収益事業課税とは?NPOに対する課税の仕組みを解説
税務ニュース
NPO法人に対して法人税がどのように課税されるのかは誤解も多く、分かりにくい部分です。例えば、一切課税されない、利益が出る事業に対しては課税されるといったような誤った認識を見聞きすることも少なくありません。そのため、本来は確定申告が必要であるにも関わらず申告をしていなかった例や、法人税が課税されない事業も含めて申告をしていたという例もあります。
今回は、NPO法人に対しての課税の仕組みについて解説します。
NPO法人への課税の考え方
NPO法人の法人税の納税義務は株式会社などの普通法人と異なり、法人税法上の収益事業に対してのみ課税されます。収益事業とは、①限定列挙された34業種であること、②継続して行われるものであること、③事業場を設けて行われるものであること、の3つの要件を満たすものです。つまり、34業種に該当する収益があったとしても、それが単発のイベント等であり継続しないものであれば収益事業には該当しないということです。
この背景にあるのは、イコールフッティング論といわれるものであり、これは営利法人と競合する事業については競争条件の公平等を図るべきという考え方です。そのため、営利企業と競合が見込まれる34業種に限定して課税対象としています。この課税対象となる34業種は次のとおりです。
続いて、継続して行われるもの及び事業場を設けて行われるものという要件があるのは、営利企業と競合する規模の事業に対してのみ課税するという趣旨です。例えば34業種に該当するものであっても、単発のイベントで実施されるようなものは営利企業の競合とは成り得ないと考えられ課税の対象とはなりません。
継続して行われるという定義は、基本的には事業年度の全期間を通じて行われるものと解釈されています。ただ、海水浴場で営業する飲食店やスキー場での物品販売など年間を通じて行われないものであっても、それが毎年定期的に行われるものであれば継続要件に該当すると考えられています。
課税対象になるかの具体例
NPO法人が行う事業が収益事業に該当するかの判断でポイントとなるのは34業種に該当するかどうかです。限定列挙されている業種名のみでは判断基準が曖昧な部分もあるため、実際には通達なども含めて判断することとなります。
例えば技芸教授業は知識や技能を教える教室の運営やセミナーや講演などが該当しますが、法令上で洋裁・手芸・料理・写真・自動車等の操縦など一定の内容に限定されています。そのため、カメラ教室を実施する場合は課税対象となり、パソコン教室は課税されないといった不均衡が生じるといった問題点も存在します。この他にも課税対象とならないものは語学教室やスポーツ教室、一般教養の講座などが考えられます。
また、請負業については民法上の請負に限らず事務処理の委託も含まれることとなります。この事務処理の委託には調査研究や検査業務なども含まれると解釈されています。そのため、NPO法人がシンクタンクなどから委託を受けて調査研究事業を行う場合などは収益事業に該当します。また、自治体などから公共施設の管理運営の委託を受けるような場合も収益事業に該当します。
地方税の注意点
地方税の申告については、基本的には法人税の納税義務があれば法人住民税の均等割を含めて地方税の納税義務も生じます。しかし、自治体によっては収益事業を行っているNPO法人に対しても納税義務を免除している場合もあります。また、収益事業を行わないNPO法人に対して均等割の免除をしている自治体もありますし、この場合でも均等割の納税が必要となる自治体もあります。
このように、地方税の取り扱いは該当する自治体の条例によって運用が異なるため、各自治体の取り扱いを確認するようにしてください。
まとめ
NPO法人の納税義務は収益事業課税であり、正しく判断するには一定の知識が必要となります。まずは、NPO法人に対する課税の仕組みを理解し、必要に応じて税務署や税理士に相談することが望ましいでしょう。
ABOUT執筆者紹介
税理士
1級ファイナンシャルプランニング技能士
金子尚弘
名古屋市内の会計事務所勤務を経て2018年に独立開業。NPOなどの非営利組織やソーシャルビジネスを行う事業者へも積極的に関与している。また、クラウドツールを活用した業務効率化のコンサルティングも行っている。節税よりもキャッシュの安定化を重視し、過度な節税提案ではなく、資金繰りを安定させる目線でのアドバイスに力を入れている。ブログやSNSでの情報発信のほか、中日新聞、日経WOMAN、テレビ朝日(AbemaPrime)などで取材、コメント提供の実績がある。
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