12 November

災害が起きたら役員・従業員の税金はどうなる?救済策を確認しよう(1)

掲載日:2021年11月12日   
税務ニュース

近年、災害が増えています。夏から秋にかけて大雨や台風は、今や毎年恒例です。先日8日は、関東で直下型の大地震が起きました。思わぬ災害で会社や従業員の生活に支障が出たとき、給与や賞与などの税金はどうしたらいいのでしょうか。今回、会社の役員・従業員向けの救済策を解説します。

災害減免法による徴収の猶予及び還付

地震や台風といった災害に見舞われると、何かとお金が入用です。所得税や住民税を給料から天引きしてしまうと、その分自社の役員や従業員は生活の立て直しに困ってしまいます。そこで、災害減免法では、源泉所得税や復興特別所得税の徴収を先延ばしにしたり、天引き分を本人に戻したりすることを認めています。ただし、救済措置は一律ではありません。所得額や被害額によって、内容が変わります。なお、住民税にも同様の制度がありますが、地方自治体によって取扱いが異なります。

1.徴収の猶予と還付

所得がそれほど多くない役員や従業員については、源泉所得税や復興特別所得税の天引きを先延ばしにしたり、すでに引いてある税金を本人に戻したりできます。

ただし、次の3つの条件すべてに当てはまらなくてはなりません。

  • 災害で住宅や家財に損害を受けたこと(あくまでも自宅や生活に必要な家財に限られます。美術品や別荘は対象外です)
  • 損害額が住宅や家財の時価の1/2以上であること
  • 被災した年分の合計所得金額の見積額が1,000万円以下であること

還付や猶予の内容は次のようになります。

2.徴収の一部猶予

1は「年間の合計所得金額が1,000万円以下になりそう」かつ「被災の度合いが1/2以上」の人が対象です。ではそれ以外の人はダメなのかというと、そうではありません。「合計所得金額1,000万円超」または「被災額が1/2未満」でも、徴収猶予限度額の範囲内で源泉所得税や復興特別所得税の天引きを先延ばしにしてもらうことができます。

ただし、「雑損控除の適用が受けられそうである」ことが条件です。そのため、本人も「天引きを先延ばしにしてもらったからハイおしまい」ではなく、雑損控除を受ける準備をしなくてはなりません。

手続き

こういった猶予や還付の対象となる役員や従業員は、自分でも手続きをしなくてはなりません。次の書類を記入し、会社に提出します。

会社は預かった申請書を、それぞれの役員や従業員の住むエリアの税務署に提出しなくてはなりません。期限は対象とする給与や賞与の支払い日の前日です。また、徴収猶予や還付を受けた役員や従業員は年末調整の対象から外れます。自ら確定申告を行わなくてはならない旨を役員や従業員に伝えましょう。

所得税の負担を軽減

役員や従業員への救済措置は、徴収の猶予・還付だけではありません。納税負担そのものが軽くなる制度もあります。

災害減免法による所得税の軽減免除

災害減免法は、先ほどの徴収の猶予や還付以外にも、「納める所得税そのものを軽減する」という制度を設けています。災害が生じた年の所得合計額が1,000万円以下であり、かつ住宅や家財の被災額が時価の1/2以上であれば、所得額に応じて次のように所得税が減免または免除されます。

所得金額の合計額 軽減又は免除される所得税の額
500万円以下 所得税の額の全額
500万円を超え750万円以下 所得税の額の2分の1
750万円を超え1,000万円以下 所得税の額の4分の1

なお、住民税にもこのような取り扱いがありますが、地方自治体の条例に基づくため、自治体ごとに異なります。

雑損控除

雑損控除は、自然災害などで家財に損害があったときに一定額を所得額から差し引ける制度です。災害時の税務上の救済措置としてもっとも知られています。所得税・住民税の両方で適用されます。

雑損控除は所得額や損害の度合いに関係なく、誰もが受けられます。ただし、損失額のすべてを所得額から差し引けるわけではありません。次のいずれか多い方の金額となります。

差引損失額は単純に被災した金額を指すのではありません。がれきの撤去や修繕など、原状回復のためにかかった費用を含みます。損害保険から保険金が下りたのなら、その分は差し引かなくてはなりません。

まとめると、次のようになります。

なお、災害で損失を受けた額については、客観的な計算方法があります。次のウェブサイトをご確認下さい。

注意点

以上が主な救済措置ですが、注意点がいくつかあります。

1つ目は、確定申告です。災害減免法による徴収の猶予や還付、所得税の軽減免除、そして雑損控除のいずれにおいても確定申告が必要になります。特に災害減免法による徴収の猶予はうっかりするかもしれません。徴収の猶予や還付を受けると、年末調整での精算はしません。本人が確定申告で最終的な所得額と納税額を明確にしないといけないのです。

2つ目は制度の違いです。災害減免法は災害時しか使えませんが、雑損控除は盗難や横領、火事といった人災による被害でも使えます。ただし、詐欺や恐喝といった自己責任による被害については適用できません。

3つ目は軽減措置が選択適用である点です。「災害減免法による所得税の軽減免除」「雑損控除」は、どちらかしか使えません。

 

次回は、所得税や復興特別所得税を預かる会社側の救済措置について解説します。

ABOUT執筆者紹介

税理士 鈴木 まゆ子

 

税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。

 
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