個人事業主、会社役員そしてそれぞれの配偶者の方の退職金制度について
税務ニュース
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まず最初に、事業主、役員その家族の皆様!老後の蓄えは?
私はこの業界で25年以上お客様と接しておりますが、個人事業主の方や会社経営者の方々が自分の老後(退職後)の人生設計を考えている人が少ないと感じています。
それは日々、慌ただしい業務に追われていて、そんな先のことまで考える余力がないということが現実的な問題だと思います。そこで、今回は私の会計事務所で、基本的には全てのお客様に小規模企業共済制度の加入をお勧めしております。この制度は個人が負担するもので、支払う時も受給するときも所得税の優遇措置があります。また、契約も法人ではなく個人として加入するため、一切法人に関係しませんのでご注意ください。(個人の税金の計算上経費「所得控除」になりますので、個人の節税対策となります。)個人事業主の方や会社役員、そしてそれぞれの方の配偶者の退職金を供える制度です。このような制度に加入をしていないと実際に支給する時にお金がない!ということになってしまい、せっかくの税制上の優遇措置が受けられなくなってしまいます。
どんな人が加入資格をえられるの?
(常時使用する)従業員の人数が20人以下の企業(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主か役員(社長さん等)であれば加入できます。ただ、調査などはありませんから加入をしてしまえばいいという考え方もあります。但し、医療法人等の機関の理事等は加入が出来ませんので、その場合にはMS法人(メディカルサービス法人:別法人)で加入することは可能となります。
いくら払うの?
掛金は月額で、1,000円から70,000円まで500円刻みとなっています。増額はいつでも可能ですが、減額は一定の要件が必要です。では、最低いくら払えばいいのか?は、最低年間40万円です。これは一年間の退職所得控除額が40万円与えられていますので、この制度をフルに活用するための額となります。また、一年分の前払いをすると、その全額が控除の対象ともなりますので、年末対策としてもご利用が出来ますが、ご検討をされる方は、手続きはお早めにお願い致します。(最高84万円)
※掛金は個人が負担し、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。
給付として受け取るときにも、一時払い、分割払い、また条件を満たせば一時払いと分割払いの併用を選択することも可能で、分割払いの場合は年金と同様の公的年金等控除の適用が受けられ、一時払いで受け取る場合には退職金と同様の控除が受けられます。
小規模企業共済に加入をした方がいい理由とは?
税法上個人事業主の場合には、まず個人事業主本人及び専従者給与取得者には退職金を支払えないこととなっております。では退職金はもらえないのでしょうか?そこで、この小規模企業共済に加入することで、退職金の経費計上と同等の効果を得ることが可能となります。(経費として損益計算の場所で引くのではなく、所得控除としてマイナスをするので税率を掛ける前に控除するため経費か所得控除かでマイナスする場所は異なりますが効果は同じです。)
今度は会社の場合です。会社の場合には支給をする退職金の経費計上が可能となりますが、退職金としての備えはいかがでしょうか?大抵の場合には支給をしたいが、会社にお金がない!というのが実情ではないでしょうか?そのために、毎年会社から貰う役員報酬の一部を退職金の備えとして積み立てるということです。しかし、単なる定期預金にしていても支払う税金は1円も減額されません。そこで小規模企業共済に加入をして毎年支払い税金を減らしながら将来の退職金の備えをしていくことになります。
退職金をもらう際の税金の優遇措置について
では、今度は退職金としてお金をもらう時の税金の計算についてご紹介をさせていただきます。
受給を受ける退職所得の計算について
〘退職所得の計算方法は〙
(収入金額-退職所得控除額※)×1/2※=退職所得金額
※勤続年数20年以下 ⇒40万円×勤続年数
勤続年数20年超 ⇒800万円+70万円×(勤続年数-20年)
※退職所得控除額
20年以下⇒【一年】あたり40万円控除
20年超 ⇒【一年】あたり70万円控除
※2分の1課税
退職所得と扱われることで退職所得控除額を差し引き、2分の1だけ課税され、そして他の所得と分離して税金の計算をするので、給与所得や事業所得などよりも有利となります。
なお、注意点としては、個人でも法人でも小規模企業共済加入した段階から退職所得控除の計算がスタートしますので個人事業開始や法人設立後10年後に小規模加入して15年加入で共済金をもらう際には、退職所得控除の計算期間は15年となってしまいます。会社経営者は、日常の業務に追われ、なかなか自身の将来設計が出来ていないようです。ですから、今から計画的にご自身の老後のことを積極的に考えていく必要があるのではないでしょうか?
なお、黒川会計の下記のサイトで退職金の受給受ける際の税金計算ができますので、お試しください。例えば年間50万円で20年掛けたとしたら、退職金の額欄には10,000,000として勤続年数欄には20と半角英数で入力をしてください。
加入の窓口について
中小企業基盤整備機構 050-5541-7171
平日9-17 土曜10-15
詳細は https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/index.html
今度は、求人を有利にする社員の退職金制度について
社員の退職に備えはありますか
社員が辞めると言うので慌てて退職金の工面したということはないでしょうか。将来の退職金を定期預金などで積立しても経費になりませんので、一般的には民間の生命保険で対応する会社が多いのでは。中小企業退職金共済(中退金)に加入すると毎月々の掛金の経費計上でき、将来の備えにも日々の掛金の支払で対応することが可能になります。
中小企業退職金共済(中退金)とは
中退共制度は、独立行政法人が営む公的な制度で、原則として全社員の加入が義務づけられています。
しかし、事業主や会社の役員(兼務役員は除く)は加入できません。(なので、事業主や役員は小規模企業共済に加入をします。)また、期間を定めて雇われている人、試用期間中の人、休職期間中の人、定年などで相当期間内に退職することが明らかな人などは加入する必要はありません。
なお、掛金は社員ごとに、各人の基本給に応じて決めることができます。そして、加入社員が退職したとき又は死亡したときに、加入社員本人又はその遺族に対して直接支払われます(どんな理由での退職の場合でも支給されるので、会社が代理で受け取ることは出来ません)。
中退共の加入できる要件とは
- 一般業種 社員300人以下又は資本金3億円以下
- 卸売業 社員1000人以下又は資本金1億円以下
- サービス業 社員100人以下又は資本金5,000万円以下
- 小売業 社員50人以下又は資本金5,000万円以下
ワンポイントアドバイス!
最近の求人募集に「退職金制度あり」といった募集をみなくなりました。逆に、この時代に社員の福利厚生の一環として会社で退職金制度を設けることで、有能な人材の確保となるかもしれません。また、退職金は退職所得として退職所得控除があるため、税金面でも有利です。(上記をご参照ください。)
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