<連載>副業をはじめよう!【第3回】副業と確定申告を初心者向けに徹底解説!
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近年、副業を解禁する企業も増え、また副業をきっかけに新たなキャリアを描こうとする方も増加傾向にあります。副業で収入を得たら必ず関係してくるお金のコト。今回は副業の確定申告を中心に詳しく解説していきます。
副業の確定申告について初心者向けに徹底解説!
確定申告とは1年間(1月1日から12月31日まで)に所得がある方が、所得税と復興所得特別所得税の金額を申告して納税する制度です。もし、納めすぎた所得税等がある場合は還付申告を行うことで、お金が戻ってきます。本業での勤務のみの会社員は年末調整があるので、基本的には確定申告が不要です。
しかし、会社員で副業を始めたら本業の会社で年末調整をしていても別で確定申告が必要になることがあります。
副業での収入はいくらから確定申告が必要か
副業での収入があれば、下記の場合に確定申告が必要になります。
②副業が雑所得や事業所得に該当:年間の所得が20万円を超えた場合
副業での収入があるが確定申告が不要な場合とは?
上記の説明の裏返しになりますが、以下の場合には、確定申告は不要です。
②副業が雑所得や事業所得に該当:副業の年間所得が20万円以下の場合
※本業の会社で年末調整が完了している必要があります。
※所得が20万円以下の場合に、確定申告をして問題になることはありません。
確定申告が不要の場合でも、住民税の申告は別の話
所得税の確定申告が不要となった場合でも、住民税の申告は別途、必要となります。ご注意ください。
収入と所得の違いをおさえよう
ここで重要なことは収入と所得という言葉の意味の違いです。
個人で事業をして行く上では、必ず理解が必要となる言葉です。
収入とは、いわゆる「売上金額」や、入ってくるお金のことを指します。例えば、会社員で給与を受け取る方は、「手取り額」ではなく、額面=源泉徴収税額や特別徴収税額や社会保険料などを天引き前の額となります。
所得金額とは、収入から必要経費を差し引いたものです。
所得金額 = 収入 - 必要経費
事例をみてみましょう。
事例1:Aさんはライティングを業務委託で行っています。
年間の売り上げ:300万円 費用:100万円 とします。
→収入は売上の300万円です。
→所得は200万円です。
売上から費用を引いたものが「所得」になりますので、300万円から100万円を引くと200万円になります。
事例2:雇用形態がパートアルバイトの場合で、額面24万円で、控除(社会保険や源泉所得税)6万円を差し引き、18万円が銀行に振り込まれているとします。
給与額の収入とは給与の額面(源泉所得税などの天引き前)を指
→収入は額面の24万円です。
副業が給与所得の場合はパートアルバイトとして企業に雇用されていますので副業を行う際に必要な物や道具、機材は基本的には会社が用意してくれます。一方、雑所得や事業所得の場合は、業務を請け負っていますので、そのために必要な道具や機材は基本的には自分で調達をすることになります。
そのため確定申告では、事業所得や雑所得の場合は収入から費用を引いた残りの「所得」を基準に確定申告の必要有無を判定します。
確定申告しないとどうなるのか
確定申告が必要なのに、確定申告をしていないことが後から発覚した場合に、税金を払うことになることもあります。また、併せて追加のペナルティ(無申告加算税や延滞税等)が課されることもあります。
副業の報酬を現金でうけとれば、確定申告は不要なんていう方が稀にいらっしゃいますが、副業をする方へ払った給与や報酬は、依頼者側から国に報告をする書類を毎年提出する制度があります。そのため、税務署は、副業をした本人が確定申告する以外にも、副業収入があったことを把握する手段を持っています。
副業収入の申告の方法:雑所得と事業所得の違い
副業の確定申告の大きな論点は、雑所得と事業所得のどちらの所得区分で申告を行うかということです。
雑所得は青色申告ができないため、白色申告しか出来ません。白色申告よりも、青色申告の方が青色申告特別控除(最大65万円)もとることができ、経費として計上できるものが多く、節税効果は大きいです。「雑所得」よりも「事業所得」の方が節税がしやすいという大きなメリットがあります。
しかし、なんでもかんでも事業所得にできるわけではありません。事業所得と雑所得の大きな違いは、「その収入は事業から得られた収入なのか、否か」ということです。事業的規模であるかどうかや独立・反復継続して行われる仕事であるのかという点で総合的に判断されます。
令和4年度の所得税基本通達の改正で、記帳・帳簿保存があれば、概ね、事業所得となるとされましたが、上記を踏まえた上で、ご自身で事業所得か雑所得のどちらで申告をするか判断をする必要があります。
確定申告に向けた1年間の流れ
確定申告の進め方は?
1.1月から12月まで: 取引の記録をつける
1年間の収入や支出を帳簿にきちんと記入します。クラウド会計などの会計ソフトを利用すると、通帳やクレジットカードのデータが自動で取り込め、日付や取引内容を選び、金額を入れるだけで簡単に記録ができます。
支出は、適切な勘定科目に分けて記入します。売上から必要経費を差し引いてと、「所得」が計算されます。
2.年末から翌年2月: 確定申告の必要資料を用意
用意する書類(共通)
- 本業の会社から発行される源泉徴収票(12月末~1月頃発行されます)
- マイナンバーがわかる書類
- 本人確認書類(運転免許証・健康保険証・パスポート)
- 所得控除や税額控除の適用を証明できるもの(医療費や住宅ローン控除やふるさと納税等の書類)
- 所得税及び復興特別所得税の確定申告書
3.2月から3月: 確定申告書を作成
申告書(第一表・第二表)
特別な申告書: 申告書 第三表、申告書 第四表
4.3月15日までに所在地の税務署へ提出
提出方法は、郵送、e-Tax、税務署へ持ち込む方法があります。
どの提出方法の場合でも、控えを保管するのを忘れないようにしましょう。
確定申告する時の注意点
節税ポイントは、控除できるもの、つまり「所得控除」と「税額控除」を逃さないことです。
所得控除
所得控除とは、所得税額を計算する際、所得から一定の金額を差し引くことです。
所得控除は、医療費控除や社会保険料控除、生命保険料控除等の全部で15種類あります。
所得控除の名称 | 控除対象 | 控除内容 | 控除金額 |
---|---|---|---|
1 | 社会保険料控除 | 納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合に受けられる控除 | その年に支払った保険料の全額 |
2 | 小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済、確定拠出年金などの掛金を支払った場合に受けられる控除 | その年に支払った掛金の全額 |
3 | 生命保険料控除 | 生命保険料や個人年金保険料や介護保険料を支払った場合に受けられる控除 | 一定の金額 |
4 | 地震保険料控除 | 地震保険料、損害保険料を保険契約を基に支払った場合に受けられる控除 | 一定の金額 |
5 | 寡婦控除 | 女性の納税者が所得税法上の寡婦に当てはまる場合に受けられる控除 | 27万円 |
6 | ひとり親控除 | 納税者がひとり親であるときに受けられる控除 | 35万円 |
7 | 勤労学生控除 | 給与所得等があり、納税者自身が勤労学生である場合に受けられる控除 | 27万円 |
8 | 障害者控除 | 納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に受けられる控除 | 最大75万円 |
9 | 配偶者控除 | 収入が一定以下の配偶者がいる場合に受けられる控除 | 38万円 |
10 | 配偶者特別控除 | 収入が一定以下の配偶者がいる場合(配偶者控除を受けていない配偶者で一定要件に該当する場合)に受けられる控除 | 最大38万円 |
11 | 扶養控除 | 扶納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に受けられる控除 | 38万円 |
12 | 基礎控除 | 合計所得金額2,500万円以下の場合に受けられる控除 | 最大48万円 |
13 | 寄附金控除 | ふるさと納税などを行った場合に受けられる控除 | 一定の金額 |
14 | 医療費控除 | 自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときに受けられる控除 | 一定の金額 |
15 | 雑損控除 | 災害または盗難もしくは横領によって、下記の「雑損控除の対象になる資産の要件」にあてはまる資産について損害を受けた場合等に受けられる控除 | 一定の金額 |
税額控除
税額控除とは、所得控除を差し引き計算した税額から、さらに直接控除できるものです。税額控除の代表例は以下の通りです。
住宅借入金等特別控除 (住宅ローン控除) |
住宅ローン控除とは、個人が住宅ローンを利用してマイホームの新築・取得・増改築などを行ったときに、年末時点の住宅ローン残高を基準に計算された金額を原則として所得税から控除する制度です。正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。 |
---|---|
配当控除 | 「総合課税」で申告を行う場合に、一定の方法で計算した金額の税額控除を受けることができる。 |
外国税額控除 | 国際的に二重課税を調整する目的で、日本国内に居住地を置く人が外国所得税の納付を行った場合に一定の範囲で税額から控除する仕組みのことです。 |
まとめ
副業を行う方は、確定申告が必要となる場合があります。確定申告を行うには、言い換えると、自分で日々の売上や経費を記録し、申告書を作成し、自分で税金を計算し、納付をする手続きが必要となります。
確定申告は原則、翌年の2月16日~3月15日に行います。
期限通りに手続きができるように、事前に準備をしておきましょう。
ABOUT執筆者紹介
税理士 吉村知子
ビジネス拡大のため、開業してから法人化を目指す個人事業主や法人のための税理士として、ともにビジネスの飛躍を目指す経営のサポートを行う。また、法人や個人事業主の顧問契約だけでなく、個人事業主向けの講座を開講。確定申告をゴールとしながら、経営者として必要となるお金の知識を学ぶオンラインプログラムが大好評。
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