09 August

NFTアートと税金[第3回]デジタルコンテンツを制作した場合の会計処理方法について考える。

掲載日:2023年08月09日   
税務ニュース

これまで第1回第2回では、NFTの概要や税金の取扱いについて解説しました。第3回では、 NFTに紐づけられるデジタルコンテンツを制作した場合の会計処理方法について取り上げます。

実は日本では、デジタルコンテンツ制作費の会計処理方法について、明確な会計ルールがありません。そのため、既存の会計基準や実務慣行を考慮しながら、適切な会計処理方法を検討する必要があるのです。

デジタルコンテンツの多様な会計処理方法

NFT(Non-Fungible-Token:非代替性トークン)とは、ブロックチェーン上で発行されるトークンの一種で、デジタルアート作品などのデジタルコンテンツに紐づけることで、コピーが容易なデジタルデータの唯一性を保証することができるものです。このデジタルコンテンツをコンテンツ制作会社等の法人が制作した場合、どのように会計処理したらよいのでしょうか?

一般的に、「動画・静止画・音声・文字・プログラムなどによって構成され、あらゆる流通メディアで提供される“情報の中身”」と説明されることが多いデジタルコンテンツですが、有価証券報告書をみてみると、その制作費について多様な会計処理方法の存在を確認することができます。

たとえば、ソフトウェアとして計上する方法、番組勘定や映像コンテンツなどとして流動資産に計上する方法、コンテンツ資産などとして無形固定資産に計上する方法、研究開発費として即時費用化する方法など多岐にわたっています。

明確な会計ルールが整備されていない

その理由の一つとして、デジタルコンテンツに関する会計ルールが、日本ではいまだ未整備であることを指摘できます。

日本の会計基準や実務指針では、たとえば以下のように記載されています。

  •  ソフトウェアとコンテンツは別個の経済価値として把握可能であるため、原則として、両者を「別個のもの」として会計処理する。
  • ソフトウェアとコンテンツが経済的・機能的に一体不可分と認められる場合には、両者を一体として取り扱ってもよい。
  • ソフトウェアとコンテンツを明確に区別できない場合、その主要な性格により、どちらかに「みなして」会計処理する。

ここで、ソフトウェアとコンテンツを「別個のもの」として捉えた場合や、主要な性格がコンテンツであると「みなした」場合、デジタルコンテンツに適用できる会計ルールがありません(図表1)。そのため、関連ビジネスの実務慣行を勘案して、会計処理方法を検討することになるのです。

〈図表1 ソフトウェアとコンテンツに適用される会計ルール〉

  原則:別々に処理 ソフトウェアとコンテンツが一体不可分の場合
ソフトウェア コンテンツ 両者を一体として取扱う(その主要な性格により、どちらかにみなして会計処理する)
ソフトウェアとみなす場合 コンテンツとみなす場合
適用される基準等 研究開発費等に係る会計基準 基準等が未整備(※1) 研究開発費等に係る会計基準 基準等が未整備(※1)
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針 研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針

※1 コンテンツの会計処理方法については、日本公認会計士協会(JICPA)から公表された「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」において、「その性格に応じて関連する会計処理慣行に準じて処理すべき」との記述がなされています。

(出所)筆者作成。

 

海外ではどうしているの?

一方で、デジタルコンテンツは、インターネットを利用して世界市場への展開がしやすいなどの特徴があります。そのため比較可能性の観点から、諸外国の会計ルールも参考になります。

諸外国では、会計上、デジタルコンテンツをどのように取り扱っているのでしょうか?例えば、国際会計基準や米国会計基準では、ウェブサイト制作費や映画制作費などを資産として計上することが義務付けられています(図表2)。企業間の比較可能性を高めることを意識しつつ、財務諸表を通じて、デジタル資産や目に見えない資産を積極的に情報開示しようとする姿勢がみられるのです。

〈図表2 デジタルコンテンツに関係する会計ルールの国際比較〉

  日本会計基準 米国会計基準 国際会計基準
会計基準 研究開発費等に係る会計基準 FASB-ASC730ほか※1 IAS38※2
会計処理方法 すべて発生時の費用として処理する。 すべて発生時の費用として処理する。 無形資産の定義と認識基準を満たし、さらに一定の要件(6要件)をすべて満たす場合に、資産計上しなければならない。
将来の収益との対応が確実なソフトウェアは資産計上する。 内部利用のソフトウェア・ダイレクトレスポンス広告・映画制作費等は例外的に資産計上する。
他に実務指針の取扱い(図表1参照)がある。

※1 米国財務会計基準審議会(FASB:Financial Accounting Standards Board)による会計基準のコード化体系(ASC:Accounting Standards Codification)。
※2 国際会計基準(IAS:International Accounting Standard)第38号「無形資産(Intangible Assets)」。

(出所)筆者作成

 

日本でも、「日本の会計基準や実務指針は、現行の実務に見合ったものになっていない」などの問題提起がされています。2022年、日本公認会計士協会(JICPA)は、 SaaSなどのクラウドサービスにおけるソフトウェアや、ゲームコンテンツ制作費などのDX環境下におけるソフトウェア関連取引に関する会計処理方法について、調査結果や現時点における考えをとりまとめた研究資料を公表しました。今後、日本でもデジタルコンテンツに関する会計ルールの整備が行われるかもしれません。

既存の会計ルールや実務慣行などを駆使して判断

本コラムでは、NFTに紐づけられるデジタルコンテンツを制作する際の会計処理方法について解説しました。

現在、日本では、デジタルコンテンツを想定した会計ルールが整備されていないため、既存の会計ルールや関連ビジネスの実務慣行などを勘案しながら、適切な会計処理方法を選択する必要があります。

また、税務上認められている特殊な取扱いもあります。業界のビジネス慣行に精通した専門家に相談しながら、会計処理方法を検討するとよいでしょう。

(免責事項)本コラムの内容は、投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令等に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように、原則的な取扱いを簡略化して説明しています。本コラムの情報に基づいて実務や判断を行う場合には、専門家・税務署に相談、または十分に内容を検討のうえ実行してください。本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。なお、当事務所では本コラムに関する個別のご質問は受け付けておりません。予めご了承ください。
ABOUT執筆者紹介

税理士 武田紀仁

たけだ税理士事務所

クリエイターとスモールビジネスを支える税理士。クリエイティブ産業で活動する中小法人や、漫画家・イラストレーター・デザイナー・ものづくり作家などの個人事業主(フリーランス)を対象とした税務・会計・経営アドバイザリーサービスを得意とする。また、自身のもう一つのライフワークとして、文化芸術領域の会計と情報開示についての研究活動も行っている。

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