24 April

個人事業主の年間納税スケジュールと納税対策

掲載日:2024年04月24日   
税務ニュース


はじめに

フリーランスで生活するならば、当然本業に力を入れたいわけですが、自分一人あるいは少人数で経営している場合には、なかなか理想通りには行かないものです。特に資金繰りは、事業の成長・存続のみならず自身の生活にも大きな影響を及ぼすもので、実は本業と同じくらい重要となります。
そこで、本稿では、資金繰りのうちでも特に煩わしい納税スケジュールについてまとめて見たいと思います。

年間スケジュール

図1

1月 2月 3月 4月 5月 6月
住民税(第4期)

源泉所得税納期特例

固定資産税(第4期)

 

所得税
消費税                  

 

  自動車税
軽自動車税                  

 

住民税(第1期)
固定資産税(第1期)
住民税特徴納期特例
7月 8月 9月 10月 11月 12月
所得税予納(第1期

源泉所得税納期特例

住民税(第2期)
事業税(第1期)
固定資産税(第2期) 住民税(第3期) 事業税(第2期)
所得税予納(第2期)
固定資産税(第3期)

住民税特徴納期特例

図1をご覧下さい。どんな税金を負担するかは、事業の状況により色々ありますが、多くの事業主が納付することになる税目を一覧にしてみました。自治体によって納期限が異なるものもあるので、正確なところはご自身で確認して頂く必要があります。具体的には、所得税、消費税、源泉所得税以外は、納付書または通知書が届くので、そこに記載されている納付期限を確認して下さい。

必要経費となる税金、ならない税金

時折見かける誤りに、どれもこれも必要経費に計上するというものがあります。しかし、税金には必要経費になるものとならないものがあります。まとめると次の通りです。

必要経費となる:固定資産税、(軽)自動車税、事業税、消費税(税込経理)
必要経費とならない:所得税、住民税、源泉所得税、住民税特別徴収、消費税(税抜経理)

必要経費になる・ならないの取扱いを間違えると、損をすることになるので要注意です。例えば、事業税が必要経費になるのを知らない方は案外に多く、また逆に、住民税を必要経費に計上してしまい過少申告となっているケースも散見されます。

既に複雑と感じている方もいらっしゃるでしょうが、本丸は消費税です。上のまとめでも必要経費になる・ならないの両方に登場しています。しかし、これだけでは不十分で、実際には次の通りです。

税込経理方式のケース

納付した:必要経費(租税公課)
還付を受けた:収入(雑収入)

税抜経理方式のケース

納付した:つぎのどれか{必要経費、収入、どちらでもない}
還付を受けた:つぎのどれか{必要経費、収入、どちらでもない}

インボイス制度がスタートして、消費税を初めて申告した方が沢山いらっしゃいます。あるいは、取引先からの求めで小規模経営ながらインボイスに登録することとなる方もまだまだ増えるでしょう。そういった方々には、是非税込経理方式をお勧めします。税金を納付したのに収入が生じるなんて、直感的には悪夢以外の何物でもないです。

業績アップで増加する税金

所得税、住民税、事業税、消費税

次に説明する注意点とその対策の前提知識ですので、確認して下さい。

注意点

業績が上がると税金が増えると言うのは、多くの事業主が知っています。しかし、本当に注意すべきは、収入のタイミングと納税のタイミングにはギャップがあるということです。特に、今まで免除されていた税金が課税され始める場合には、資金ショートの危険があります。特に税負担を重く感じるケースを紹介します。

① 消費税の課税事業者になる

図2

図2をご覧下さい。「売上が1,000万円を超えると翌々年から課税事業者になる」という理解は正しいですが、課税事業者となったx3年には消費税の納付はまだ生じません。今まで納付の無かった事業者が、x4年3月31日にx3年分の消費税を一括で納付することになるので、負担感は非常に大きくなります。

② 事業税の発生

事業税=(青色申告特別控除前の事業所得-290万)x5%

事業税の計算はこのようになっていますので、事業が軌道に乗った頃に急に納付書が送られて来る印象があります。特に、申告した覚えもないのに8月に納付書が届いて、8月中に半分払えと言われますので、まさに寝耳に水となりがちです。

③ 住民税・事業税のタイムラグ

所得に対して課される税金は、「昨年の所得で計算して今年払う」ことになります。従って、収入が減少している場面では、高収入ベースで計算した税金を減少した収入から払うので、負担感が大きくなります。特に、6月や8月には、高収入であった昨年の勢いは無くなっていることにも注意が必要です。

結びにかえて~納税対策~

納税対策などと言っても、要するにお金を残しておくこと以外にはありません。そうしますと、収入に全く手を付けない様なことはできないので、どの税金を、どのタイミングで、どれだけ納付しなければならないかについて計算し、当年の自身の収入を出来るだけ正確に予想することが必要となります。
すなわち、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」です。税理士は顧問先に対して、確定申告で所得税や消費税の計算をする以外に、図1のような表に金額まで記入して一年間の納税予定表をお渡しすることも多いです。そのくらい、経営規模の大小に関わらず納税計画が資金繰りにおいて重要な地位を占めていると言うことです。

なお、消費税については、自主的に納税を分割前倒しすることが出来ますので、課税事業者となった暁には検討してみてください。当然、払い過ぎれば還ってきます。

ABOUT執筆者紹介

税理士 柳下治人

柳下治人税理士事務所
X(旧Twitter)

1978年埼玉県生まれ
明治学院大学経済学部 卒業
日本大学大学院経済学研究科修士課程 修了
税理士事務所勤務を経て柳下治人税理士事務所を設立

中小企業の経理、税務、経営のサポートやセミナー講師を手がけている。また、外国籍経営者やギグワーカーとも深く関わりを持ち、YouTubeにて「yagishitax税理士チャンネル」を運営し、UberEatsなどの配達員に必要な経理、申告のHowTo動画など税金にまつわる情報を公開している。

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