15 April

改正育児介護休業法がいよいよ施行!2022年4月から会社に求められることは?

掲載日:2022年04月15日   
社会保険ワンポイントコラム

働き方改革の一環として改正された育児介護休業法が、今年4月から順次施行されます。

国の調査によれば、約5割の女性が出産・育児を機に退職しており、「仕事と育児の両立が難しかったから」が退職理由の約4割を占めています。また、夫の家事・育児時間が長いほど、妻の就業継続に繋がり、第2子以降の出生割合も高いとの結果も出ています。このように、育児と仕事の両立支援は、少子化の進む日本では重要な経営戦略の1つになりつつあります。まずは4月施行の内容をしっかりと押さえましょう。

妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別周知・意向確認

まず、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対して、以下の措置が義務化されます。

1. 育児休業制度に関する以下の事項を個別に伝えること 

  • 育児休業・産後パパ育休に関する制度
  • 育児休業・産後パパ育休取得の申し出先
  • 育児休業給付に関すること
  • 育児休業・産後パパ育休取得期間の社会保険料の取り扱い

2. 育児休業取得の意向を個別に確認すること
※産後パパ育休については、2022年10月1日から対象

これら2つの措置は、面談(オンライン含む)、書面交付のいずれかで行い、労働者が希望した場合に限り、FAXや電子メール等の方法でもよいとされています。なお、「産後パパ育休」とは、2022年10月に開始する新しい育児休業制度です。通常の育児休業とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで、休業取得が可能になります。

つまり会社はこの4月から、労働者から妊娠・出産がわかったと言われた場合、個別に情報提供をし、休業取得をするかどうか確認する義務が発生するということです。

これらに対応するために会社が準備しておきたいことは以下のような内容です。

  • 申し出の方法を決め、育児介護休業規程に記載する等の方法で労働者へ周知する
  • 個別周知が必要な事項をまとめ、必要に応じて説明書類を作成し、説明できるようにしておく
  • 申出から休業取得までの運用フローや手続きチェックリストなどを作成しておく

押さえておきたい点は、これらの措置は、労働者本人の妊娠・出産だけでなく、配偶者の妊娠・出産も対象だという点です。労働者本人の妊娠・出産の手続きは整備されている会社も、配偶者の妊娠・出産の各種手続きフローに問題ないかを改めて確認しておきましょう。

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

前述の周知・意向確認の制度をどれだけ充実させたとしても、そもそも会社に妊娠・出産を言い出しにくい、休業取得がしにくい環境では意味がありません。そこで重要になるのが、労働者が育児のことを言い出しやすい職場環境の整備です。

4月からは、以下のいずれかから1つ以上を選択して実施することが求められます。1つ実施するのでも足りますが、国は複数の措置を行うことを推奨しています。より良い環境整備のためにも、複数実施したいところです。自社ではどの取り組みを実施するのか、どのようなスケジュールで実施するのかを、きちんと決めておきましょう。

1. 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施

全労働者対象が望ましいが、少なくとも管理職は研修受講済みにすることが必要。

2. 育児休業・産後パパ育休に関する相談窓口の設置

形式的に窓口を設置するのでは不十分。実際に対応可能な窓口であることと、労働者への周知が必要。

3. 自社の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集と提供

取得事例の掲載された書類配布やイントラネットへの掲載をし、労働者が閲覧可能な状態になっていることが必要。また、取得事例は、性別、職種、雇用形態に関わらず、様々な労働者事例を収集・提供する配慮をすること。

4. 自社の労働者へ、育児休業・産後パパ育休の制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

育児休業に関する制度についてと育児休業取得促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示することが必要。

※産後パパ育休については、2022年10月1日から対象

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

これまでは、有期雇用労働者が育児・介護休業を取得する要件の1つに、「引き続き雇用された期間が1年以上」とありましたが、4月からはこの要件が撤廃されます。これにより、入社1年未満の有期雇用労働者も、育児・介護休業の対象になります。

ただし、労使協定を締結することにより、継続雇用1年未満の有期雇用労働者を取得対象外とすることが可能です。対象者が出てから慌てて労使協定を結ぶのはトラブルの元ですので、自社での方針を事前に決め、必要に応じて労使協定の準備をしておきましょう。また、育児介護休業規程等に取得要件の記載がある場合には、該当部分の改定も必要です。

なお、この取得要件緩和の改正のみ、育児休業だけでなく介護休業も対象になる点も理解しておきましょう。

10月以降の改正法施行に向けても今から準備を

10月からは、追加で以下の内容を含む改正法が施行されます。新たな休業制度の追加に伴い、実務上の変更も多く入ります。10月になって慌てないよう、この半年間できちんと準備しておきましょう。

  • 産後パパ育休(=出生時育児休業)、出生時育児休業給付金の新設
  • 育児休業の分割取得の導入
  • 育児休業取得時の社会保険料免除要件の変更

さらに、2023年4月には、常時雇用労働者が1000人を超える企業に対し、育児休業の取得状況の公表が義務付けられます。来年4月に公表する取得率は、この1年間の取得状況です。そのため、労働者の育児と仕事の両立には、今から積極的に取り組みたいところです。

ABOUT執筆者紹介

内川真彩美

いろどり社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 / 両立支援コーディネーター

成蹊大学法学部卒業。大学在学中は、外国人やパートタイマーの労働問題を研究し、卒業以降も、誰もが生き生きと働ける仕組みへの関心を持ち続ける。大学卒業後は約8年半、IT企業にてシステムエンジニアとしてシステム開発に従事。その中で、「自分らしく働くこと」について改めて深く考えさせられ、「働き方」のプロである社会保険労務士を目指し、今に至る。前職での経験を活かし、フレックスタイム制やテレワークといった多様な働き方のための制度設計はもちろん、誰もが個性を発揮できるような組織作りにも積極的に取り組んでいる。

 
原稿提供元株式会社ブレインコンサルティングオフィス「かいけつ!人事労務」

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