01 August

「通達(つうたつ)」とはなにかをあらためて考える

掲載日:2023年08月01日   
税務ニュース

はじめに

我が国において「税」は国民の義務であり、法律の定めによることとされています。具体的には日本国憲法第30条に納税の義務が、第84条に租税は法律によることが定められております。また、税に関わる法律は「税法」と呼ばれ、税目ごとに例えば「所得税法」「法人税法」といった形で定められています。ただし法律での定めだけでは目的を十分に果たせるわけではないことも多くあります。そのため更に「施行令」「施行規則」といった形で法律の下により実効性を高めるための法令が設けられています。

通達(つうたつ)とは

上記で述べたように「税」は法令に定められているわけです。では税務調査対応中によく耳にする「通達(つうたつ)」とはなんなのでしょうか。上記では述べられていないように法令ではありません。税務上の「通達」とは国税庁長官または国税局長が、下部機関や職員に対して発する職務上の命令なのです。つまり国民に定められているルールではないのです。言い換えれば税務職員として守るべき解釈及びルールなのです。

通達に拘束力はない?

通達は税務職員を拘束するルールであり納税者を拘束するルールではありません。であれば納税者は通達を無視してもよいということでしょうか。定義・解釈としては正しいのですが、実務では間違いです。なぜなら、税務職員は通達を守らなければならず、税務職員に税務調査を受ける以上、(間接的には)納税者も通達に拘束されることになるからです。

税務調査の場において

理屈で言えば税務職員から「通達に書いてありますので」と否認の根拠を示された際に「それはあなたたちの解釈で法令ではないですよね」と突っぱねることはできるわけです。しかし税務職員にとって通達は上からのお達しなわけですから税務職員の裁量で通達に従わないという判断はできません。結果として調査の場においては税務職員としては通達を根拠に法解釈を主張してくるわけです。

役員退職給与を例に①

役員退職給与を例に確認してみましょう。法人税法上どのように定められているかというとまず法人税法第34条に「内国法人がその役員に対して支給する給与は損金の額に算入しない」とあり役員に対する給与はそもそも損金を認めないスタンスです。しかしかっこ書きで「退職給与で業績連動給与に該当しないものを除く」とあり、退職給与については認めるスタンスをとっています。

さらに第2項で「不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、損金の額に算入しない」と定めています。法人税法に記載されているものはここまでです。では、代表取締役社長を退任して取締役会長に就いた方に支給する役員退職給与は損金に算入されるでしょうか。

役員退職金を例に②

「代表取締役から退いた=退職をした」と解釈をするのであれば損金に算入されることになります。しかし実務上は登記と名刺を変えただけという状況も作り出せます。つまりいかようにも解釈がされる場合においては法人税法の規定だけでは「ケースバイケース」の状況を作り出すことになってしまうのです。

その結果として、こちらの税務職員は否認するが別の税務職員では認めるなどという事態を招いてしまうわけです。これでは税務における事務運営がぶれてしまいます。そこで「通達」を設けて統一した運営をはかっているわけです。具体的には「法人税法基本通達9-2-32」として「役員の分掌変更等の場合の退職給与」という通達が設けられており実務上の判断はこちらに基づくことになります。

最後に

今回は役員退職金を例に「通達(つうたつ)」について論じてきました。実務上、「税務上認められるかどうか」「いくらが妥当であるか」といった様々な場面で「通達(つうたつ)」に拠り所を求めることは多くあります。税法としての国のルールを理解するとともに税務職員のルールである通達を把握することで、人の話やネットでのコメントに頼るのではなく、普段の税務判断をより円滑なものとして行っていただければと思います。

ABOUT執筆者紹介

税理士 小嶋純一

税理士法人中山会計

大学卒業後、税理士法人中山会計にて代表社員税理士社長を務める。相談しやすさNo.1を体現する税理士として、自社の経営の実践並びにお客様の経営サポートを兼務。M&Aスペシャリスト及びM&Aシニアエキスパートの資格を有し、事業承継の出口をサポートするコンサルティングを20年来推進。保険会社・銀行・商工会議所・各士業等とのタイアップによるセミナーなど全国で多数講演。身近な相談窓口として活動中。

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