迷惑メールが不正送金や詐欺被害などの引き金に
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情報漏洩やウイルス感染などの被害を受けないためには、迷惑メールへの対策が重要です。迷惑メールはメールアプリやウイルス対策ソフトの設定で、ある程度まで選り分けられます。ただし、受信トレイに紛れ込むことを完全に防ぐのは難しいので、迷惑メールが届いたときの正しい対応を理解しておく必要があるでしょう。
迷惑メールが不正送金や詐欺被害などの引き金に
迷惑メールとは、一般的に受け取る人の意思にかかわらず、勝手に送られてくるメールを指します。総務省「電気通信事業者10社の全受信メール数と迷惑メール数の割合(2024年3月時点)」によると、2024年3月の1カ月間において、プロバイダ10社が取り扱う国内のアドレス宛に届いたメールのうち35.14%が迷惑メールでした。過去には70%を越えている月もあり、大量の迷惑メールが送信されている状況が見て取れます。
迷惑メールは主に以下のタイプに分類できます。
- アダルトサイトなどへの誘導を目的としたメール
- 架空請求などの犯罪を目的とした詐欺メール
- 個人情報収集を目的としたフィッシング詐欺メール
- マルウェアに感染するメール
このうち、フィッシング詐欺を目的とした迷惑メールは、本文に掲載されたURLを通じて、銀行などの公式サイトを装った偽サイトにアクセスさせるのが狙いです。サービスへのログインのために入力したアカウント情報や、商品を購入しようと入力したクレジットカード情報が盗まれて、不正送金などに利用される場合があります。
さらに大きな被害を招く恐れがあるのが、受信するとマルウェアと呼ばれる悪意のあるプログラムに感染する迷惑メールです。マルウェアには「ウイルス」や「トロイの木馬」などいくつかの種類が存在します。そのなかには感染したPCの保存データを外部に送信するものがあり、「ダークウェブ」と呼ばれる個人情報などが違法に取引されているサイトに、会社の機密情報が流出したケースもあるようです。
ほかにも、マルウェアの一種である「ランサムウェア」に感染すると、PCの保存データを盗まれるだけでなく、ファイルが暗号化されて使用できない状態になります。「暗号化を解除してほしければ」「情報を公開されたくなければ」などと脅迫される事件に発展する可能性があるので、特に機密情報を扱うPCでは迷惑メールの取り扱いに注意が必要です。
マルウェアへの感染が疑われる場合には、LANケーブルを抜くなどして、PCをネットワークから遮断してください。そのまま放置すると、攻撃者から違法アクセスされたり、マルウェアがネットワークを経由して他のPCに感染したりする可能性があります。そのうえで、ウイルス対策ソフトを利用して、マルウェアの駆除を試みるといいでしょう。
警察庁「令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、2024年上半期におけるランサムウェアの被害報告件数は114件で、2022年以降高い水準で推移しています。フィッシング報告件数は63万3089件あり、不正送金事犯の発生件数は1728件、被害総額は約24億4000万円に及びました。迷惑メールを受信した個人だけでなく、その人の勤め先の会社にも被害が及ぶ可能性があるため、会社の立場からも迷惑メールへの対策を講じる必要があります。
メールソフトの設定で迷惑メールを分別する
一般的にメールの送受信はプロバイダのメールサーバーを経由して行われています。多くのプロバイダではメールサーバー上で迷惑メールを分別するサービスを提供しているので、あまりに多くの迷惑メールが届いているような場合には、利用を検討してみるといいでしょう。さらに、ウイルス対策ソフトやメールソフトには、迷惑メールのフィルタリング機能が用意されているものもあり、迷惑メールを自動で選別できます。
これらの対策をとおり抜けた迷惑メールについても、メールソフト上での操作によって、同じ差出人から届いたメールを分別することが可能です。例えば、Gmailであれば「迷惑メールを報告」機能を利用することで、以降は似たようなメールが「迷惑メール」フォルダへと自動で振り分けられます。
こうした迷惑メールをフィルタリングする操作は、スマートフォンでも可能です。iPhoneであれば迷惑メールが届いた際に、「”迷惑メール” に移動」の操作を行うか、差出人を受信拒否設定リストに登録してください。
さらに、「”メール”でのアクティビティを保護」の機能が有効であれば、メールの開封状況を差出人が確認できなくなります。結果として「迷惑メールを送っても読まれない」と相手に見なされるので、機能が有効になっているかを確認しておくといいでしょう。
迷惑メールは開かない、相手にしないのが大事
日本データ通信協会「迷惑メール相談センター」への相談事例によると、過去には宅配便の不在通知を偽装した迷惑メールや、国税局を名乗って「納税されていない税金があるため、差押えになる」と警告してくるような迷惑メールが送られた事例もあったようです。このようなメールが本物かどうかを見極めるには、以下の点を確認するといいでしょう。
- 差出人のメールアドレスが、企業の公式アドレスかどうか
- 件名に「至急」といった判断を急かせるような内容がないか
- スペルミスや日本語表現の違和感などがないか
迷惑メールを見極めるポイントの一つが、使われているメールアドレスです。その企業が公式に使用しているメールアドレス以外から送られてきたメールは、迷惑メールである可能性があります。ただ、メールアドレスは偽装できるので、例え公式のメールアドレスから届いたと思われるメールでも、100%信用するのは危険です。
また、迷惑メールのなかには、相手の判断力を奪うために、タイトルや本文が読み手を急かすような内容にされているものがあります。さらに、日本語の使い方が怪しかったり、日本では一般的ではないフォントが使われたりしている場合には、海外から送られてきた迷惑メールであることを疑ったほうがいいでしょう。
過去には開いただけでウイルスに感染した事例もあったため、怪しい件名のメールが届いたら、何よりもまずメールを開かないことが大切です。ほかにも、添付ファイルを開く、本文内のリンクをクリックする、個人情報を入力するといった行為は、マルウェアの感染や情報漏洩を招く可能性があります。なお、迷惑メールに返信すると、さらなる迷惑メールの受信を招く恐れがあるので、相手にしないのが正解です。
そして、迷惑メールの受信件数そのものを減らすためには、メールアドレスをネット上に公開しないこと。キャンペーンサイトなどにメールアドレスを登録すると、それが迷惑メールを送る悪徳業者に伝わる恐れがあるので、不用意な登録は避けるのが賢明です。
迷惑メールの被害を防ぐには水際での対策が求められるので、企業では対応をルール化し、それを社員一人一人に周知することが大切です。それでも、詐欺被害などを受けた場合には、警察や消費者生活相談センターなどに相談するといいでしょう。
ABOUT執筆者紹介
ライター 丸田鉄平
各種金融系情報誌の編集・執筆業務を行うペロンパワークス・プロダクションに所属。主な担当分野は株・投資信託、年金、不動産など。過去には編集プロダクションや出版社に勤務。雑誌やWeb媒体の制作に関わり、ITやビジネス、グルメ関係のBtoB、およびBtoC案件で企画・編集・執筆を担当。2級FP技能士