20 December

個人事業主も活用したいクラウドファンディングのしくみと税金[第5回]:寄付型クラウドファンディングと税金

掲載日:2024年12月20日   
起業応援・創業ガイド

近年、フリーランスや個人事業主も活用できる資金調達手段として注目されているクラウドファンディング。何回かの連載で、フリーランスや個人事業主が知っておきたいクラウドファンディングのしくみと税金について解説します。第5回では個人が実施する寄付型クラウドファンディングにスポットをあててみましょう。

寄付型クラウドファンディングと税金

寄付型クラウドファンディングは、被災地や社会的弱者の支援など、社会貢献性の高いプロジェクトに利用されることが多い資金調達方法です。寄付型クラウドファンディングは、東日本大震災をきっかけに日本国内での普及が進みました。

寄付型クラウドファンディングの特徴は、支援者がクラウドファンディング実施者の社会貢献活動に対して資金を提供し、見返りを求めないというものです。したがって、寄付型クラウドファンディングにおいて、支援者が受け取るリターンの多くは、「お礼の手紙」「定期的な活動報告」「イベントへの参加」「プロジェクトのノベルティ」などとなっています。

寄付型クラウドファンディングには、寄付(寄附)に関する税金のルールが適用されます。しかし、寄付型クラウドファンディングに関する税金については、実施者が個人か法人かによって取扱いが異なり、また、実施者が個人の場合であっても、支援者が個人か法人かによって取扱いが異なるため、状況を丁寧に整理することが大切です。
以下では、実施者が個人の場合に焦点をあててみてみましょう。

法人からの支援の場合

クラウドファンディング実施者が個人で、支援者が法人の場合、実施者が法人から受け取った支援金は、一時所得として所得税および住民税が課税されます。

一時所得とは、以下A〜Dの条件を満たす一時的な所得のことをいい、たとえば、懸賞金や保険の解約返戻金、法人から贈与された金品などが該当します。

寄付型クラウドファンディングにおいては、基本的に、購入型クラウドファンディングのように対価性のあるリターンを提供しません。そのため、実施者である個人が支援者である法人から受け取った支援金は、以下の条件すべてに当てはまり、一時所得に該当することとなります。

A)営利を目的とする継続的な行為から生じたものではない
B)労務の対価としての性質を有しない
C)役務の対価としての性質を有しない
D)資産の譲渡による対価としての性質を有しない

ただし、営利を目的とする継続的行為から生じるものや、業務に関して受け取るものは、一時所得ではなく、事業所得や雑所得に該当することとなります。

個人からの支援の場合

クラウドファンディング実施者が個人で、支援者も個人の場合、実施者が個人から受け取った支援金は、贈与税が課税されます。

贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に、1人の人が贈与された財産の合計額から、基礎控除額110万円を引いた残りの金額に対して課税される税金です。贈与税の基礎控除額110万円は、「贈与をした人ごと」に計算するのではなく、「贈与を受けた人ごと」に計算します。

したがって、ある実施者が1年間に個人の支援者から提供された支援金をすべて合計し、その合計額が110万円以下なら、贈与税の申告も納税も不要となります。他方、その実施者が、寄付型クラウドファンディングの支援金以外に、両親等から贈与を受けている場合には、贈与税の申告や納税が必要になる可能性があるため、注意が必要です。

ところで、公益事業用財産に対しては、贈与税は課税されません。したがって、社会福祉事業や育英事業、慈善事業、学術・研究に関する事業、認定こども園その他公益を目的とする事業を行うクラウドファンディング実施者で、公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業を行なっているなど一定の条件を満たす人が、支援金を公益目的の事業に供することが確実な場合には、贈与税は課税されないことになります。

ただし、施設の利用など財産の運用や事業の運営に関して特別の利益を与えていないなどの条件に当てはまることが必要です。

寄付型クラウドファンディングの注意点

このように寄付型クラウドファンディングには、寄付(寄附)に関する税金のルールが適用されることとなります。

寄付というと、税金が課税されないというイメージがあるかもしれませんが、クラウドファンディング実施者には、所得税や贈与税などが課税されるケースもあるため、注意が必要です。

また、寄付型クラウドファンディングの支援者は、社会貢献活動をしたいという実施者の想いや活動に共感して資金提供してくれます。したがって、速やかにサンクスレターを送ったり、こまめに活動報告を行ったりするなど、購入型クラウドファンディング以上に感謝の気持ちを表明することが大切です。

一方、リターンの品物の市場価値が高かったり、リターンの内容が過剰なものになったりすると、寄付型ではなく購入型とみなされ、税金の取扱いが異なってくる可能性があります。

寄付型クラウドファンディングにおいては、リターンの頻度や内容などについても気を配るようにしましょう。

(免責事項)本コラムの内容は、投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令等に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように、原則的な取扱いを簡略化して説明しています。本コラムの情報に基づいて実務や判断を行う場合には、専門家・税務署に相談、または十分に内容を検討のうえ実行してください。本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。なお、当事務所では本コラムに関する個別のご質問は受け付けておりません。予めご了承ください。
ABOUT執筆者紹介

税理士 武田紀仁

たけだ税理士事務所

クリエイターとスモールビジネスを支える税理士。クリエイティブ産業で活動する中小法人や、漫画家・イラストレーター・デザイナー・ものづくり作家などの個人事業主(フリーランス)を対象とした税務・会計・経営アドバイザリーサービスを得意とする。また、自身のもう一つのライフワークとして、文化芸術領域の会計と情報開示についての研究活動も行っている。

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