無期雇用転換における継続雇用の高齢者についての特例
社会保険ワンポイントコラム
1月号で平成30年4月から対象者が発生する「無期雇用転換ルール」についてポイントを記載させていただきましたが、今回はその中の継続雇用(定年再雇用)者に対する無期雇用転換の例外ルール(第二種計画認定・変更申請書、以下「第二種計画」とする)についてスポットをあててお伝えしたいと思います。
第二種計画の対象者とは
無期転換制度は、労働契約の期間に定めがある「有期労働契約者」が、1回以上の更新をして通算した期間が5年を超えて繰り返し契約することが見込まれた場合、その方が契約期間の満了までに「期間の定めのない労働契約(無期契約)」を申し出たときは、会社はこの申し込みを承諾したものとみなされる制度です。この対象者は通常、「パート社員」や「フルタイム有期契約社員」を連想しますが、60歳定年後にそのまま継続雇用(定年再雇用)となった方が、1回以上の更新をして通年5年を超えて雇用された場合でも権利が発生してしまいます。この継続雇用の方が無期転換権を行使された場合、すでに定年を超えていますので70歳でも80歳でも「文字通りの無期雇用」となり、大きな影響が予想されます。
対象者の分かれ目
対象者発生の分かれ目は「5年以内」か「5年を超える」かです。60歳定年後1年更新で65歳きっちりで退職されていれば「5年以内」ですので無期転換権は発生しませんが、「この方は優秀な人材なので65歳を過ぎてももう1年」という雇用の仕方をしている場合や、定年は60歳誕生日だが継続雇用(定年再雇用)の終了は65歳の誕生日を経過した年度末まで、という場合には無期転換権が発生します。人材が不足気味の中小企業の方が対象となるケースが多いように感じられます。
第二種計画の効力
ただし、これには特例があります。上記のように5年を超える継続雇用(定年再雇用)者に対して「特性に応じた雇用管理に関する措置」を行うことを条件に「第二種計画認定・変更申請書」を添付資料と共に管轄都道府県労働局(管轄労基署経由でも可)に申請し、認定された場合、認定後は5年を超えて雇用されても無期転換権は発生しません。
雇用管理に関する措置とは
今回の申請が認定されるには「第二種特定有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置」として、①高年齢者雇用推進者の選任、②職業訓練の実施、③作業施設・方法の改善、④健康管理、安全衛生の配慮、⑤職域の拡大、⑥職業能力を評価する仕組み、⑥資格制度、専門職制度等の整備、⑦職務等の要素を重視する賃金制度の整備、⑧勤務時間制度の弾力化、のうちのいずれかの実施が必要不可欠です。いずれか一つでよいので、例えば①高年齢者雇用推進者の選任、だけでも構いません。ただしこの推進者は「作業施設の改善その他の諸条件の整備を図るための業務担当者」であるため、労務管理の経験があり、ある程度の権限がある人を選任するのが妥当です(その他の措置等については行政によるパンフレット「高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について」に記載があります)。
申請書の書き方と添付書類
第二種特例の申請は上記パンフ内にもある「第二種計画認定・変更申請書(様式第7号)」を使用します。この様式の1「申請事業主」は、申請する会社名称・所在地、等を記入。2「第二種~雇用管理に関する措置」には先ほどのいずれかより実施する措置にレ点。①高年齢者雇用推進者の選任、を選択した場合には、ハローワーク提出済みの「高年齢者雇用状況報告書」、または新たに「任命書」や「辞令」等を作成し添付します。最後に3「その他」では、「法第9条の高年齢者確保措置を講じている」にレ点の後、「65歳以上の定年の引上げ」または「継続雇用制度の導入」+「希望者全員」or「労使協定による対象者を限定する基準」の該当する制度にレ点し、就業規則の労基署受理印のある表紙と定年のページ、そして継続雇用(定年再雇用)等の規程のコピーを添付します。なお、協定により対象者を限定する基準を採用している場合には、『平成25年3月31日以前に締結した協定書のコピー』を添付する必要があります。
注意点
今回の第二種特例の認定後は、すでに定年を迎えていた社員にも対象になりますが、すでに無期転換権を行使している者は対象になりません。また、今後は労働条件通知書等で「無期転換権は発生しない」旨の記載が必要となります。お当たりのある事務担当者の方は早めにご対応ください。