勤務時間外等に連絡を拒否できる「つながらない権利」をご存知ですか?
社会保険ワンポイントコラム
テレワーク(在宅勤務)が急激に普及した一方で、課題も明らかになってきました。今回はその一つである「つながらない権利」についてご説明させていただきます。
「つながらない権利」とは
「つながらない権利」とは、従業員が勤務時間外に、仕事上の電話・メールなどの一切の連絡を拒否できる権利のことをいいます。つながらない権利は、海外で先行して議論されていますが、日本でも厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」等で明示されるようになりました。
テレワークは、オフィスでの勤務に比べて、働く時間や場所を柔軟に活用することが可能であり、通勤時間の短縮及びこれに伴う心身の負担の軽減による業務効率化につながり、それに伴う時間外労働の削減等、労働者にとってメリットがあると言われています。一方で、働く時間や場所が変わったことで、メールや電話等が時間外等にも増え、労働者の生活時間帯の確保に支障が生じてしまうという課題も増えてきました。
そこで、「つながらない権利」を守るために企業がとるべき具体的な行動対策としては、次のような手法が考えられますので、ご参考ください。
「つながらない権利」を守るために企業がとるべき具体的な行動対策
(ア)管理職への教育・研修
緊急の必要から、どうしても連絡をしてしまったというケースにおいて、連絡をする側の十分な配慮が必要であるとともに、その時間を「労働時間」とすることはもちろん賃金面でも保証をしなければなりません。その他、取引先の人の場合については、契約内容を明確にしておくことや、つながる必要のない体制を作りましょう。
(イ)メール送受信の抑制等
緊急の必要がないのにも関わらず、時間外等に業務に関する指示や報告がメール等によって行われることが挙げられます。配信タイミング機能を活用し、翌朝に送信したり、緊急時以外は顧客や役職者等から時間外等にメールを送受信できないようにしたりするなど、各事業場の実情に応じ、使用者がルールを設けることも考えられます。
(ウ)システムへのアクセス制限
テレワークを行う際に、企業等の社内システムに外部のパソコン等からアクセスする形態をとる場合には、時間外等は事前に許可を得ない限りアクセスできないよう使用者が設定することも考えられます。
(エ)時間外等についての手続
労働が可能な時間帯や時間数をあらかじめ使用者が設定することも考えられます。
ABOUT執筆者紹介
特定社会保険労務士 出口裕美
2004年に社会保険労務士事務所を開業。出産を機に、育児と仕事の両立のためテレワーク(在宅勤務)を開始。2014年に社会保険労務士法人出口事務所に法人化。2017年にテレワーク(サテライトオフィス勤務)を開始。2020年に新型コロナウイルスの取り組みの様子をメディアにて紹介。
経営者と社員が継続的に安心して働ける環境を構築するため、インターンシップ、ダイバーシティ(雇用の多様化)、テレワーク、業務管理システム等を積極的に導入し、また企業への導入支援コンサルタントとしても活動中。
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