管理職のハラスメントが起こる「ある勘違い」
社会保険ワンポイントコラム
管理職の職務である「管理」とは?
「課長をはじめとする「管理職」の職務とは何でしょうか?」と問われて、「そんなこと分かり切っているじゃないか。」「組織目標を達成するために、担当するチームや部下を管理することだろう。」とお答えになるのではないでしょうか。
では「管理とは何でしょう?」と問われて、「~・・・~云々」と即答できる人がどのくらいいるでしょうか?この答えを自分なりに持っていないと、どんなに管理職として頑張ったとしても、報われないことが多いでしょう。かえって悪循環となる可能性も否定できません。
多くの管理職の人たちが「管理」を「監視してしっかり仕事をさせることだ。」と捉えているようであれば、部下がちゃんと働いているかを「監視」することに気が行ってしまいます。常に部下の周りを徘徊したり、事細かな業務報告を求めたり、リモートワークであればカメラの稼働を義務付けたり、このようなことを無意識のうちにやってしまうでしょう。部下が、威圧感や不快感を感じているにもかかわらず、です。
ヒトをモノのように「管理」してはいけない
思い込みとは怖いものです。冷静に考えたら、「監視」されて嬉しい人など、どこにもいません。「監視」とは「部下の逸脱した行為を警戒して見守ること」ですから、管理職から部下に放たれるコミュニケーションは、こうです。「あなたたちは、放っておいたらちゃんと仕事をしないと思っています。私が四六時中監視して、強制的に仕事をさせるようにします。」です。
そのような管理職との関係性の中で、モチベーション高く仕事に勤しむ部下などいるはずがありません。結果として、このような管理職は、その熱意とは裏腹に職務を全うすることができないジレンマに陥ってしまいます。
この原因を紐解けば、「管理」という言葉の捉え方に行き着きます。国語辞書的には、「管理」とは「物事をとりさばくこと」であり、「管理職」とは「部下を統率する役目」などと表現されます。もちろん、正しい表現なのでしょうが、まるで「モノ」扱いです。
しかし、管理する相手は生身の人間です。いろいろな考えや意見、感情を持っています。にもかかわらず、「モノの管理」と同じような発想で、チームや部下を「管理」しようとしてもうまくいくはずがありません。「モノ」に対してのハラスメントはあり得ませんが、これが人間相手だとハラスメント頻発職場になること請け合いです。
的確な「管理」を行う方法
それでは、的確な「管理」はどのように理解・実践すべきなのでしょうか?筆者は、「良い関係性を築きながら、状況にフレキシブルに対応し、相手のやる気を引き出していくこと」というのが相応しいかなと考えています。
つまり、冒頭の「管理職」の職務とは「組織目標を達成するために、担当するチーム内や部下と良い関係を築きながら、状況にフレキシブルに対応し、そのモチベーションを高めていくこと」となります。
そう考えると、管理職のミッションとは、統率・統制ではなく、チーム内あるいは部下との関係性の構築、つまり「コミュニケーション」が鍵を握っていることがお分かりいただけるでしょう。
モチベーションは、人間の内面にしか存在しませんから、一朝一夕には上手くいくものではありません。それなりの時間と労力はかかります。しかし、そのようなイメージを描きながら取り組めば、必ず成果が現れます。
まとめ
シリコンバレーのグーグルに端を発し、最近「心理的安全性」の高い組織づくりが盛んになっています。何でもかんでも「ユルユル」になることに与するものではありませんが、「心理的安全性」は「管理職のアサインメント」を社内で議論する際の一つのテーマになり得るでしょう。組織内の自然体でのオペレーションだけでハラスメントが起こらない職場づくりにぜひトライしてみてください。
ABOUT執筆者紹介
大曲義典
株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ 代表取締役
大曲義典 社会保険労務士事務所 所長
関西学院大学卒業後に長崎県庁入庁。文化振興室長を最後に49歳で退職し、起業。人事労務コンサルタントとして、経営のわかる社労士・FPとして活動。ヒトとソシキの資産化、財務の健全化を志向する登録商標「健康デザイン経営®」をコンサル指針とし、「従業員幸福度の向上=従業員ファースト」による企業経営の定着を目指している。最近では、経営学・心理学を駆使し、経営者・従業員に寄り添ったコンサルを心掛けている。得意分野は、経営戦略の立案、人材育成と組織開発、斬新な規程類の運用整備、メンヘル対策の運用、各種研修など。
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