23 May

パススルー課税って何?任意組合の税務についてわかりやすく解説します!

掲載日:2022年05月23日   
税務ニュース

様々な投資商品がある中で、「任意組合」を活用したものが増えています。例えばですが、任意組合で賃貸不動産を所有し、そこから得られる収益を各組合員に分配して利益を得るようなもの(この場合は不動産小口化商品となります。)があります。

今回は、任意組合の税務について、ご説明します。

任意組合とは

任意組合とは、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを合意することにより成立する組合を言います(民法第667条)。任意組合は法人格を持たず、組合の財産は各組合員の共有となります。また、組合債務についても同様に、各組合員は、組合の債権者に対して損失分担の割合に応じた分割無限責任(弁済義務)を負います。

 

任意組合の税務

任意組合の組合自体は、納税義務者となりません。任意組合自体に課税されると、任意組合で課税された後の利益が組合員に分配され、その分配金に対してさらに所得税・法人税が課税されるという二重課税が発生してしまうためです。

そのため、任意組合の事業活動の損益は各組合員に帰属し、任意組合の財産債務は各組合員が直接所有しているものとされます。任意組合をスルーして組合員に課税されるため、「パススルー課税」と呼ばれています。

 

組合員である個人の税務

所得の種類

所得税は、所得の種類(事業所得、不動産所得、給与所得など)に応じて計算します。任意組合で得た利益は「分配金」や「配当金」のような名目で分配されるので、配当所得と思われがちですが、配当所得ではなく、任意組合が得た所得の種類となります。

例えばですが、任意組合が不動産賃貸で収益を得ている場合は、不動産所得となります。

所得の認識時期

所得税は暦年課税(1月から12月まで)となります。原則として、任意組合の計算期間に関わらず、1月から12月までの所得が申告対象となります。ただし、例外として、任意組合が組合事業の損益を毎年1回以上一定の時期に計算し、かつ、組合の損益確定後1年以内に分配している場合は、任意組合の計算期間に基づいて計算することができます。

実務的には、任意組合から分配金の計算書などが送られてくることが多いため、原則ではなく例外処理で損益を認識することがほとんどです。

租税回避防止規定

任意組合で損失が発生した場合、その損失は「なかったもの」とされます。従いまして、他の所得と損益通算することができません。損益通算ができないため、複数の任意組合の組合員になっている場合、任意組合ごとに、それぞれ別々の決算書を作成する必要があります。

相続税・贈与税

各組合員が、出資額等に応じた財産を直接所有していることになります。不動産投資の任意組合の場合は、任意組合が所有している土地・建物を相続税評価額で評価することになります。

 

組合員である法人の税務

法人税は、所得税と異なり、所得の種類に分ける必要がありませんので、法人が営んでいる事業に係る決算書にそのまま合算することになります。

計算期間は、個人と同様に、原則として、その法人の事業年度と対応する期間の損益が申告対象となりますが、例外として、一定の要件を満たしている場合は、任意組合の計算期間に応じた損益を合算することになります。租税回避防止規定は、所得税の場合とは異なります。任意組合の損失が積み上がり、累積の損失額が出資額を超えた場合に、その超えた部分が損金不算入となります。また、その組合事業が総合的に欠損とならない場合(最終的な利益が確約されている場合など)には、各事業年度に生じた組合損失は損金不算入となります。

 

まとめ

任意組合の税務と聞くと難しそうを感じるかもしれません。しかしながら、要点を押さえておけば、それほど抵抗感はなくなると思いますがいかがでしょうか。

  • パススルー課税となること
  • 所得区分は任意組合の所得の種類に合わせること(所得税)
  • 複数の任意組合の組合員になっている場合は、組合ごとに決算書を作成すること(所得税)
  • 損失の場合には、損失がなかったものとなるため損益通算ができないこと(所得税)
  • 損益の認識時点は、任意組合の計算期間に合わせることができること(所得税・法人税)
ABOUT執筆者紹介

代表社員税理士 筒井亮次

税理士法人 経世会

会計事務所勤務を経て大手税理士法人に入社。資産税、財務・税務デューデリジェンス業務を中心に従事。2011年4月に税理士法人 経世会に入社。2018年より現職。愛知県半田市・名古屋・東京の3拠点体制でお客様の幅広いニーズをカバーしている。スタッフ目線を大事にした業務改善・働き方改革を実行し、ワンチームで事務所拡大へ向けた挑戦を続けている。

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