主な都道府県ごとの最低賃金と、最低賃金のチェック方法について確認しましょう
社会保険ワンポイントコラム
はじめに
2021年10月、最低賃金(企業が従業員に支払う賃金の最低額)は、全都道府県で一律28円引き上げることで昨年よりも大幅に上昇しました。昨年度は、引き上げを求める労働側とコロナ禍を理由に凍結を主張する経営側が合意に至らず1円の引き上げにとどまっていました。(実質据え置き)
ここでは、主な都道府県ごとの金額と、最低賃金のチェック方法について解説します。
最低賃金の確認方法
まずは、最低賃金の決定方法ですが、地域別最低賃金は、(1)労働者の生計費、(2)労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払能力の3点を総合的に勘案して定めるものとされています。これらをもとに最低賃金審議会において議論した上で、都道府県労働局長が決定しています。
2021年の地域別最低賃金の一部を紹介すると、関東地域では以下のとおりとなります。
都道府県 | 最低賃金額(これまでの金額) |
---|---|
埼玉 | 956円(928円) |
千葉 | 953円(925円) |
東京 | 1,041円(1,013円) |
神奈川 | 1,040円(1,012円) |
最低賃金とは時給額を基準として決められるものなので、月給制で給与を支払っている場合は時給に換算してから確認する必要があります。最低賃金を上回っているか否かの確認方法としては、基本的に、月給額を1カ月の平均所定労働時間数で除すると求められますが、各種手当※の扱いには注意が必要です。
※最低賃金の計算には以下の手当は含めない
・通勤手当
・家族手当
・皆勤手当
・固定残業手当
また、計算に必要な「1カ月平均所定労働時間数」については、通常は年間の労働日数および1日所定労働時間数から求めることができます。例えば、年間240日勤務で1日の就労時間が8時間だった場合の1カ月平均所定労働時間は、以下のようになります。
その他、歩合制での給与の場合も月給制と同様に時給換算してからの確認が必要です。
例えば、勤務地が東京都で、基本給20万円、歩合給2万円、1カ月平均所定労働時間160時間、ある月の残業込みの実労働時間が200時間とした場合、以下のようになります。
歩合部分→2万円÷200時間=100円……(2)※
(1)+(2)=1,350円≧1,041円
※上記の計算式では、別途、残業手当の支給は必要となるが、この就労条件であれば東京都の地域別最低賃金1,041円を上回ることとなります。
おわりに
地域別最低賃金は毎年10月に改定され、新型コロナ感染拡大により昨年はほぼ据え置かれましたが、今後数年間は上昇していくと思われます。
コロナ禍での最低賃金の引き上げは、労働者にとって吉報となる一方、新型コロナ感染拡大による休業や時短営業をせざるを得ない企業には、さらなる追い打ちをかける事態になりかねません。上記のように歩合給がある場合や、固定残業手当がある場合には注意が必要で、特に基本給を抑えて歩合給を手厚くしている企業においては大きく影響を受けるかもしれません。
人手不足で採用難が続いているなか、最低賃金の改定をきっかけに賃金全体の見直しを含めて検討されるのはいかがでしょうか。
ABOUT執筆者紹介
瀧本旭
社会保険労務士法人ステディ
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