26 May

70歳までの就労機会確保時代における「健康診断」の事後措置

掲載日:2021年05月26日   
社会保険ワンポイントコラム

少子高齢化が進む中、70歳までの就労機会確保が努力義務になりました。

生まれてから65歳までに亡くなる人数と、65歳から70歳までのわずか5年間で亡くなる人数はほぼ同じです(図)。死因としては、悪性新生物(がん)と動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳卒中)が最多です。現在はリスクが高くなる中年からの対策が主な企業が多いですが、今後は若い時からの対策が重要と考えられます。病気の特性と、年代別に気を付けるポイントにつき説明します。

1. 2大死因疾患の特性とは?

① 悪性新生物(がん)の特性

癌のうち約半数近くは予防可能と言われています。

予防の第一は、生活習慣です。禁煙、適正体重維持、適度な運動、食生活の欧米化を避ける、飲酒を控える、などです。
第二は、感染予防・治療です。B型・C型肝炎ウイルス、胃がんの原因であるピロリ菌、子宮頸がんの原因となるヒトパピロマウイルス(HPV)などが代表的です。特に肝炎は治療がありますし、HPVは予防接種があります。子宮頸がんは20~30代の女性の死因として無視できないうえ、不妊にもつながります。
第三に、早期発見早期治療です。特に子宮がん、肺がん、大腸がん、胃がん、乳がんに対しては有効です。

② 動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳卒中)の特性

年齢が進むほど血管は固くなります。この血管の硬化は誰もが生まれた時から年を取るとともに進行し、心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化性疾患の原因となります。このように動脈硬化を起こす最大の因子は年齢ですが、他に喫煙、糖尿病、LDLコレステロール、高血圧、などが動脈硬化を進める要因です。

2.社員自身ができること 会社ができること

これらの特性を踏まえて、自分たちができることを年代別に述べます。

入社時、20歳代

まず、見るべきはLDL-コレステロールの値です。1000人に1人程度遺伝的にLDL-コレステロールが高い方がいます(大体200mg/dl以上)。こういう方は50代で心筋梗塞を高率に発症し、命に係わるリスクがあるので若い頃からの治療が必須です。

次に、GOT(AST)、GPT(ALT)の値が20代で30IU/Lを超える人は慢性B型/C型肝炎である可能性があります。これらのウイルス性肝炎は将来高率に肝臓がんを引き起こしますが、内科治療でコントロールでき、治癒も望めます。

30代~40代

このころから肥満、運動不足、血圧上昇、GOTやGPTの上昇、血糖値高値(進むと糖尿病)、飲酒量の増大などが起こりやすいです。糖尿病を発症すると失明や人工透析、心筋梗塞など様々な病気が起こる危険がぐっと高まります。

また、GOTやGPTの上昇は栄養過多により肝臓に脂肪が溜まることによって起きます。脂肪肝の一部に、肝臓がんのリスクを上げる一群があることも知られています。この時期の過ごし方が60歳以降の健康を左右すると言っても過言ではありません。

50代~60代

この世代になると持病を持っている方が増えます。継続的な持病の治療が大切です。転勤などを機に高血圧や糖尿病などの治療が中断してしまう方が時々見られますので要注意です。

また、がん検診を受けること、要精査や要治療という結果が出たら必ず医師に相談し次の検査や治療の戦略を立てることが大事です。

60代以上

50代を超えたころからサルコペニア(筋肉量減少)が起こります。人間の筋肉量は40代後半から落ち始めます。70歳時点でのサルコペニアの率は約10%程度とも言われ、転倒など事故の増加、死亡率の増加などを引き起こします。これの予防としては、軽い筋トレのような運動に長距離を歩くといった有酸素運動を組み合わせるのが効果的です。50代の頃に比べ体重が年々減少傾向にあればサルコペニアが進んでいる可能性があります。人間ドックなどで握力測定や立ち上がりテストを受けることをお勧めします。

一方、女性は閉経すると骨が急速にもろくなり、(骨粗鬆症)骨折のリスクが極端に高くなります。60代では3人に1人が骨粗鬆症です。一度婦人科か整形外科で検査を受けることをお勧めします。

会社としては、社員自らが健康管理を確実に実行するよう促すことが大切になります。健診結果に要注意項目があった社員は産業医等と相談、または医療機関を受診し、受診したら自発的に会社に報告する、また、異動の際、持病の治療を継続しているかどうかを会社の保健担当者がチェックする、といった文化の醸成が望まれます。というのも、会社は定期健康診断の結果を知ることはできますが、その後の受診の有無や結果については本人の同意がないと知り得ないからです。また、糖尿病、高血圧、脂質異常症などを指摘されているにもかかわらず治療を拒否している方に関しては、保健担当者が粘り強く説得することが望まれます。

70歳まで元気に働くために社員と会社が一丸となって対応していきましょう。

ABOUT執筆者紹介

神田橋 宏治

総合内科医/血液腫瘍内科医/日本医師会認定産業医/労働衛生コンサルタント/合同会社DB-SeeD代表
 
東京大学医学部医学科卒。東京大学血液内科助教等を経て合同会社DB-SeeD代表。
がんを専門としつつ内科医として訪問診療まで幅広く活動しており、また産業医として幅広く活躍中。
 
原稿提供元株式会社ブレインコンサルティングオフィス「かいけつ!人事労務」
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