パートタイム労働法の改正
社会保険ワンポイントコラム
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新年度がはじまりました。新入社員を迎えて職場にも春風が舞い込んできているのではないでしょうか。春は新しい仲間も増えますが、いろいろな法改正がある時期でもあります。今年は「パートタイム労働法」が4月1日に改正施行されており、実はかなり影響が大きい改正となっていますので、パートタイマー等の従業員さんがいる会社にとっては、特に重要な情報をお届け致します。
1 法改正の骨子
今回の改正は主にパートタイム労働者(以下「パート」とします)の ①公正な待遇の確保、②納得性を高めるための措置、③パートタイム労働法の実効性を高める規定の新設、の3点です。改正の背景として、パートはいわゆる正社員(以下「正社員」とします)と比較して給与面や福利厚生面等において格差が非常に大きい、一度パート採用されると正社員への転換が困難、等の実態があるからと考えられます。
2 主な改正ポイント①~公正な待遇の確保
正社員と差別してはならないパートの範囲が拡大されました。従来まで労働契約の期間が「有期雇用」である場合には、基本給や賞与等における決定方法での違いが許されていましたが、改正後はそれが禁止されています。また、「待遇の原則(法第8条)」が新設され、パートと正社員の待遇の相違(差)は「職務内容」「人材活用の仕組み」その他の事情を考慮して、「不合理と認められるものであってはならない」とされました(差の程度は合理的でなければならない【均衡待遇】)。
3 主な改正ポイント②~納得性を高めるための措置
パートを雇用したとき会社は「賃金制度」「教育訓練」「福利厚生」「正社員転換措置」等についての説明を義務として行わなければなりません。同様にパートからこれらの内容について聞かれた場合にはパートが理解できるような説明をしなければなりません。この他、相談窓口の設置や周知も義務付けられています。
4 主な改正ポイント③~実効性を高める規定の新設
厚生労働大臣が雇用管理について改善勧告をした際、従わない場合には会社名が公表されます。また、会社が必要な報告を怠った場合や、虚偽の報告をした場合には20万円以下の過料に処せられます。
5 待遇のバランス
上記①における合理的な範囲による差【均衡待遇】が適用になるのは、あくまで「職務内容」か「人材活用の仕組み」のいずれかがパートと正社員で異なる場合のみです。職務内容と人材活用の仕組みの両方が同じ場合には、「差別的取扱いの禁止(第9条)」に該当し、待遇における差別は認められません【均等待遇】。
ちなみに上記の職務内容には「主な職務内容」の他「責任の程度」も含まれますので、責任の程度に差があれば違いはあることになります。また、人材活用の仕組みとは「転勤の有無や配置変更の有無」等のことですが、形式上「正社員は転勤あり、パートは転勤なし」と労働契約を締結していても、実際には正社員が転勤することがなければ、違いがあることにはなりません。
また、②における正社員転換措置の説明をする為には、会社としてパートから正社員になるためのルール作りをしておかなければなりません。具体的には、A.正社員募集の際の情報周知、B.社内公募、C.転換試験、といった制度措置が必要であり、会社はいずれかの措置のルール化、およびパートへの周知が義務化されています。
6 今のうちに整理と整備が必要
中小企業ではパートも正社員もまったく同じ仕事をしている会社も多いことと思われます。しかし、労働契約上「あなたはパート採用だから(待遇はこの程度)」という理由で差別が発生しては「名ばかり店長」ならぬ「名ばかりパート」として問題化しかねません。今のうちにパートと正社員の職務内容や責任範囲の整理、そしてパート相談窓口設置や正社員転換措置等、必要な整備をしておくことをお勧めします。