません。
そうではなくて、仕事に必要な書籍や通信費、打合せの食事代など、「その仕事をしていなければ支払わなかったもの」が経費になります。
(6)「青色申告」「白色申告」ってなに?
「青色申告」「白色申告」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?どちらも確定申告のことですが、以下のような違いがあります。
- 「青色申告」…きちんと帳簿を付けて、税金がお得になる。
- 「白色申告」…帳簿は簡単だけど、税金はお得にならない。
青色申告のメリットの一番の目玉は「青色申告特別控除」です。これは、求めた事業所得(事業の利益)から、最高65万円引くことができるというものです。青色申告特別控除の額は、青色申告をしている場合で、次の3段階があります。
簡易簿記(簡単な帳簿) | 10万円 |
---|---|
複式簿記(きちんとした帳簿) | 55万円 |
複式簿記で、かつ、電子申告または電子帳簿保存 | 65万円 |
(4)で、所得税額 = (売上―経費―所得控除)× 税率と書きましたが、青色申告特別控除65万円の場合は、所得税額 =(売上―経費―65万円―所得控除) × 税率になります。これはけっこう大きいですね。
その他、例えば赤字を3年間繰り越せるとか、30万円未満の備品を経費にできるとか(白色申告の場合は、10万円以上の備品は、全額はその時の経費にできず、何年間かかけて経費とする)、青色申告のメリットは色々あります。
「でも複式簿記って、経理の人とか税金に詳しい人じゃないとできないんじゃない?」と思われがちですが、実は青色申告用の会計ソフトを使うと、簿記を知らなくても自然と複式簿記ができるように画面が工夫されているので、そんなに難しくありません。ぜひチャレンジしてみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?まずは実際に会計ソフトに「売上」「経費」を入力していきましょう。1年分の売上と経費を入れると、利益が求まり、決算書を作ることができます(※決算の調整が必要なこともあります)。そして、「所得控除」を入れると、税額が求まり、確定申告書ができます。
入力を間違えたら、修正したり削除すればいいだけですし、最初から完璧にできる人はいないので、まずは領収書や通帳を用意して始めてみましょう!
確定申告は、税務署のためだけにするわけではありません。ご自身の事業が、1年間でどのくらいの売上があって、どのくらいの利益が出たか、見直すためにも必要です。この記事が、確定申告に不安をもつ方々のお役に立てれば幸いです。
ABOUT執筆者紹介
税理士 脇田弥輝
脇田弥輝税理士事務所は、脇田弥輝氏が代表を務める税理士事務所。脇田氏はセミナー活動、子育てをしながら働く女性を応援するブログ発信、租税教育などの多方面で活躍している。
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