【2022年年末調整】年末調整と確定申告、両方やるのはどんな人?
税務ニュース
会社員の多くは年末調整で完結します。しかし、人によっては確定申告も行わなくてはなりません。どのようなときでしょうか。年末調整と確定申告の違いを確認しつつ、両方やるパターンを見ていきましょう。
年末調整と確定申告はどう違うのか
そもそも、年末調整と確定申告はどう違うのでしょうか。最初に確認しましょう。
年末調整
年末調整は、「給与から天引きした所得税の精算手続き」です。給与や賞与からは、所得税が天引き(源泉徴収)されています。この源泉所得税は、本来かかる税額よりやや多めに設定されています。また、生命保険料控除や地震保険料控除などは考慮されていません。
このため、年末に1年間の正しい課税所得額を計算し、天引きした所得税と精算する手続きをします。この手続きが年末調整です。
確定申告
確定申告は、1年間のすべての所得額、控除額から正しい所得税の額を計算し、申告する手続きです。通常、翌年3月15日が期限となっています。このとき、年末調整と同じく、源泉徴収された所得税や先払いした所得税と本来納めるべき税金の差額を精算します。多く納め過ぎていたら還付され、少なすぎれば納税します。
まとめると、次のようになります。
年末調整 | 確定申告 |
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年末調整でやること、やらないこと
年末調整の後に確定申告をするのはなぜでしょうか。その理由は「年末調整では申告できない所得や控除があるから」です。
年末調整では申告できない所得とは
年末調整は、給与所得のみが対象です。それ以外の所得は扱いません。給与所得以外の所得があるのなら、原則、確定申告をすることになります。また、複数の会社から給与をもらっているときも基本的に確定申告が必要です。
この他、給与所得のみであっても、年末調整の対象にならない人は確定申告が必要です。「給与年収2000万円超の人」「災害減免法の源泉徴収の猶予を受けている人」などが当てはまります。
年末調整できない控除とは
年末調整では、役員や従業員から申告された控除を含めて1年間の税額を計算します。ただし、年末調整で扱う控除は、所得税法に定める控除のうちの一部に過ぎません。
ここで確定申告書の第一表を見てみましょう。年末調整で扱うのは、黄色の部分だけとなります。
雑損控除、医療費控除、寄附金控除は、年末調整では扱えません。この他、税額控除も2年目以降の住宅借入金等特別控除のみとなります。年末調整で扱わない控除は、確定申告が必要です。
年末調整をしても確定申告が必要なケース
年末調整後に確定申告が必要となるのは、主に次のケースです。
ふるさと納税でワンストップ特例をしない、できない
給与所得者や年金生活者の多くは、ワンストップ特例を使えば確定申告せずに済みます。翌年6月以降の住民税から、寄附した分から2000円を引いた額が控除されるからです。
ただし、ワンストップ特例は「特例申請書を自治体に送ればできる」とは限りません。次の場合、確定申告をしないと寄附金控除や寄附金税額控除が受けられなくなります。
- ワンストップ特例の手続き後に引っ越しをした後、特に何もしていない
- 寄附した先が6自治体以上になった
- 医療費控除や副業などの事情で確定申告をすることになった
10万円超の医療費のある人
1年間の医療費の額が「10万円」「総所得金額等×5%」のいずれか低い方の金額を超えると、医療費控除が受けられます。この医療費控除は、確定申告をしないとできません。
災害で自宅や家財にダメージを受けた人
災害で自宅や家財に損害が生じると、雑損控除の対象になることがあります。この雑損控除も、確定申告しないと受けられません。
住宅ローン控除1年目の人
住宅借入金等特別控除、いわゆる「住宅ローン控除」は、年末調整でできる___このように記憶しているかと思います。しかし1年目だけは別です。確定申告が必要となります。控除対象となるローンや自宅が条件に合っているかどうかの確認を、税務署側で行うからです。
副業の所得が20万円を超える人
現役世代の正社員なら、副業をしている人もいるでしょう。副業の所得合計が20万円を超えたら確定申告が必要となります。給与所得以外の所得合計が20万円を超えたら申告しないといけないからです。また、給与所得のみであっても、年末調整されなかった給与所得の合計が20万円超の人も確定申告をすることになります(例外あり)。
なお、このルールは所得税だけの話です。住民税は、すべて申告しなくてはなりません。
特定口座の株式運用益で節税したい人
源泉徴収アリの特定口座は通常、確定申告がいりません。しかし次のケースでは、確定申告が必要です。
- 課税所得金額が900万円以下の人が多額の配当所得の課税を節税したい
- 複数の口座で株式を運用し、別々の口座で生じた損失と利益を相殺して還付を受けたい
家賃収入などを青色申告している人
不動産所得や事業所得で青色申告をしている人は、確定申告が必要です。特に65万円控除を受ける場合、期限内に申告しないと10万円控除になってしまいます。
年末調整で提出し忘れた控除のある人
年末調整で控除もれがあった場合、本来なら年末調整のやりなおしが必要です。ただし、会社経理の事情で受けつけてもらえなかった場合、自分で確定申告をすることになります。
年末調整後の確定申告の注意点
年末調整後の確定申告では次の点に注意しましょう。
給与所得の源泉徴収票は添付不要だが作成には必要
給与所得の源泉徴収票は2019年4月1日以降、確定申告書などへの添付が不要となりました。ただし、申告書の作成には必要です。廃棄しないよう注意しましょう。
一部の確定申告はスマホ申告できない
給与所得者や年金生活者だと、手軽なスマホ申告ができます。ただし、賃貸業や個人事業主としての事業をしていると、スマホ申告はできません。不動産所得や事業所得は、スマホ申告の対象外だからです。
ABOUT執筆者紹介
税理士 鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。