【家電ライターが解説】身近な節電と省エネ補助金で冬の電力逼迫に備える!
IT・ガジェット情報
円安や世界情勢、そして液化天然ガス(LNG)の高騰によって経営は順調なのに利益が圧迫されているとお悩みの企業も多いでしょう。特に電気代の高騰は四半世紀ぶりの値上がりで、余剰電力取引市場で電力を調達できなくなった新興の電力会社が次々と倒産し、電気代の高騰はしばらく続くと予測されています。さらに懸念されるのが2022年~2023年にかけての冬の電力逼迫です。この夏ですら電力供給をギリギリで賄っている状態で、冬になるとエアコンなどの空調が夏場の4倍近く電力を消費するので、東日本大震災以来の輪番停電もやむなしか?と言われています。
利益を圧迫する電気代を少しでも押さえ、みんなが少しずつ省エネすることで何とか停電を避け企業活動が存続できるようにしたいとみなさんお考えのことでしょう。
ここでは“今すぐ”に“身近でできる”省エネをご紹介するとともに、省エネ対策を行っている企業への“補助金制度”についてもご紹介します。
小規模オフィスでも今すぐできる省エネで電気代を節約
一番簡単なところではクールビスを採用してエアコンの設定温度を少し上げるというのが有名です。もう実践されている企業も多いかも知れません。これに加えて区画ごとにサーキュレーターや扇風機で風の流れを作ることで、体感温度は2~3℃下がると言われています。
「マルチエアコン」機種への交換
また小規模なオフィスでは室内機1台に対して室外機1台の家庭用エアコンではなく、室外機1台で複数の室内機を運転できる「マルチエアコン」という機種への交換もオススメです。とくに事務所向けなどの大型エアコンの省エネ性は10年以上前のエアコンに比べて省エネ性が大幅に向上しいています。10年前の家庭用20畳と最新モデルでは年間1万3千円ほど違いますから、事務所向けとなればその差はさらに広がります。また同じ室外機でエコキュートという給湯装置を使うと、夜間の安い電力でお湯を沸かし給湯するなどもできます。
蛍光灯のLED化で節約
オフィスで一番効果的な節電といわれているのが、蛍光灯のLED化です。事務所で一般的な1.5mほどある40W型の蛍光灯50本を10時間/日利用すると1ヶ月11,000円の電気代が必要です。これをLED化すると電気代を60%ほどカットできるため4,400円となります。寿命は蛍光灯の3倍あるのでランプ交換も10年必要ありません。当初は照明本体を少し電気工事しランプのみをLED化する方法が多く取られていましたが、現在はLED照明が安価になったので照明機器本体を交換する方法が主流になっています。
自社ビルなら省エネのできることが広がる
自社ビルや工場をお持ちの企業は、省エネのビルエアコンや変電施設への交換も効果的です。最近では万が一の場合に備え一部にガス式のビルエアコンを採用したり、太陽光発電と蓄電器を備えることで停電時でも空調や電気を一定期間バックアップ可能にする事務所も増えています。
さらにモーターを使う工場やエレベータのインバータ化も政府が推進しています。従来方式に比べより正確な回転ができ、発熱を抑え効率がよいので省エネにつながります。モーターや付随する制御回路の交換だけで省エネ化でき手間がかからないのが特徴です。
政府の支援策や補助金を活用して安く導入!まずは相談から
省エネしようにもどこから手を付けたらいいのか分からないという場合は経産省 資源エネルギー庁が推進する「省エネ最適化診断・IoT診断」を利用してはいかがでしょうか? 診断費用は1万円程度~2万3千円程度と安く、省エネのプロフェッショナルの「省エネ診断」や「再エネ提案」が受けられます。
これを元に省エネ化を進める場合は国や地方自治体の中小企業向けの省エネ対策補助金が利用できます。また工場関係では省エネ設備への入れ替え支援を行っています。いろいろな条件やケース、受付期間などがあるため詳細は省エネポータルサイトを参照してください。同ページにはさまざまな業種や規模の導入事例が紹介されているので、費用対効果の参考になるでしょう。
建物自体を省エネ化するZEBにも補助金
また事業所のビル自体を省エネ化するZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)にも補助金がつきます。新築・既存の建屋にかかわらず、照明や空調、変圧器やエレベータで50%の省エネ化を行い、さらに太陽光パネルと蓄電池を設置することで、ビルで使う電力を自前で調達し実質消費電力を0にしたり、太陽光は将来的に導入する準ZEBなどがあります。こちらは環境省の政策と補助金になるため詳細はZEB PORTALを参照してください。今一番注目されている最新の省エネ手法がZEBと言ってもいいでしょう。
来冬を乗り越えるために今から準備
連日続く暑さの中でピンとこないかも知れませんが、来冬の電力逼迫は必至です。政府は生活や経済活動を第一に考え、東西日本間の電力相互融通の容量アップや原発再稼動も視野に入れて安定的な電力供給策に取り組んでいます。しかし問題は深刻で2022年の春に行われた節電要請以上に電力が逼迫すると予測されています。
改めて警鐘を鳴らしますが、冬は日が短く太陽光発電が稼動できる時間が短く、照明を点灯している時間も長くなります。なによりエアコンだけでも夏の4倍の電力を消費するという点を忘れてはなりません。
簡単にできる空調の温度設定と衣類の厚着による節電、照明のLED化など従業員の節電意識が高いこの時期に冬に向けた対策を考えてはいかがでしょう。場合によっては政府の支援策や補助金も利用して、古い設備の入れ替えなどで手間をかけずに節電する方法を考える良いチャンスです。
ABOUT執筆者紹介
家電ライター/エンジニア 藤山哲人
「羽鳥真一モーニングショー」「ZIP!」「ゴゴスマ」「イット!」「news every」「Nスタ」などのワイドショーやニュースで節電や省エネを含めた家電などのコメンテーターとして多数の番組に出演。またレギュラーのラジオ番組のほか家電専門媒体「家電Watch」や「現代デジタル」「文春オンライン」などでも、家電やその回りの技術記事を“優しく楽しく面白く”解説している。
[democracy id=”264″]