09 September

IoT統合エッジウェア「Gravio」を飲食店で活用してDXにチャレンジしてみた

掲載日:2022年09月09日   
IT・ガジェット情報

データは取得して終わらせず活用することで業務効率を改善できる

これからの企業のDXにはIoTやAIの力を活用する必要があり、クラウドはもちろん今後普及するエッジコンピューティングの利用も視野に入れておく必要がある、なんて言われても明確なビジョンを想像できるのはITリテラシーのあるごく一部の人だけでしょう。そもそも、それぞれの言葉はとても幅広い概念です。明確な定義があるわけではないので、なおさら理解が難しくなります。

まずはカジュアルな事例を元に、具体的な活用方法を知ることで、DX、IoT、AI、クラウド、エッジといった概念の理解を深めることができます。そこで今回はアステリアが開発、提供しているAI搭載IoT統合エッジウェア「Gravio」を飲食店で活用したケースを紹介します。

アステリアが提供する「Gravio」

 

ニーズに合わせたセンサーやスイッチ類、LEDモニターまで

Gravio」はセンサーやスイッチなどのIoTデバイスとエッジコンピューターである「Gravio Hub」、そして設定・管理アプリの「Gravio Studio」から構成されています。ハードウェアは「Gravio」からレンタルする仕組みで、温度センサーやドア・窓開閉センサー、人感センサー、振動センサー、CO2センサー、距離センサーなどを用意しています。センサーだけでなく、スイッチ類や出力するためのライトやLEDモニターなどもあります。

ユーザーは自分たちの業務に必要なセンサー類をレンタルし、Gravio Hubに接続し、すぐに活用できます。単にセンサーのデータを取得するだけでなく、そのデータを元にしたアクションも設定できるのが特徴です。

2022年7月25日にセンサー類を接続する「Gravio Hub」の最新モデルが発表されました。今回は残念ながらこの「Gravio Hub 2」が間に合わなかったので、初代「Gravio Hub」で撮影しています。

ニーズに合わせて様々なセンサーを利用できます。

 

7月25日から提供が開始されたエッジデバイス「Gravio Hub 2」

 

データは活用することで、価値が高まります。従来は何らかのデータを計測しただけで満足し、下手をすれば紙で管理してまったく利活用できていないという状況でした。デジタル化するのはもちろん、そのデータを元に人の作業を軽減したり代替させることで、大きな価値が生まれるのです。

 

ノーコードプラットフォームで広がり始めたIoT

例えば、コロナ禍で飲食店のCO2計測デバイスが一気に普及しました。とは言え、据え置き型のデバイスで、本体にCO2を表示させるだけだと、その場で値を見て終わりです。CO2濃度が高くなったら、それを見た人が換気する、といった場当たり的な対応しかできませんし、見逃せばそれで終わりです。

しかし、データを蓄積できれば、1日のCO2濃度の推移をグラフで確認できます。営業中は忙しいのでずっとチェックすることはできませんが、後でまとめて管理できるなら分析ができるのです。例えば、この個室はCO2が高まりやすいのでエアコンを強くしたり、換気扇を増設する、といった対策が立てられます。

このようなシステムは、以前なら大がかりなハードウェアに専用のシステム開発が必要になり、とても高額なコストが発生していました。しかし、近年はIoTがとても安価で手に入るようになり、クラウドの利用も当たり前になりました。そして、「Gravio」はノーコードプラットフォームです。

ノーコードプラットフォームとはコードを書かなくても、プログラミングできる仕組みのことです。やりたいことをプラモデルのように組み合わせ、パラメーターを設定するだけで、システムを作れるのです。システム開発会社に外注することなく、現場の人が自分で作業できるので、大きなコストダウンと時間の削減になります。

「Gravio Studio」上で、コードを使わずにシステムを構築できます。

コロナ禍で活躍するCO2濃度のモニターを構築

では、飲食店の個室でCO2濃度をモニターするという例を考えてみましょう。まずは、個室にCO2センサーを設置し、店内のどこかにある「Gravio Hub」に接続します。これで、データは取得できるのですが、それで「どうする」というのも自分ですべて考える必要があります。表示したいのであれば、「Gravio Studio」で「Gravio LEDマトリックス」という電光掲示板にCO2濃度の値を表示させる設定を行います。

さらに、CO2濃度が1000ppmを超えたら、店員が個室に行き、強制的に換気させるというワークフローにするなら、キッチンに「Gravio ライト」を設置し、特定の条件下で赤く光るようにできます。作業しているとライトを見逃す、というのであればBluetoothスピーカーから音声で通知することもできます。普段利用しているビジネスチャットでも、メールでも、SMSでも特定のメッセージを送信できます。

あらゆるものがインターネットにつながります。これがIoTです。そして、「Gravio Studio」で設定した処理は「Gravio Hub」内で行われます。CO2濃度の判断も別デバイスへの指示も、クラウドを経由するのではなく、現場の「Gravio Hub」で処理されます。これがエッジコンピューティングです。店内の端っこ(エッジ)で処理するために、「エッジ」と呼ばれているのです。

個室にCO2センサーとLEDモニターを設置し、CO2濃度を確認できるようにしました。

 

CO2濃度が一定以上になったら、キッチンのLEDが光って通知する仕組みも簡単に構築できます。

冷蔵庫の状況もリアルタイムでチェックできる

温度・湿度・大気圧センサーを冷蔵庫に設置すれば、リアルタイムの庫内状況を取得できます。飲食店の業務用冷蔵庫はヘビーユースされるので、何年も利用していると故障することがあります。飲み物であれば何とかなりますが、食材を保存している冷蔵庫が長時間停止すると大きな損害が発生してしまいます。

5分おきに冷蔵庫の温度と湿度を監視し、そのデータをExcelファイルに記録。温度が設定したラインを超えた場合、アラームを出すといった仕組みにしておけば安心です。

Excelを見れば、1日のうちの温度変化を確認でき、営業中の開け閉めの影響が大きい場合は冷蔵庫を分散するとか、回数を減らす工夫をするという対策ができます。休日に温度が下がりすぎて、食材が凍ってしまうといったことも気付けます。

アラームはメールでもビジネスチャットでも、LINEでも、SMSでも送信できます。ライトでもLEDモニターでも、何でもニーズに合わせて設定できます。もちろん、複数設定するのもよいでしょう。

冷蔵庫に温度センサーを設置すれば、リアルタイムに温度や湿度を計測できます。

 

Excelに温度を記録し、異常があればアラートを出せます。

ワイヤレススイッチを使えば、来客を知らせることも

IoTは何もセンサーだけとは限りません。ワイヤレススイッチが押された、というのも立派なデータです。例えば、「Gravio」の「ワイヤレススイッチ」を押すと、店で利用しているビジネスチャットサービス「Slack」に通知を飛ばすことができます。複数のワイヤレススイッチそれぞれをテーブルごとに振り分けることで、呼び出しチャイムとして利用できるのです。

オフィスの入り口に置いて、来客を知らせる目的で利用してもいいですし、スイッチを押したら時間を記録するレコーダーとしても活用できます。自社の業務に合わせて、自由にシステムを構築できるのが魅力です。

ワイヤレススイッチを押したらテーブル番号がビジネスチャットやワイヤレススピーカーに通知されるようにしました。

カウンターや病院の待合室にいる人数をリアルタイムに検出

「Gravio」ではネットワークカメラの映像をエッジで処理することもできます。例えば、人数を検出するAIを使えば、カメラの映像に映っている人数をカウントできます。飲食店のカウンターに座っている人数や、病院の待合室にいる人数をリアルタイムに検出できるのです。

その情報をTwitterに投稿したり、ホームページに表示したりすれば、顧客は自分で混雑具合を確認できますし、店舗や施設側は問い合わせに対応する手間を軽減できます。

プランやデバイスにもよりますが、AIを切り替えることで、天候や車両を検知したり、顔認証で性別や年齢層、マスクの有無を判断したりできます。人の動きにも対応し、入退室や侵入、うろつきなどを検知することも可能です。

もちろん、エッジコンピューターである「Gravio Hub」内で処理されるので、クラウドに映像が送信する必要はありません。通信量を抑えられるという以外にも、プライバシー保護や情報漏洩対策としても有効です。

「Gravio」の人数検知AIを利用して、自動的にTwitterに来客数を公開することができます。

「Gravio」は導入前の検証や小規模IoTの構築なら、なんと月額500円で利用できます。中規模IoTを構築する場合は、月額2万2000円とそれでも格安です。この金額で、業務利用ができるエッジコンピューターとセンサーを20個レンタルできます。

デジタルの力で業務を効率化させることは、決して高いハードルではありません。専門の人材や数千万円の予算などを用意せずとも、カジュアルにチャレンジすることもできるのです。

IoT、AI、クラウド、エッジという概念は自分で触ってしまえば、理解するのも簡単です。「Gravio」はノーコードプラットフォームなので誰でも使えますし、楽しんで触っているうちに大きな可能性があることに気が付くことでしょう。興味があるなら、「Gravio Basic」プランから初めてみてはいかがでしょうか。

撮影協力:原価BAR三田本店
ABOUT執筆者紹介

柳谷智宣

ITライター/NPO法人デジタルリテラシー向上機構 代表理事
ホームページ

1998年からIT・ビジネスライターとして執筆活動を行っており、コンシューマからエンタープライズまで幅広い領域を手がけている。2018年からは特定非営利活動法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を立ち上げ、ネット詐欺や誹謗中傷の被害を減らすべく活動している。

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