29 August

少量多品目農家必見!酷暑での野菜の調整・発送テクニック!

掲載日:2024年08月29日   
農家おすすめ情報

猛暑に負けない!収穫から発送までの秘訣

近頃の猛烈な暑さは尋常ではありません。少量多品目農家にとって、酷暑は収穫から発送までの全てのプロセスに影響を及ぼす難敵です。特に、収穫したばかりの新鮮な野菜を最良の状態で客に届けるためには、どのような工夫が必要か頭を悩ませている農家も多いのではないでしょうか。今回は、タケイファームで実践している、野菜の調整・発送テクニックを紹介します。

タケイファームでは、栽培した野菜の95%をレストランへ翌日に届くように送っています。収穫当日の天気が雨予報になっているからといって前日に収穫することはありません。悪天候であれば収穫ができないため、先方に延期する旨を伝えます。あくまでも採れたてにこだわっているからです。シェフからは、「鮮度がすごくいい、武井さんの野菜だとすぐにわかる」と言われています。しかし、夏場はその状態を保つことは簡単ではありません。他の農家と差別化するためには、ひと手間もふた手間も必要ですが、逆を言えば、ライバルに差をつけるチャンスでもあるのです。

野菜の鮮度を保つ工夫

毎日の猛烈な暑さの中で、野菜の鮮度を落とさずに収穫するために次のような方法を実践しています。

収穫のタイミングと時間帯を工夫する

まず最も重要なのが収穫のタイミングです。酷暑の中では、収穫時の野菜の温度が品質に大きく影響します。朝早い時間帯、日が昇る前の涼しい時間を狙って収穫を行うことで、野菜に余計な熱がこもるのを防ぐことができます。

収穫後の鮮度を守る!低温保管の重要性

収穫後すぐに日陰や涼しい場所に移動させることが重要です。日光にさらされたままでは、野菜の鮮度が急激に低下します。野菜は収穫されるとストレスを感じ、鮮度の劣化が始まります。劣化が進むのは、野菜は収穫された後も呼吸を続けているためです。野菜の呼吸を抑制するポイントの一つが低温保管。温度が高いと野菜の呼吸量は大きくなりますが、低温で保管すると呼吸を抑えることができ、鮮度の劣化を止めるのに有効です。

収穫中は日陰で野菜をキープする

画像はオカワカメの収穫の様子です。収穫したら籠などは使わず直接FG袋に入れます。外気に触れませんので劣化の進行を遅らせることができます。

収穫したら劣化を遅らせるためにFG袋に入れる

僕が収穫時に使用している作業車は軽バンです。その理由は、エアコンを効かせ荷室の温度を下げ鮮度の劣化を抑制するためです。農家によって環境はそれぞれ違いますので、酷暑の中での低温管理を徹底するのは難しいかもしれませんが、クーラーボックスや冷蔵庫などを利用するなどして野菜の鮮度を劣化させないように工夫してみてください。

鮮度をキープするために軽バンを使用

野菜の特性を知り、最適な工夫をする

夏場の収穫をブッシュバジルで説明します。ブッシュバジルは、一枚の大きさが1センチほどの小さな葉で、一般に流通しているスイートバジルよりも香りが強い品種です。そして草丈が30センチほどのこんもりしたブッシュ型に生育します。

ブッシュバジル

葉っぱが黒くなってしまったバジルを見たことはありませんか?バジルが黒くなるのには3つの理由があります。

  1. 低温障害
  2. 水にぬれている

少量多品目農家の場合、夏場はクール便を使用し複数の野菜を同じダンボールに入れて発送します。僕が利用しているヤマト運輸の場合、その温度は0~10℃の間となりますので、その中にバジルを入れると低温障害によって黒くなる可能性がアップします。また、朝露や雨で濡れている場合も同様のことが言えます。

畑でバジルを収穫したらすぐに切り口を濡らしたキッチンペーパーで巻きFG袋に入れます。傷ついた葉などをトリミングしたら、梱包する前に茎を水に浸し回復させますが、この時に葉っぱを濡らさないように注意しなければなりません。復活したバジルをキッチンペーパーで包みFG袋に入れ、さらに新聞紙で包みます。これによって、低温障害を防ぐことができ、他の野菜と一緒にクール便で送っても問題ありません。「こんなに手間をかけているのか」と思った人もいるかもしれませんが、野菜を最良の状態で客に届けることはとても重要なことです。さらに挨拶文には、「バジルは水に差しておくと日持ちします」とひと言記載します。客に届いた時点で仕事が終わったわけではなく、ベストな状態で使えるところまで伝えることが大切です。種選びから始まり、管理、収穫、発送という一連の流れの中で作ることを重視しがちですが、客に満足してもらえるように考えることは取引の継続にもつながります。

収穫したらすぐに水に濡らしたキッチンペーパーで切り口を巻く

FG袋に入れ劣化を防ぐ

切り口を水に浸して鮮度を復活させる

復活したらキッチンペーパーで包みFG袋に入れる

低温障害を防ぐために新聞紙で包んで完成

今回は、ブッシュバジルを例に説明しましたが、少量多品目農家は、複数の野菜を栽培しています。自分が扱っている野菜の特性を知ることで、収穫・調整・梱包作業を工夫でき、鮮度が良い状態で客に届けることができます。夏場であっても届いた野菜が新鮮であれば、他の農家との差別化にもつながります。クール便で送っても、すぐに冷蔵庫に入れてくれるとは限りません。客が使うタイミングは人それぞれです。届けた野菜が自分の思っているように扱われていると思わないことです。そして、自分の体調を一番に優先し、しっかりとした暑さ対策をして水分補給を忘れないでください。

ABOUT執筆者紹介

武井敏信

タケイファーム

タケイファーム代表。「営業はしない」がポリシー。今まで350種類を超える野菜を栽培し、年間栽培する野菜は約140品種。独自の販売方法を生み出し、栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売している。趣味は食べ歩き。一般社団法人Green Collar Academy理事。青山学院大学ABS農業マーケティングゲスト講師。京都和束町PR大使。

 

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