01 November

ポイント付与が禁止に! 2025年のふるさと納税の制度変更

掲載日:2024年11月01日   
税務ニュース

2025年10月から、ふるさと納税仲介サイトでのポイント付与が禁止されることになりました。
ふるさと納税の利用者拡大に貢献してきたはずのポイント付与が、なぜ廃止されてしまうのでしょう?
総務省の思惑と仲介会社の反応を踏まえて解説します。

利用者の拡大が進むふるさと納税

ふるさと納税は、利用者が任意の自治体に寄付できる制度です。この制度を利用して寄付すると、寄付額から2000円を差し引いた金額に対して、所得税・住民税の控除を受けられます。

また、寄付のお礼として、自治体から返礼品をもらえる点が制度の大きな目玉です。返礼品は、肉や海産物、野菜や果物などの食べ物から、雑貨・日用品やホテルの宿泊券など、さまざまな品目から選べます。それらの品物を実質2000円の負担で入手できるので、大変お得な制度といえるでしょう。

近年、ふるさと納税の利用者は大きく増加しています。総務省の調査では、2023年は全体の納税受入額が約1兆1175億円、受け入れ件数は約5895万件もの実績となりました。知名度が高まり、すっかり一般に定着したといえます。

名称に「納税」とありますが、実際には納税ではなく寄付をする制度である点は押さえておきましょう。

2025年10月から仲介サイトでのポイント付与が禁止に

順調に利用者の拡大を続けてきたふるさと納税ですが、2024年6月に総務省は返礼品の指定基準見直しを発表しました。そのなかでも、最も大きな変更として注目されたのが、自治体に対して出された「利用者にポイント付与を行うサイトを通じた寄付の募集を禁じる」という内容です。実際に禁止になるのは2025年10月1日から。この制度変更により、以降はポイントの付与ができなくなります。

仲介サイトとは、ふるさと納税の利用者と自治体をつなげる役割をするウェブサイトです。これらのサイトを利用すれば、寄付や返礼品の受け取りにかかる手続きが簡略化し、さらにお目当ての返礼品を探すのも簡単になります。また、自治体にとってはサイト上に特産品が掲載されることで、寄付を募るPRができる点が仲介サイトを利用するメリットです。

仲介サイトは20サイト以上ありますが、その多くがポイント還元サービスを実施しています。多くの場合、ポイントは寄付額に応じて還元され、貯めたポイントは次回のふるさと納税やほかの買い物で利用可能となっています。利用者にとっては、今回禁止が決定したポイント付与もふるさと納税を利用する大きな魅力であったため、今回の制度変更を残念に思う人は少なくないでしょう。

制度変更を進める総務省の事情

総務省は、制度変更に踏み切った理由を「ふるさと納税の適正な運用を確保する観点から」と説明しています。利用者のほとんどが返礼品やポイントを目的として寄付をする、現在の制度の在り方を是正するための動きといえるでしょう。

そもそもふるさと納税は、「納税先を自由に選択する」ことを目的に作られた制度です。地域住民は成人まで自治体が提供する公共サービスを受けますが、その後、就職して納税者になるタイミングで、都会に移住する人が少なくありません。そうなってしまうと、住民税は移住先の自治体に納めることになるので、ふるさとの自治体は大人になるまでさまざまなサービスを提供したにもかかわらず、税収を得ることができなくなります。このような課題を解消するために、国民が自身の意思で「生まれ育った故郷の自治体」や「応援したい自治体」に納税できる仕組みとして創設されたのが、このふるさと納税なのです。

しかし、仲介サイトの運営会社は、より多くの利用者を獲得するために競合他社とポイント競争を繰り広げています。その結果、利用者のほとんどが返礼品や仲介サイトのポイント還元を目的として、制度を利用しているのが現状です。

2008年5月に始まったふるさと納税制度ですが、当初の目的とは大きくかけ離れた形となってしまいました。この状況の改善が、総務省が制度変更で目指すところです。

また、上記の改正に先立って、2024年10月からは返礼品を強調した宣伝広告を禁止しています。
さらに、「お得」「コスパ最強」「還元」などの表現を、寄附先の選択を阻害するとみなしており、寄付の募集での使用を禁止しました。

仲介サイトの反応はさまざま

仲介サイトのポイント付与は、ふるさと納税を利用する大きな魅力のひとつでした。ポイントが廃止されれば、利用するメリットが減少するので、以降はこれまでのように利用者が拡大していかないかもしれません。

ポイント付与の禁止に対して、仲介サイト大手の「楽天ふるさと納税」を展開する楽天グループは強く反対する意向を示しています。同社は制度の変更が「各地域の自立的努力を無効化する」として、撤回を求めるオンライン署名を募りました。結果、総務省が制度変更を発表してから2週間とかからず、100万件もの署名を集めています。今回の変更を快く思わない利用者が、大勢いることがうかがえる結果といえるでしょう。

一方で、同じく大手の仲介サイト「ふるさとチョイス」の運営会社である、トラストバンクの川村憲一社長は、メディアの取材に対して、ポイント制度がふるさと納税の拡大に寄与してきたことを認めつつも、ポイント競争の行き過ぎた状況が制度を歪めている可能性を指摘。「制度の主旨に沿った取り組みが重要」として、制度改正へ賛成する姿勢をみせています。このように、仲介サイト事業者によって反応はさまざまです。

制度変更後のふるさと納税はどうなっていく?

今後も新たな改正が実施される可能性はありますが、少なくともポイント制度が禁止される2025年10月の改正では、2000円の自己負担で地域の返礼品を受け取れるメリットは変わりません。

これまでは、ポイント還元率に着目して仲介サイトを選ぶ人が多くいましたが、制度改正後は「返礼品の取扱いが充実しているか」や「サイトの使いやすさ」が仲介サイトを選ぶ基準となっていくでしょう。

また、これまでも仲介サイトが自社限定の返礼品を展開していましたが、今後は各社が限定の品物に力を入れていくかもしれません。

利用者にとってもポイント制度の廃止は残念ですが、今後、仲介サイトがどのようなサービス展開を見せるかに注目しましょう。

ABOUT執筆者紹介

内田陽

株式会社ペロンパワークス・プロダクション

金融系の制作業務を得意とする編プロ、ペロンパワークス・プロダクション所属のライター兼編集者。雑誌や書籍、Webメディアにて、コンテンツの企画から執筆までの業務に携わる。金融関連以外にも、不動産や人事労務など幅広いジャンルの制作を担当しており、取材記事の実績も多数。

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