居住用不動産の相続・譲渡に備える!過度な税負担を避けるための特例
税務ニュース
ご自身が居住されている不動産について、過度な税負担が生じないよう多くの特例が存在します。私が確定申告をした際、特例が受けられなかったケースがありましたので、ご紹介します。
事例
- 父が居住用不動産(土地・建物)所有、子は別のところに居住用不動産を所有
- 父が亡くなったとき、父・母が居住していた土地・建物を「子が相続」
- その後、母が介護施設に入るため、居住していた土地・建物を売却
➡売却した土地建物の所有者は子であり、自己が居住する土地建物ではないため、居住用不動産の譲渡所得の特例を受けることができませんでした。
解説
不動産を名義変更する場合、登記が必要になるため、登録免許税や司法書士への報酬等が生じます。また、相続以外で不動産を取得した場合、不動産取得税の負担が生じます。従って、何度も名義変更をしないようにする方が、登記費用等の負担が減るため、相続の際に先に次の世代が取得するケースもあります。今回は以下のようになりました。
① 父から相続した時点では、母が居住している不動産の売却予定がなかったので、登記費用等の負担を抑えようと考えた
② 父の相続で、相続税の負担が生じなかったため、小規模宅地等の減額特例を受ける必要がなかったため、父と母が居住していた土地・建物を子が相続しました。
しかしながら、結果として売却することになったため、譲渡益に対する3,000万円の特別控除が受けられず、約600万円の所得税・住民税の負担が増加し、手取額は大幅に減少する結果となりました。
このように、居住用不動産に対する税については、特例を受けられるか否かで数百万円単位で納税額が違ってきます。
所得税の特例と相続税の特例を再度確認し、ご自身の場合どうなるのか検討してみてはいかがでしょうか。
居住用不動産を譲渡した場合の特例(所得税)
- 3,000万円特別控除
- 低率分離課税
- 買替特例
特にご注意いただきたいのは、1の3,000万円特別控除です。譲渡所得(売却益)の金額から3,000万円控除できる制度で、3,000万円以上値上がりしていない限りは、こちらの特例を受けることで税負担がなくなります。また、適用要件もそれほど厳しくありません。売却を検討する際、まずはこちらの要件を満たしているかをご確認ください。
また、特例を複数まとめて適用することができないケースもありますので、ご注意ください(1・2と3は、いずれか選択適用など)。
居住用不動産を相続した場合の税金と特例(相続税)
特定居住用宅地等の小規模宅地の減額特例
被相続人が居住していた不動産を、相続後も相続人が居住し続けていた場合等に、土地の評価額を330㎡まで80%減額できる特例です。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(所得税)
相続により取得した被相続人居住用家屋またはその敷地等を、令和5年12月31日までの間に売却し、一定の要件に該当するときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる特例です。上記の居住用不動産を譲渡した場合の特例と同様、3,000万円の控除を受けられますが、適用要件は厳しくなっています。
なお、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定の事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合でも、一定の要件を満たせば特例を受けることができます。
事例のケースであれば、居住用不動産を父から母が相続し、母が亡くなってから、子が空き家特例を使って売却された方が、税負担が少なく済んだことになります。介護施設に入るための資金に充てるための売却でしたので、やむを得ない事情もありましたが、税負担が大きく変わります。ぜひとも特例をうまく活用し適用漏れがないようにご注意いただければと思います。
ABOUT執筆者紹介
代表社員税理士 筒井亮次
会計事務所勤務を経て大手税理士法人に入社。資産税、財務・税務デューデリジェンス業務を中心に従事。2011年4月に税理士法人 経世会に入社。2018年より現職。愛知県半田市・名古屋・東京の3拠点体制でお客様の幅広いニーズをカバーしている。スタッフ目線を大事にした業務改善・働き方改革を実行し、ワンチームで事務所拡大へ向けた挑戦を続けている。
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