子どもがお年玉をもらったら課税?贈与税のキホンを確認しよう
税務ニュース
正月になると、子どもが親や祖父母、親戚からお年玉をもらいます。このお年玉には税金がかかるのでしょうか。今回、身近なお年玉から贈与税の基本を見ていきます。
課税に年齢は関係ない
「小学生や中学生といった子どもなのだから、いくらお金をもらったところで非課税でしょ」と思いたいところです。しかし実は、課税に年齢は関係ありません。1歳でも財産を1億円相続したら、相続税がかかります。10歳でも1000万円稼いだら所得税と住民税を納めなくてはなりません。
ただ、「未成年に対して成人と同様に課税するのはかわいそうだ」と配慮する制度もあります。相続税の未成年者控除がその1つです。けれども残念ながら、他の税金にはこういった制度はありません。贈与税も、もらったのなら0歳でもかかります。これが原則です。
最初から贈与税がかからないもの
とはいえ、最初から贈与税がかからないものもあります。主に次のような贈与です。
扶養義務者が日常で渡す生活費と教育費
親や祖父母といった扶養義務者から日常生活の範囲内でもらう生活費や教育費は贈与税がかかりません。なお、ここでいう扶養義務者とは次のような人たちを言います。
- 配偶者
- 直系血族(親や祖父母、子や孫)
- 兄弟姉妹
- 三親等内の親族で、生計を一にする者
「生計を一にする」とは「一つのお財布で生活していること」、「扶養」とは「自分の力で生活するのが難しい家族の生活の経済的援助をすること」をいいます。ただし、これは「資力のない家族が生きるために必要な贈与」だから非課税なのです。教育費という名目でもらったお金を投資や趣味に充てたら、課税されます。
社会の礼儀として渡す贈答
お中元やお歳暮、入学や卒業などの祝い金、お見舞いや香典といった社会の礼儀として渡すお金や贈答品も、贈与税はかかりません。年始のお年玉や年末のクリスマスプレゼント、誕生日祝いなども、この範囲に入ります。そのため、親や祖父母からもらうお年玉に贈与税はかかりません。
ただし、条件があります。それは「常識の範囲内で『これくらいがふさわしい』と認められる金額」であることです。一般家庭のお年玉で1000万円をあげたら、さすがに常識の範囲とは言い難いものがあります。とはいえ、家庭によって年収や財産の状況は異なるので、一概には言えません。
非課税制度の対象となる贈与
政策的な意図から、多額の贈与を行っても非課税にする制度もあります。令和4年1月1日現在、次のようなものがあります。
- 教育資金の贈与税の非課税措置(1500万円まで非課税)
- 結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置(1000万円まで非課税)
- 住宅取得等資金の贈与税の非課税措置(住宅の種類により1000万円または500万円まで非課税)
- 居住用財産の配偶者への贈与(2000万円まで非課税)
このような制度を使えば、まとまって1000万円を贈与したとしても贈与税はかかりません。ただし、所得要件など、細かく条件が定められています。条件を守らない贈与は、やはり課税されてしまうのです。
この他にも贈与税がかからない財産があります。詳しくは下記のリンクを参照してください。
お年玉に贈与税がかかるときの計算は2つ
「お年玉の額が常識的に見て多すぎる」と判断されれば、贈与税がかかります。このときの計算パターンは次のいずれかです。なお、「20歳以上」は、令和4年4月1日以降、「18歳以上」となります。
1:暦年課税制度
暦年課税制度は、一般的な贈与に適用されます。「年間110万円以下は非課税」と言いますが、これは「1月1日から12月31日の間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかからない」という意味です。なお、この非課税の110万円のことを「基礎控除」といいます。
暦年課税制度では、贈与税の税額を次の式で計算します。
ただし、「財産をあげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)の関係」「受贈者の年齢」によって、税率と控除額が変わります。
【特例贈与財産】
受贈者が財産をもらう年の1月1日時点で20歳以上であり、かつ、贈与者の子や孫であるときに適用されます。税率と控除額は次の通りです。
【一般贈与財産】
特例贈与財産以外の贈与財産を言い、「伯父から贈与を受けた」「15歳が父からもらった」などが当てはまります。税率と控除額は次の通りです。
なお、「25歳の自分が父から150万円、伯父から100万円をもらった」というケースだと「150万円+100万円=260万円>110万円」なので贈与税がかかるのですが、計算が少し複雑になります。
2:相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、累計の贈与額2500万円まで非課税となる贈与税の制度のことです。ただし、無条件に使えるわけではありません。次のような縛りがあります。
- 最初に贈与する年の1月1日時点で、贈与者が60歳以上、受贈者が20歳以上であること
- 贈与者は受贈者の直系尊属であること(親や祖父母など)
- この制度を使いたい贈与につき「相続時精算課税選択届出書」を贈与税の申告書と一緒に出すこと
「一度この制度を選択した間柄での贈与は、ずっと相続時精算課税制度の対象となる」
「贈与をしたら毎年贈与税の申告書を期限内に提出しないといけない」
「期限後申告をした贈与や2500万円を超えた部分の贈与は一律20%で課税」
など、様々な注意点があります。使うときは慎重に検討しないといけません。
常識を超えた額のお年玉は要注意
お年玉には通常、贈与税はかかりません。多すぎるお年玉は課税対象となりますが、仮に多くても、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら非課税です。ただ、相続時精算課税制度を選択した間柄なら申告が必要となります。
面倒な手間と余計な出費を避けたいなら、常識的な金額がよさそうです。
ABOUT執筆者紹介
税理士 鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。
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