社会保険の「資格喪失関係手続き」のポイントと4月からの変更点
社会保険ワンポイントコラム
例年、3月は社会保険の資格喪失関係の手続きが多くなる時期である。ところが、昨年3月に社会保険の届出様式が大幅に変更されたことに伴い、現在の資格喪失関係の手続きは、以前よりも分かりづらくなっている。そこで今回は、新様式による厚生年金保険・健康保険の資格喪失関係手続きのポイントと、4月からの取り扱いの変更点について整理しよう。
名称が酷似した2つの「喪失届」
現在、厚生年金保険および健康保険の資格喪失関係手続きに使用する主な届書は、次の2種類が用意されている。
② 厚生年金保険 被保険者資格喪失届 厚生年金保険 70歳以上被用者該当届
いずれの届書にも「厚生年金保険 被保険者資格喪失届」という文言が入っているため、従業員などが厚生年金保険から抜けることになった場合、どちらを使用するのかが分かりづらいという特徴がある。この2つの届書はどのように使い分けるのだろうか。
退職時に使用しない②の「資格喪失届」
実は、従業員などが退職をした場合に使用するのは、①の「資格喪失届」だけである。②の届書は「資格喪失届」というタイトルが付いているものの、従業員などの退職時に使用する届書ではない。従業員や役員が在職中に70歳になったときに届け出る目的で用意されているのが、②の「資格喪失届」である。
厚生年金保険の加入年齢は70歳未満と決まっている。そのため、70歳になると勤務を継続していても厚生年金保険からは抜けることになる。ただし、70歳以降もそれまでと同様に働き続けるのであれば、今度は厚生年金保険の「70歳以上被用者」という立場として、年金事務所に届出義務が発生する。このときに使用するのが②の届書である。そのため、この届書は通称「70歳到達届」と呼ばれている。
平成31年4月1日から「70歳到達届」の運用が変更に
実は、昨年末に厚生労働省令が公布され、上記②の「資格喪失届」である「70歳到達届」の取り扱いを平成31年度から一部変更することが発表された。
具体的には、「70歳になった時点の標準報酬月額に相当する額」と「70歳になる前日の時点の標準報酬月額」が同じ場合には、平成31年4月からは本届書の提出が不要とされることになった。様式変更後、わずか1年余りでの運用変更である。
ただし、「70歳になった時点の標準報酬月額に相当する額」と「70歳になる前日の時点の標準報酬月額」の額が変わるのであれば、平成31年4月以降も「70歳到達届」の提出は必要である。間違えないように手続きを進めていただきたい。
《参考》
日本年金機構ウェブサイト
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届 厚生年金保険 70歳以上被用者不該当届
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kenpo-todoke/hihokensha/20140722.files/0000020841WmioE6Jhw7.pdf
厚生年金保険 被保険者資格喪失届 厚生年金保険 70歳以上被用者該当届
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kenpo-todoke/hihokensha/20140218.files/0000014752oyCXKgetP9.pdf
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